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宮本浩次「歌声がよく響く歌を選んだ」昭和の名曲カバー到着

ananweb / 2020年11月16日 20時20分

宮本浩次「歌声がよく響く歌を選んだ」昭和の名曲カバー到着

【音楽通信】第58回目に登場するのは、エレファントカシマシでの30年を超えるキャリアにして初挑戦、ひとりの歌い手としてカバーアルバムを発表する、宮本浩次さん!

【音楽通信】vol.58

幼少時代は家族の影響で歌が大好きになる

ロックシーンを代表する存在として異彩を放ち続けるエレファントカシマシのボーカル、宮本浩次さん。2018年、シンガーとして椎名林檎さん、東京スカパラダイスオーケストラさんの作品に参加。2019年にソロ活動をスタートしました。

2020年3月には、1stソロアルバム『宮本、独歩。』を発表。その後、世界中がコロナ禍となるなかで、宮本さんは歌が大好きだった少年時代に親しんでいた楽曲を弾き語り、カバーする作業を行なっていたといいます。

そこで録りためた弾き語り音源から精選された12曲が、2020年11月18日に、初のカバーアルバム『ROMANCE』としてリリースされるということで、宮本さんにお話をうかがいました。

ーー今回、少年時代に親しんでいた歌をカバーされたアルバムをリリースされるということで、あらためて幼い頃に聴いたり歌ったりしていた音楽から教えてください。

母親がすごく歌が好きだったものですから、 私が幼稚園の頃、母がよく歌っていたのを覚えています。私は1966年生まれなので、たとえば梓みちよさんの「こんにちは赤ちゃん」(1963年発表)や、ピンキー&キラーズの「恋の季節」(1968年発表)など昭和の名曲が多かったですね。

家族が歌が好きだったから、自然と耳にする機会があって、まだ幼稚園の頃ですから、どういう人が歌っているのか知らないままに、自分でも「恋の季節」はよく歌っていましたね。とにかく歌うことが大好きだったんです。

ーー宮本さんは合唱団にも入っていらっしゃったんですよね。

小学生のときに、NHK東京児童合唱団に入っていました。NHKの音楽番組『みんなのうた』など、テレビ番組もたくさん出演しました。

ーーその後時を重ねて、1988年に結成されたエレファントカシマシはデビュー30周年を超え、今年の3月にはソロアーティストの宮本浩次さんとして、初のソロアルバム『宮本、独歩。』をリリースされました。

はい、自分の名前を冠した『宮本、独歩。』というソロアルバムを出しました。

ーー「バンドのボーカル」としての宮本さんと「ソロアーティスト」としての宮本さんとは、やはりスタンスが違うものでしょうか。

エレファントカシマシというバンドは、12歳で彼らと出会って、中学校の友人同士で組んだバンドです。そこで始めてRCサクセションというロックにも出会って。小学校から中学校にあがって、10代20代といろいろな変化が自分の歴史の中にあるなかで、新しい仲間に出会うというのは、ある種、大人への第一歩といえますよね。

そういったときにRCサクセションやザ・ローリング・ストーンズ、レッド・ツェッペリンといった洋楽を聴いたり、坂本龍一さん、細野晴臣さん、高橋幸宏さんのイエローマジックオーケストラ(YMO)3人組の世界的なテクノユニットがあって、そいういう音楽にも出会いました。

でも、歌謡曲が好きだという思いも変わらずあって。童謡を歌う少年からスタートして、エレファントカシマシというものになっていった自分と、一方で宮本浩次としての自分がいて。バンドの宮本浩次は、「エレファントカシマシの宮本浩次」なんですよ。そこでも30年、40年の歴史があるんです。

一方で、歌の好きな宮本浩次という54歳のひとりの人間がいて、それはエレファントカシマシとは別の顔。人って、いろんな顔があると思う。友達と一緒のときの顔、恋人と一緒にいるときの顔、電車で他人と一緒にいるときの顔。自分の場合は、大きく分けて、ふたつの柱があるというのかな。エレファントカシマシよりも、歌の好きな自分のほうが古い歴史がある。

だから、宮本浩次が好きな歌手、好きな歌を歌うソロ活動と、エレファントカシマシでのバンドとしての立場というのは、外から見るぶんには同じ歌手というふうに見えるかもしれないけれども、自分の中ではまったく違うものなんです。

「宮本浩次を表現する」カバーアルバム

ーー2020年11月18日に、初のカバーアルバム『ROMANCE』をリリースされます。コロナ禍の影響を受けている緊急事態宣言の期間中に、毎日弾き語りでカバーしていたそうですね。

実は収録曲の「あなた」(1973年年発表)、「恋人がサンタクロース」(1980年発表)は、すでに昨年レコーディングが終わっていました。以前からカバーを出そうとは決めていたんですが、今年に入って緊急事態宣言があり、自粛生活の中で「人に会わなくてもできることってなんだろう」と考えて「曲を録ろう」と、1日1曲カバーしていったんです。コロナ禍で自粛があるなかでも、古い自分の懐かしい曲と向き合えたことは幸いなことでしたね。

エレファントカシマシになってから、音楽の勉強として聴いたレッド・ツェッペリンといったロックではなく、沢田研二さんやもんた&ブラザーズ、クリスタルキング、松田聖子さんは本当にかわいくて素敵だなという、子どものときに素直に感じたこと、幼少時からのルーツ音楽があって。それを「いつかやりたい!」というのが夢だったんです。ソロをやるというのは、「宮本浩次を表現したい」という意味と同じなんですね。

ーー聴かせていただいて、宮本さんの歌の力がストレートに心に届き、歌声に感動しました。

今回、女心を歌うというのは、自分のなかで封印していた部分というか、いろいろな面があって。もちろん男性にも聴いてほしいんですが、女性の歌なのでとくに女性に聴いてほしいと思っていて。女性の方にそう言っていただけてうれしいです、ありがとうございます。

ーー録りためていた弾き語りの音源から、今回の12曲に絞るのは難しかったのではありませんか。

レコード会社のみんなと会議をしたときに、まずエレファントカシマシのデビューが1988年だから、それより前のものにしようとなって。そして宮本浩次が生まれたのが1966年。バンド活動を始める以前、そして自分が生まれたあと、という期間の歌ということを原則として考えました。66年から88年までの間の22年間のもの。そうしないといい曲がいっぱいあるので、みんなに募って、友人やレコード会社やいろんな人とたくさん曲を聴いて。

最終的には、88年より前の70年代の幼少期の曲も入れて、エレファントカシマシになる前の曲、小学校ぐらいまでの曲が中心に。選曲はどの歌も素晴らしい歌で、自分が慣れ親しんだものが中心になりましたね。だからそんなに選曲は難しくなかった。カバーした曲のなかには、「北の宿から」(1975年発表)という都はるみさんの演歌の名曲もありましたし、細川たかしさんの歌など、子どもの頃は演歌も好きだったから入っていたんですよね。ほかにも、泉谷しげるさんの歌やガロの「学生街の喫茶店」(1972年発表)も歌いましたし。

本当にいい歌ばかりだったんですが、だんだん好きな歌っていうものになってきちゃったんです。ある種の女性の好みというか、独特の視点があると思うんですが、歌声がよく響く歌を選んだ気がしますね。

ーー「赤いスイートピー」「白いパラソル」と、松田聖子さんの曲だけ2曲ありますね。

そうですね(笑)。実は、中島みゆきさんの曲も、ご自身が歌われているものと作詞作曲されているものと3曲ぐらいあったんですが、最終的に1曲に絞って。聖子さんは、松本隆さんの歌詞と、聖子さんのマッチングの素晴らしさがあって、大好きなんです。

ーーとくに「赤いスイートピー」はお好きな歌なんですよね。

思い出の曲なんですよ。「赤いスイートピー」は、デートをしている大人の曲で、初デートという印象がすごくあって。昔、何していいからわからないから、ひたすら歩くだけというデートをしたことがあった。そういう思い出が、聖子さんの歌声でシーンが浮かぶんです。青春のきらめきを感じる曲で、すごく好きですね。

ーー宮本さんのカバーされた曲を通して、たとえば中島みゆきさんの「化粧」という曲など初めて知った曲もあって、こんないい曲があったということを教えられた気がしました。

私も「化粧」はまともに聴いたのは今回が初めて。曲、歌詞、歌と、原曲も本当に素晴らしい歌ですよね。中島みゆきさんの歌い方のすごさに虜になっちゃうくらい。中島さんの名曲を自分なりにどうやって歌おうかと何度も聴いて、号泣しつつ、歌詞の主人公に自分がなってしまいながら情景が電撃的に目の前に浮かんだし、女性の主人公にものすごく共感しました。

ーー小林武史さんがアルバムのプロデュースをされています。

小林さんとは、20年前ぐらいにバンドのアルバムや『宮本、独歩。』を作ったときに収録曲の「冬の花」「ハレルヤ」というふたつのドラマの主題歌も一緒に作っていて。2018年後半から小林さんと作業する時間が多く、2019年10月の時点で、自分のソロアルバムのあとに、カバーアルバムを出すからという話は小林さんにしていて。そういう流れの中で、20曲ぐらいまでを選んで、歌を聴いてもらいました。「アレンジ上がったよ」と小林さんから連絡があって、行ったらもう曲が選ばれて、曲順まで決まっていたんです。

「赤いスイートピー」の1曲は、音楽プロデューサーの蔦谷好位置さんにアレンジをお願いしたんですが、もともと3、4月に予定していた『宮本、独歩。』のツアーのメンバーに蔦谷さんがいたんです。すでに「赤いスイートピー」はツアーのリハーサルとしてやっていたり、『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)でも一緒にこの曲を演奏していたりしたから、この曲はお願いしました。アルバムのなかでも、モダンな面白いアレンジで彩りを添えていると思います。

「コンサートを絶対成功させたい」

ーー自粛期間に音楽活動以外で、おうちではどのように過ごしていたのでしょうか。

まさに「何をやろうか」と考えて、カバーしながら並行して、日課として、インスタグラムをやっていましたね。自分のなかで生活リズムを作りたいという気持ちがあって、発表できるかわからないけれどカバーをやるというのと、インスタグラムで写真日記という名前をつけて日記にしてアップしていると、見る人もいるかなと。カバーをやってからインスタグラムをやるという生活サイクルにしていて、夜遅くまで、7、8時間かかっちゃったりもしてね。

写真も、どうやって自撮りをうまく撮るのか、いろいろな角度を試して、けっこうプレッシャーでした(笑)。でも面白がりながら、緊張しながらも、写真をいっぱい撮って。どの角度でどの光で撮るといいかを考えるのが日課。本当に人に会わなかったから、一方的なコミュニケーションじゃないけれども、自分のインスタグラムを見てほしいなと。手書きで書いたものを出したりと、すごく力を込めてやりましたね。みんなに楽しんでもらえたかな。

あとは、ビールを飲むのが楽しかったですね。そんなにお酒は強くないんですが、夜はビールを飲みながら、映画を観るのが楽しみでした。だから日課として、カバーをして、インスタグラムあげて、ビールを飲む(笑)。そして映画。衛星放送などで流れている、70年代前後の映画とかね。オードリー・ヘプバーンの『シャレード』という映画はすごく面白かったです。相当リラックスできました。

ーーでは最後になりますが、今後の抱負をお聞かせください。

コンサートを絶対成功させたいです。エレファントカシマシは毎年、日比谷の野音でコンサートを開催しているんですけれども、今年は31年目を10月4日にやって、それはとても充実していたんです。自分で言っちゃうのもなんですが、魅力的なバンドなんですよ、エレファントカシマシ。だから、このソロ活動も行いながらソロのコンサートをまずやって、バンドのコンサートとも両立させたいですね。

取材後記

エレファントカシマシのフロントマンとして、日本のロックシーンを牽引してきた宮本浩次さん。ソロとしてのカバーアルバム『ROMANCE』では、昭和の名曲の数々を宮本さんの魂のこもった歌声でカバーされていて、その熱量のすごさは圧巻です。どこか少年のようなピュアさを感じさせる宮本さん、取材時も真摯にご対応くださいました。そんな宮本さんのカバーアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。

写真・北尾渉 取材、文・かわむらあみり



宮本浩次 PROFILE
1966年生まれ。日本を代表するロックバンド、エレファント カシマシのボーカル&ギター。

1981年、エレファント カシマシ結成。1986年、現在のエレファント カシマシとなる。1988年、THE ELEPHANT KASHIMASHIのボーカル&ギターとしてデビュー。以後、バンドで22枚のアルバム、1枚のミニアルバム、50枚のシングルを発表。
2017年、30周年イヤーを迎え、NHK『紅白歌合戦』に初出場。

2018年、シンガーとして椎名林檎、東京スカパラダイスオーケストラの作品に参加。2019年、ソロ活動開始。

2020年3月、1stソロアルバム『宮本、独歩。』発売。6月、配信ライブ「2020 612 宮本浩次バースデイコンサート at 作業場「宮本、独歩。」ひきがたり」敢行。11月18日、初のカバーアルバム『ROMANCE』を発表する。

Information



New Release
『ROMANCE』

(収録曲)
01. あなた
02. 異邦人
03. 二人でお酒を
04. 化粧
05. ロマンス
06. 赤いスイートピー
07. 木綿のハンカチーフ-ROMANCE mix-
08. 喝采
09. ジョニィへの伝言
10. 白いパラソル
11. 恋人がサンタクロース
12. First Love

2020年11月18日発売

(通常盤)
UMCK-1676(CD)
¥3,000(税別)

(初回限定盤)
UMCK-7089/90(CD+CD)
¥3,500(税別)
*28Pブックレット(歌詞・クレジットを含む)、スリーブケース仕様。
[初回限定盤 ボーナスCD収録曲]
「宮本浩次弾き語りデモ at 作業場」
01. September
02. 思秋期
03. 私は泣いています
04. あばよ
05. 二人でお酒を
06. 翼をください

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