『愛の不時着』並みの熱狂!…『嵐にしやがれ』でも話題の作家による『クイーンズ・ギャンビット』レビュー #4
ananweb / 2021年3月3日 20時0分
辛口で知られるRotten Tomatoes(ロッテン・トマト)で97%と高評価評価の『クイーンズ・ギャンビット』(Netflixドラマ全7話)。全話レビューの第4回目では、主人公のチェスの天才少女ベス(アニャ・テイラー=ジョイ)と養母アルマとの別れが描かれます。『愛の不時着』にも劣らない熱狂を生んだ傑作の見どころを、『嵐にしやがれ』でもプレイされて話題になった『はぁって言うゲーム』の作者・米光一成が一話ずつ解説していきます。
【『クイーンズ・ギャンビット』全話レビュー 第4話】vol. 4
養母アルマとベスの違い
ベス(アニャ・テイラー=ジョイ)はチェスの大会で、養母とメキシコに行く。Netflixオリジナルシリーズ『クイーンズ・ギャンビット』独占配信中。
好きなことや得意なことを仕事にすべきか、趣味にすべきか。悩ましい問題だ。『クイーンズ・ギャンビット』第4話は、この悩ましい問題をめぐるドラマだ。主人公ベス・ハーモン(アニャ・テイラー=ジョイ)は、孤児院から出て、チェスの才能ひとつでのしあがってきた。
1966年、メキシコ大会へ。養母アルマ(マリエル・ヘラー)は文通相手の男に夢中だ。毎日遊びに出かけている。ベスは、大会に集中しようと焦っている。リラックスしたほうがいいと、養母アルマが遊びに出かけようと誘う。
「明日、大会がはじまるのよ。エンドゲームの研究をする」
「もう少し人生の研究をしたら。人生チェスだけじゃない」
「これが得意なの」
「私の経験からして得意なことが大事なことじゃない」
「なら何が大事?」
「生きること成長すること。人生を楽しむの」
とはいえ、養母アルマが奔放に遊んでいられるのは、ベスの賞金のおかげだ。
養母アルマは、自分が得意なことを仕事にしなかった。彼女はピアニストを目指していた。だが、あがり症のため断念したのだ。文通相手の男は、オアハカ(メキシコの都市)に帰ってしまう。アルマは「仕事でオアハカへ」と言っているが、おそらくこれは彼が家庭や仕事のある街へ戻ったということだ。
「オアハカってきっとデンバーみたいなところね」とアルマは言う。
デンバーは、養父ウィートリーがいる場所。ウィートリーは、デンバーに行ったきり戻ってこなくなった。デンバーで仕事をし、おそらく別の家庭を築いている。
ベスの実母アリスも、才能をどう扱うか悩んでいたのかもしれない。第1話で、実母アリスとベスがトレーラーハウスで暮らしている場面が描かれる。やりなおそうと夫が説得しても、かたくなにアリスは拒絶する。
その時にベスが拾い上げるのが数学の本。著者は、アリス・ハーモン博士と表紙に記されている。母アリスは、コーネル大学数学科の博士だ。
養母アルママ(マリエル・ヘラー)とベス、ふたりともお酒が好きだ。
なぜマナー違反を?
ベス・ハーモンと少年ジョルジ・ギレフの対局。この対局、ベス・ハーモンが奇妙な行動にでる。席を立ってスカートをひらひらさせながら歩いたり、貧乏ゆすりをしたりする。あきらかにマナー違反だ。なぜ、ベスはこんなことをしたのだろう?
幼いジョルジ・ギレフは、攪乱されてしまう。負けた少年とベスは話す。
「いつか世界チャンピオンになります」
「もしなれたら次はどうするの?」と質問するベス。
「意味がわかりません」
「16で世界チャンピオンになったら残りの人生は何をするの?」
ジョルジ・ギレフは、やはり意味がわかりません、と答える。少年にとって、これは微塵も「仕事」ではないのだ。純粋に、世界チャンピオンになることを目指し、チェスを趣味として愛しているのだ。
ベスが、マナー違反をしてまで勝ちにこだわったのは、彼女にとって、チェスの対局が、ある部分で「仕事」になってしまったからだろう。ベスは、ジョルジ・ギレフを「いままでで最高の相手」と認める。
勝利しても浮かない表情のベスがロビーで目撃するのは、ピアノを弾いている養母アルマの姿だ。あがり症の彼女が大勢の人の前で華麗にピアノを演奏している。
「あがり症じゃなかったの?」
「楽しんで弾くぶんには平気なの」
ここでも、自分の得意なことを趣味にするという選択が描かれている。
チェスの大会を追って、アルマとベスは豪華なホテルを渡り歩く生活をしていた。
ふたたび薬物に手を出すベス
得意なことを仕事にする道は厳しく、時には汚いことにも手を染めてしまう。だがベスはその道を選んだ。選んだにもかかわらず、ベスは、宿敵ボルゴフに負ける。
「弱点がなかった」
大敗だ。追い打ちをかけるように、養母が肝炎で亡くなってしまう。
ふたたび精神安定剤に手を出してしまう。薬局で、緑の薬を差し出されたベスは、スペイン語でこう言う。
「もっと」
もっと厳しい道がベスの歩む先に続いている。
文・米光一成(ゲーム作家)information
『クイーンズ・ギャンビット』
原作・制作:スコット・フランク、アラン・スコット
出演:アニャ・テイラー=ジョイ、ビル・キャンプ、マリエル・ヘラー
文・米光一成(ゲーム作家)
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