古田新太「最初はパッとしない話だなと思ってた(笑)」月影花之丞、18年ぶりの新作!
ananweb / 2021年3月1日 19時40分
強烈なキャラクターと、爆発力のある笑いで2度上演され話題となった舞台『花の紅天狗』。演劇への過剰ともいえる愛と、どこまでも高いテンションで突き進む主人公・月影花之丞は、もともと演出家でもある木野花さんの存在ありきで描かれたキャラクター。18年ぶりの新作『月影花之丞大逆転』で、花之丞が大暴れします!? 木野さん、そして古田新太さんにお話を伺いました。
木野:私、花之丞に関しては複雑な心境です。自分がモデルだと言われても、あまりに人間離れしていてテンションが高くて、役に近づこうとすると頭が真っ白になって段取りがとぶんです。前作の初演も再演も段取りをこなしきれずに悔いが残っていたし、いのうえ(ひでのり)さんも懲りただろうと思っていたら声をかけていただいて。ありがたいけれど、あのテンションの高さと段取りをものにできるか、今度こそ正念場ですね。追いつめられてる最中です。
古田:木野さんって、稽古中のテンションが高まった時の発言とかが面白いんです。昔からの知り合いだったオイラとか高田聖子が、それを面白おかしく喋ってた情報で、(中島)かずきさんとかいのうえさんのなかの木野さん像ができあがっちゃってたから(笑)。
木野:本人はいたって普通ですから。
古田:ずっとあんなテンションの人、いないからね。ただ初めて一緒に仕事した時に、みんながいる前で拳を突き出して「命賭けて!」って言われた時はびっくりした。さすがに命は賭けられないよ、と。
木野:毎回生き返ってもらわないと。
古田:でも、木野さんと昔、『真夏の夜の夢』って舞台を一緒にやった時は、台本もなくてほぼほぼエチュード(即興劇)だったりもしたし、オイラは木野さんが段取りを覚えなかろうが平気なんだけど。
木野:ほかの役者さんたちは大変ですよ。私がセリフを平気でとばしたり、行くつもりのない方向に行ったりするから。でも弁解させてもらうと、ほかの芝居ではもうちょっと落ち着いてやってるのよ。劇団新感線と、いのうえさんの段取りが私を狂わせるんです(笑)。いのうえさんの段取りの量が、私の許容量を超えてしまうんですよ。頭が真っ白になって、舞台の上手(かみて)と下手(しもて)がわからなくなって立ち往生した時は、さすがに情けなかった。
古田:なぁちゃん(西野七瀬)の肩を抱いて、本当は右に回って前に出てくる段取りなんだけど、どっちかわからなくなった木野さんが迷って左右に揺れだすっていう…。バグったCGみたいでした(笑)。
木野:こんなふうに私の言動がどんどんオーバーに伝わっていくんだなぁ。でも、新感線が初めての浜中(文一)くんの台本が真っ白なのを見た時は、さすがにメゲましたね。あんなに段取りが多いのに書かなくても頭に入っちゃうんだねぇ…。
古田:ジャニーズとか乃木坂46とかの子は、段取りを覚えるっていうことに長けてるからね。あとは、面白くできるかどうか。こっから頭のオカシい芝居になればいいな。
木野:そうね。新感線は私にとっては毎回が修行の場です。細かい段取りを自分のものにして、まるで即興みたいに自由に動ける境地を目指しているけど、まだまだゴールは遠い。今度こそ、みんなと足並み揃えて、突っ走りたい! この作品にとって大事なセリフを、花之丞が結構背負っていて、私がトチったらオシマイだから、それもすごいプレッシャー。
古田:すごいテンションで破壊的なことを言ってるんだけれど、よくよく聞いてみると真理を突いてる言葉だったりするんです。
木野:私も口にしながら、「花之丞、いいこと言ってるぞ」と思った途端に段取りを外すから油断できないのよ。新感線の舞台って、正面切って正しいことを正しいと言うわけじゃないけど、馬鹿馬鹿しいことをやって大笑いした後、気づくと鋭い本音のようなものが心に落ちてくる作品が多いよね。でもそれはちゃんと笑いありきでやらないと見えてこないから。この脚本も役者がセリフや段取りから解放されてどんどんノッていったら、相当面白くなると思う。
古田:正直、最初はパッとしない話だなと思ってたんだけど(笑)、立ち稽古が始まって木野さんとか(阿部)サダヲとかと劇団員たちが絡みだして面白くなる予感がした。
木野:すごくいいと思う。
古田:でも月影先生みたいな人が座長の劇団なんて嫌だけどね。
木野:月影先生も嫌だと思うわよ。…でも面白がるのかもしれない。私、いのうえさんこそ月影先生なんじゃないかと思ってたりするから。
古田:オイラもそう思ってる。
木野:演出家って、多かれ少なかれ自分のなかに譲れないものがあって、容赦なく追い込んでくる。逆にそれがあるから演出できるんだろうね。
古田:あとね、こんなご時世だけど、お客さんがいてこその演劇だなって思うわけ。去年、無観客で芝居したのよ。しかもナンセンスコメディの。その時、お客さんがいない芝居ってどれだけつまらないか実感したから。何やっても、シーン…だからね。
木野:それはいい経験をしたね。
古田:観て、バカだな~って笑ってくれる人がいないと成立しないんだなって。だからみんなで注意しながら笑いに来てほしいなと思う。
木野:心からお待ちしています。
きの・はな 1974年に旗揚げした劇団青い鳥で注目を集め、退団後は俳優・演出家として活躍。ドラマ『あまちゃん』や映画『愛しのアイリーン』など映像作品でも存在感を発揮。
ふるた・あらた 大学在学中に劇団新感線に参加。看板俳優として人気を博す一方、数々の舞台や映像作品で活躍。4月スタートのNHK BS時代劇『小吉の女房2』に出演。
2021年劇団新感線41周年春興行 Yellow/新感線『月影花之丞大逆転』 公演本番を前に、座長・花之丞(木野)の下、劇団員たちは稽古にいそしんでいた。そんななか、劇団員の塾頭(古田)が国際的殺し屋との情報を得たインターポールの捜査官(浜中)が、潜入捜査のため入団し…。2月26日(金)~4月4日(日) 池袋・東京建物 Brillia HALL 作/中島かずき 演出/いのうえひでのり 出演/古田新太、阿部サダヲ、浜中文一、西野七瀬、木野花ほか S席1万4000円、SD席1万4000円、AD席1万1000円ほか(すべて税込み) サンライズプロモーション東京 TEL:0570・00・3337(平日12:00~15:00) 4月14日(水)~5月10日(月)に大阪公演を予定。
※『anan』2021年3月3日号より。写真・中島慶子 取材、文・望月リサ
(by anan編集部)
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