村上虹郎「寄り添って一緒に歩けたら」 芋生悠との共演を振り返る
ananweb / 2020年8月28日 20時10分
豊原功補さんと小泉今日子さんの初プロデュース映画『ソワレ』に出演する村上虹郎さんと芋生悠さんに、制作の裏側を聞きました。
■ 映画の力に、魂が震える。出逢ったばかりの男女の逃避行。
役者を夢見ながらもオレオレ詐欺の片棒を担いでいる岩松翔太と、父親から虐待を受けてきた山下タカラ。苦しみを抱えてもがいていた二人が出逢い、ある事件をきっかけに衝動的な逃避行をはじめたことから、それぞれに「生きる理由」があることを見出していく。
豊原功補さんと小泉今日子さんの初プロデュース映画は、ふたりがその才能に惚れ込んだ外山文治監督の繊細な映像表現が、“映画”を観る幸福も味わわせてくれる感動作。芋生悠さんが演じるタカラ役のオーディションは、翔太役の村上虹郎さんも立ち会った。
村上:選ぶ側で参加するのは初めてだったので、正直、楽しかったです。タカラは自発的なものがないように見えて、パワーを内包していなきゃいけない難しい役。一緒に演じていて、芋生さんからはそのパワーが強く伝わってきた。
芋生:そのときが初対面だったんですけど、純粋に楽しくて。その日、私が最後だった? 帰りに村上さんがひと言、「また」って。また会えるかもしれないって嬉しかった。
村上:俺が? 覚えてない…。全員に言ってたかも(笑)。話、作ってないですか?
芋生:作ってないです(笑)。タカラという役は結構大変なシーンもある。そこに引っ張られて壊れてしまうのが怖かったので、撮影では役に入り込むというよりは、タカラに寄り添って一緒に歩けたらいいなと思ってました。
村上:翔太は翔太で厳しい状況にあるけど、見ていても辛いシーンはタカラのほうが多いから。
芋生:もし自分のせいで撮影が止まったらと、最初は怖かった。でも、監督さんはじめ、みんなが見守ってくれているという信頼関係があったので、私たちは本能のまま、和歌山の土地を走り続ければよかった。
村上:俺はクランクインの日に体調壊して、迷惑をかけてしまったけど。どの地方に行っても1~2日はちょっと調子悪いから、今回は2日前に入ってたのに、クランクインがいちばん調子悪いっていう。主演のくせに何してるんだ、俺は。
芋生:村上さんがうなだれてる写真が監督さんから送られてきた(笑)。
村上:舞台で小泉さんと豊原さんとご一緒したときも、千秋楽に倒れたんですよ。外山監督とは以前短編でご一緒させていただいたことがあって。これは主人公が逃げる作品ですけど、外山監督は何からも逃げずに、丁寧に向き合ってる。ストーリー自体は仕掛けはあるけれども、どんでん返しがあるサスペンスではない。じゃあ、何を観るかっていうと、作家性やキャラクターや、そこに映ってるもの全部。そこに観てくれる人たちの想像力をちょっとお借りしないといけない。僕もそういう映画が大好きですけど、集中力は必要ですよね。
芋生:撮影はドキュメンタリータッチと言われていたんですけど、わりと映画的だなって途中で感じてた。
村上:二人の感情を影で見せたりとか、ギミックを使うシーンも印象的で、外山さんの新たな一面を知った感じ。“ザ・ソワレ”という幻想的なシーンでは、美術さんをはじめみんなの気合がひときわすごかった。
芋生:ソワレはフランス語で「夜会」とか「夜明け前まで」の意味ですよね。でも、このタイトルには、景色も変わらないような暗い道をずっと歩いてきた子たちが、誰かがそばにいることや自分の足でちゃんと歩けるようになることで、景色が変わるというか、違う明日を迎えることができるという意味があるのかなって。今、大変な時代だからこそ、光を見つけられた子たちに勇気づけられる映画になった気がする。
村上:確かに俺自身も面白い映画に出合うと、観ながら、俺だったらどうだろうって考える。結果、大事な台詞を聞き逃したりするんだけど。
芋生:めちゃわかる。ほんと自分を見つめ直す感じになるよね。
村上:ただ、俺はあまり「ソワレ」の意味は意識せずに演じてた。最初はまったく違う仮題が付いていたので、タイトルに託された意味も豊原さんのインタビューで知ったくらい。芋生さんはちゃんと説明されたんだね、プロデューサーのおふた方とよく飲んでるから。
芋生:お酒が好きなので(笑)。村上さんはあまり飲まないですよね。
村上:だから、俺のほうが付き合い長いのに誘われない。作品には呼んでいただいてるけど(笑)。
『ソワレ』 故郷の高齢者施設で演劇を教えることになった翔太と、そこで働くタカラ。出逢ったばかりの二人は、ある事件を機に衝動的に逃避行に出る。監督・脚本/外山文治 出演/村上虹郎、芋生悠ほか 8月28日よりテアトル新宿ほか全国公開。©2020ソワレフィルムパートナーズ
むらかみ・にじろう 1997年3月17日生まれ。主演を務めた河瀬直美監督の『2つ目の窓』(‘14年)で映画デビュー。外山文治監督とは短編『春なれや』(‘17年)で顔を合わせている。映画『佐々木、イン、マイマイン』は11月27日公開。『燃えよ剣』が公開待機中。
シャツ 参考価格¥49,000 パンツ 参考価格¥67,000(共にMAGLIANO/Diptrics TEL:03・5464・8736)
いもう・はるか 1997年12月18日生まれ。『バレンタインナイトメア』(‘16年)で映画デビュー。ヒロイン役を務めた映画『#ハンド全力』が公開中。映画『HOKUSAI』が公開待機中。豊原功補演出の『後家安とその妹』(‘19年)では舞台女優としての力量も発揮。
イヤリング¥1,880 バングル¥2,280 リング¥2,680(以上ROOM) その他はスタイリスト私物
※『anan』2020年9月2日号より。写真・内田紘倫(The VOICE) スタイリスト・望月 唯(村上さん) 末吉久美子(芋生さん) ヘア&メイク・Yoshikazu Miyamoto(村上さん) YOUCA(芋生さん) 取材、文・杉谷伸子
(by anan編集部)
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