残酷、支配的、暴力的…元アイドル・渡邊璃生の小説集『愛の言い換え』
ananweb / 2020年6月17日 21時0分
なんだろうこの発想力! アイドルグループ「ベイビーレイズJAPAN」に参加していた頃からブルーレイの小冊子に小説を発表し、解散後は多方面で活動、そしてこのたび初の作品集『愛の言い換え』を発表した渡邊璃生さん。どの短編も意外性のある設定と展開で、ぐいぐい読者を引き込む。
「文章を書きはじめたのは小学生くらいから。当時よく読んでいた児童文学のパロディみたいなものを書いていました。アイドルというお仕事をしている時も私は歌や踊りが苦手だったので、自分の好きなことでできることはないかと考え、マネージャーさんに小説を書かせてくださいと伝えました」
それが編集者の目に留まり、書き下ろしを加えてまとめたのが本書だ。巻頭の「ゆうしくんと先生」は一人の少年と暮らす「わたし」との語りで話は進むが、二人の関係は謎。少年は見る間に成長していく。次の「ぐちゃぐちゃなんだよ」は語り手が〈ぼくは先日、とうとう女を殺した〉と告白する不穏な掌編。
「『ゆうしくん~』は、当時アニメの『Steins;Gate』にハマっていて、自分も時間の旅をするSFっぽいものを書いてみたいなと思いました。『ぐちゃぐちゃ~』は古屋兎丸先生の漫画を読んでいた頃に書いたもの。その時どきで好きだったものが反映されています」
次の「規格青年」は潮井いたみという少年にいじめられ続ける女の子の告白、「規格青年――潮井いたみくんの愛した世界」はそんな潮井いたみくんの本心が明かされる一編。
「自分の中にいつも天然パーマの男子高校生像があって、そのキャラクターで書こうと思いました。私はいたみくんのように人の容姿を馬鹿にしたりしたいわけじゃないけれど、自分の中に確固たるものがある人には憧れがあります」
この話を完成させた時、「自分はこれまでずっと愛のお話を書いてきたんだと気づきました」と渡邊さん。ただし彼女の描く愛の世界は、時に残酷で、支配的で、暴力的。それは表題作の「愛の言い換え」にもいえる。教会を訪れた「わたし」が親切な青年と出会うが、これもまたとんでもない展開に。
「自分の中で愛と信仰は近いところにあります。ただ、信仰って男性社会的なものが強いなとも思っていて。暴力も、愛とひどく離れたものではなく、受け手によって愛になったり暴力になったりする気がします」
次の「蹲踞(そんきょ)あ」はラブコメテイスト。よくぞこんなものを思いつくなと恐れ入るので、ぜひ作品でお確かめを。最後の「ダイバー」は友人を居候させ、自分はガソリンを飲む仕事に就いている青年が主人公。
「ガソリンを飲むような理不尽な仕事は現代にたくさんある、というイメージで書きました。これはシナリオアートさんというバンドの『ホワイトレインコートマン』からインスピレーションをもらって、ヒーローものにしようと思いました」
確かな文章力、描かれる切実さ、味わいのある余韻。明らかな才能を見せつける一冊だ。
わたなべ・りお 2000年生まれ。’12年よりアイドルとして活動をはじめ、グループ解散後は小説、作詞、ゲーム実況など多方面に活動の場を広げる。本作が初の小説集。
『愛の言い換え』 初めて教会を訪れた「わたし」は親切にしてくれた青年にキリスト教について教えてもらうことにするのだが…。表題作含め7編を収録。KADOKAWA 1500円
※『anan』2020年6月24日号より。インタビュー、文・瀧井朝世
(by anan編集部)
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