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「#この子、なにもの?」 19歳の大物、Maica_nが初EPリリース

ananweb / 2020年5月19日 19時0分

「#この子、なにもの?」 19歳の大物、Maica_nが初EPリリース

黒いショートカットの少女が意志の強そうな眼差しでこちらを見つめている。化粧っ気のない表情と真っ白な服装で雑踏の中に立っている写真は、どこか中性的でイノセントな印象。名前はMaica_n(マイカ)。このビジュアルと、佐賀県出身で徳島県阿南市育ちの19歳、という情報だけを仕入れた後に、彼女の音楽を1曲聴けば、快感とも呼べる驚きがあった。


安定感とグルーブ感を抜群のバランスで持ち合わせる、その歌声。ちょっとハスキーなその質感は、思春期ならではの甘酸っぱさも、大人びた哀愁も、普遍的な郷愁も、フレーズの端々に漂わせる。エレキ・ギターのリフが軽快さや味わいを添えており、幼少期より父親の聴く音楽に触れ、ザ・ビートルズやエリック・クラプトン、リッキー・リー・ジョーンズなどを聴きながら育ったというのも納得。ルーツ・ミュージックが体に染み付いているのだろう。「#この子、なにもの?」というキャッチコピーが資料に書いてあるけど、まさにその通りのファースト・インプレッションだった。

メジャー・ファーストEP『Unchained』には、中学時代からギターで作曲も始めた彼女が作詞作曲を手がけた楽曲が並ぶ。1曲目の「HYW 55」は“10年落ちのチェロキー”でデコボコ道を心地よくドライブするような曲調で、表題曲の「Unchain」はちょっとミステリアスなムードも漂わせるミディアム・ナンバー。「誰かの“He said, she said”耳塞げ/取っ払って リセットして 1秒前より/IKAした君が今 強烈にデビューするのさ」と歌うサビに今の彼女自身の想いが詰まっているのだろう。今の時代、SNSの普及で多くの10代は自分をより良く見せる術を身に付けているように思うがMaica_nは飾らない佇まいで、ひたすら音楽を抱きしめるように奏でる。

この作品の最後、5曲目には「海風」という極上にシンプルで優しい雰囲気の楽曲が収録されている。

彼女はYouTubeで洋邦問わず色んな楽曲を弾き語りでカバーする動画をアップしていて、どれも大反響なのだが、なかでも松任谷由実(荒井由実)の「ひこうき雲」のカバーが素晴らしかった。この「海風」も雄大な景色を一筆書きでなぞるような美しく素朴なメロディがあり、Maica_nは何を言うわけでもなく君を想いながら波の音を聴いている心情を、やっぱり飾らずに歌っている。そこに海のように深い味わいがあり、風のように広がっていくイメージを聴き手に与えることができる。この子、只者じゃないな。時代の揺らぎにも決して流されることのない、新しい音楽が確かにここにある。

ファーストEP『Unchained』。斉藤和義、根岸孝旨、小田原豊が参加した先行配信曲「Flow」も収録。5/20発売。【初回限定盤(CD+DVD)】¥2,300 【通常盤(CD)】¥1,800(ビクターエンタテインメント)

マイカ 2000年9月14日生まれ。19歳のシンガーソングライター。’19年6月、初の全国流通盤『秘密』をリリース後、Spotify「Early Noise」に選出。中性的な佇まいと成熟すら感じさせる音楽性を持つ、驚異の実力派ニューカマー。

※『anan』2020年5月20日号より。文・上野三樹

(by anan編集部)

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