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外出できずイライラ!…お家で「リフレッシュできる」簡単テク #34

ananweb / 2020年4月29日 19時0分

外出できずイライラ!…お家で「リフレッシュできる」簡単テク #34

不安を軽減するためには、瞑想などでマインドフルネス力を養うことが効果的とは多くの研究が明かしています。でもゴールデンウィーク休みも瞑想合宿やリトリートセンター旅行はおろか、ワークショップの参加も自粛です。家にこもりながら三度の食事に洗濯に掃除と家事に追われ、気晴らしできずにストレスが爆発寸前! だったら、家の中をリトリートセンターにしちゃいませんか? メンタルヘルスの権威や禅僧が明かす、家事をこなして、シャワーを浴びて、普段の生活をマインドフルにリフレッシュして過ごすコツをご紹介します。
文・土居彩

【マック・マインドフルネス時代の瞑想探し。「魂ナビ」が欲しい!】vol. 34


巷で良いと話題のマインドフルネス。多くの科学研究でも睡眠の質が高まったり(1)、ストレスが減ったり(2)と心の平穏に大きく役立つと言われています。

毎日5分でも瞑想すればその効果は実感できるようになりますが、静かに座る環境と時間がどうしても作れないときや気分もありますよね。ところで永平寺を建立した13世紀の禅僧 道元は、修行とは坐禅のみならず、手洗いの桶の扱い方、調理、食事の作法、掃除、なんと用便の後のお尻の洗い方(!)に至るまで、日常生活のすべての行動を在るように勤めることだと説きました(3)。

僧院やリトリートセンターではなくても、家の中の体験をマインドフルネスにする方法があると、痛みに関する専門家のマイケル・アムスター博士とメンタルヘルスのセラピストであるジェイク・イーグル氏は助言します(4)。私たちには頭の中の考えに囚われてしまう傾向があり、それが不安やストレスの原因につながります。そこで日常生活で経験するあらゆる感覚自体をマインドフルネスにしてしまおうというのです。ここでは例としてシャワーと料理をマインドフルネスに行うコツをご紹介します。

■ 1. 一心シャワーのススメ。

起床したら、まずさっぱりとシャワーを浴びましょう。この何気ない当たり前の日常体験も、以下のポイントを抑えることで畏怖の念すら覚えるスペシャルなものに変容させられます。

一心シャワーのポイント
●シャワーに身を滑り込ませ、腕、頭、顔、背中、そして首を打つ水しぶきの感覚に気づく。
●何度か体の向きを変えて、肌に触れる水しぶきの感覚を感じる。
●少し水温を冷たくしたり、温かくしたり、温度を変えながら、皮膚や心がどう感じるのか、その違いを味わう。
●水の音に耳をすませ、石鹸やシャンプーの香りを匂い、石鹸の泡が肌に滑らかに触れる感触を感じる。
シャワー中に感覚が鋭敏になってきたら、息を吸って、吐いて…。深い呼吸とともに、さらに感覚を拡大させてください。

さて、シャワーを浴びたら朝食作りです。イーグル氏とアムスター博士は、「料理は、典座(てんぞ)のように行って」とアドバイスします。典座とは、僧院で料理を担当する僧侶のこと。前述の禅僧、道元は『典座教訓』という指南本を書き、食材を敬い真心込めて料理を作ることの尊さは、崇高な修行であると強調しています(5)。

ところで私は以前anan編集部に勤めていた頃、永平寺の副典座だった方に揚げ出し豆腐の作り方を教わり、撮影させていただいたことがあります。その際にお坊さんが「お恥ずかしいものですから」と調理で出た残飯やゴミをすべて持ち帰られたことに大変感銘を受けました。食材の丁寧な処理に加えて、そのような心遣いも調味料になり、その揚げ出し豆腐は格別の味でした。

さて博士らがアドバイスする調理のコツ、また私が実際に禅センターで暮らして典座と料理して学んだ方法は以下です。

■ 2. 典座気分で料理する。

僧院で暮らす典座になった気持ちで、料理の準備を食材への感謝を込めながら全身全霊で行います。今まで料理をしていて気づかなかったこと、感じなかったことを全て存分に味わって。

典座風クッキングのポイント
●たとえ使える食材が塩と水、米だけだったとしても、それを一心に美味しく調理すると決心する。
●冷蔵庫から食材を出すとき、流れる空気の冷たさを感じる。
●野菜やフルーツ、卵の重さ、まな板や包丁も持ったときの重量を感じる。
●食材を切るときは、切ることだけに集中する。5mmなど幅を決めて、淡々と切っていくのもおすすめ。コンコンとまな板に響く包丁の音に気づく。
●フライパンに油をしき、例えば卵を落とすときはそのジュワーッという音、熱を感じる。
●キッチン全体に広がる香りを嗅いでみる。
●お皿に調理したものをまるで贈り物のように大切にセッティングする。
●静かに座って、十分味わいながら感謝して頂く(できれば無言で)。

チョコレートを食べながら、「ジョギングに行こう」と考えるのではなく、食べる間はその味や香り、口当たりを十分に味わってください。一口の満足感も変わってきます。家事でいっぱいいっぱいでイライラが生じたり、「一体この状態がいつまで続くのだろう」と不安になったら、今何を感じているのかに意識を向けます。

お皿を洗っていたらお湯の温かさや洗剤の泡の感触に十分に気づき、ゆっくり息を吸い、吐きます。掃除中に立ち止まり、遠くで聞こえる鳥のさえずりやお気に入りのBGMに耳をすませてもいいでしょう。時間も空間も目の前のことも変わらないけれど、次に行うべきリストに囚われずにふと今に立ち止まってみるだけで、お家に居ながらリトリートセンターのようなつかの間の休息を味わうことができますよ。

■ 土居彩
©福元卓也(Botanic Green)

編集者。東京の薪割り暮らしをイラストとともに綴るブログ『東京マキワリ日記、ときどき山伏つき。』。株式会社マガジンハウスに14年間勤務し、anan編集部に所属。退職後に渡米しカリフォルニア大学バークレー校心理学部ダチャー・ケトナー博士の研究室で学ぶ。その後2年間のハウスフリー生活を行って、ウパヤ禅センターやタサハラ禅センター、エサレン研究所などで暮らす。現在は帰国し、書道家・平和活動家、禅研究家の棚橋一晃氏の著書『Painting Peace(平和を描く)』(シャンバラ社)、芸術家で社会活動家の小田まゆみ氏の『Sarasvati’s Gift』(シャンバラ社)を翻訳中。

参考
1. Hulsheger U.R.et.al.(2015). A low-dose mindfulness intervention and recovery from work: Effects on psychological detachment, sleep quality, and sleep duration. Journal of Occupational and Organizational Psychology .https://doi.org/10.1111/joop.12115
2. Weistein, N. et. al.(2009). A multi-method examination of the effects of mindfulness on stress attribution, coping, and emotional well-being. Journal of Research in Personality 43. 374-385.
3. 中野孝次著『風の良寛』(集英社)
4. https://greatergood.berkeley.edu/article/item/stuck_at_home_how_to_find_awe_beauty_indoors
5. 道元著、藤井宗晢(翻訳).『ビギナーズ 日本の思想 道元「典座教訓」禅の食事と心』(角川ソフィア文庫)

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