日本は世界唯一の被爆国なのに…「核兵器禁止条約」を解説
ananweb / 2021年3月20日 18時40分
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「核兵器禁止条約」です。
被爆国だからこそ核の脅威を皆で共有するべきでは。
核兵器の開発、製造、保有、使用等を禁じる国際法「核兵器禁止条約」が1月22日に発効しました。2017年に122の国と地域が賛成し、国連で採択され、2月末現在54の国と地域が批准しています。第一次世界大戦時に化学兵器で多くの悲惨な犠牲が出たことから、毒ガスなど、非人道的な兵器は国際法で禁止することになりました。ところが、第二次世界大戦では原子爆弾が広島と長崎に落とされ、甚大な被害をもたらしました。核兵器は、米ソ冷戦時代には一度使ったら人類破滅になるほどの脅威となり、核を持つことが、戦争勃発の抑止になると考えられてきました。しかし、核を持つ国と持たない国の格差は増すばかり。そんななかで、核兵器禁止条約が生まれたのです。実はこの条約に核保有国は参加していません。日本も、アメリカの核の傘に守られているという立場から、採択の場に参加しませんでした。当初、「核保有国の参加しない条約なんて意味がない」と、賛同を得るのに非常に苦労したそうですが、日本の被爆者の方々や反核団体が核の被害を丁寧に発信し続け、草の根的にその壮絶な悲惨さが伝わり、条約の発効にこぎつけることができました。
しかし、肝心の日本国内では、核の怖さが人々に伝わっていないのではないかと危惧しています。日本は世界唯一の被爆国なのに、核について語ることがタブー視されがちです。広島や長崎で育った人たちは平和教育を受けますが、その他の自治体ではどうでしょうか。被爆体験を描いた漫画『はだしのゲン』も図書館から追いやられそうになりました。いまでは小型の核兵器が開発され、使える核として脅威になっています。もしも東京に撃ち込まれたら、アメリカは迎撃するかもしれませんが、それが離島だった場合はどうなるのか。「核の傘」という概念も時代によって変化することに、私たちは意識を向けなければいけません。
核兵器禁止条約の締約国会議には条約を批准していない国も参加できるので、核保有国のオブザーバー参加が求められています。核保有国と非保有国の橋渡し役として日本にできることが、きっとあるのではないかと思います。
堀潤 ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『モーニングCROSS』(TOKYO MX 平日7:00~8:00)にメインキャスターとして出演中。
※『anan』2021年3月24日号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子
(by anan編集部)
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