美しすぎると絶賛!…日本で無名の画家が「世界で高く評価された理由」
ananweb / 2021年4月12日 19時0分
海外で高い評価を得ている日本画家、渡辺省亭(せいてい)の初の大規模な回顧展が東京藝術大学大学美術館で開かれています。明治から大正にかけて活躍した省亭は、パリでドガや印象派の画家たちとも交流。彼の美しすぎる日本画は、外国の画家たちを驚嘆させました。日本ではほとんど知られていなかった画家の作品と生涯をご紹介します。
海外で高評価!
【女子的アートナビ】vol. 200
『渡辺省亭 ―欧米を魅了した花鳥画―』では、日本画家、渡辺省亭(1852-1918)の知られざる全画業を紹介。近年公開されたことのない個人コレクションを中心に、アメリカのメトロポリタン美術館など海外からの里帰り作品も含めた100件以上が公開されています。
省亭は没後国内でほぼ無名であったため、これまで展覧会で紹介される機会が少なかったのですが、1878年のパリ万博への出品などにより海外では高く評価。欧米の名だたる美術館に多数作品が所蔵されています。
では、なぜ日本では知られていなかったのでしょう? 彼の画業とともに、その疑問を解き明かしていきます。
絵を教えてもらえず…
省亭が生まれたのは江戸の神田。画才に目覚め、16歳のとき歴史画家の菊池容斎に入門します。住み込みで修業をはじめますが、3年間の修業期間は具体的な絵の描き方を教えてもらえず、ひたすら文字の練習ばかり。筆の扱いに慣れるための習練だったそうです。
それでも師匠の作品を模写しながら絵画表現を習得。明治になってまもない1869年、19歳でイギリスのエディンバラ公への献上品制作に参加し、その後独立して画家として活動をはじめます。
パリで印象派たちを魅了!
1875年、25歳で起立工商(きりゅうこうしょう)会社に入社。輸出工芸品の図案制作などに従事します。
1878年、省亭の描いた図案がパリ万博に出品されることになり、社員として渡仏。そのまま2~3年パリに滞在し、当時ジャポニズムが流行していたパリで印象派の画家たちとも交流します。
省亭は画家の集まるサロンに行き、その場で絵を描く「席画」もしていました。早業で美しい花鳥画を描いたので、パリの画家たちは驚き魅了されたそうです。
そんな実演の場で、元祖印象派の巨匠、エドガー・ドガのために描いた大変貴重な作品《鳥図(枝にとまる鳥)》も今回の展示で見ることができます。ドガは生涯この作品を手元に残しておいたそうです。
多方面で活躍!
フランスから帰国後、省亭は花鳥画だけでなく雑誌の挿絵や口絵など多方面で活動。さらに、七宝作家の濤川惣助(なみかわ そうすけ)とともに「無線七宝」(金属線を使用しない技法)を開発し、以後、濤川の七宝作品に多くの原画を提供します。
ちなみに、現在の迎賓館赤坂離宮に飾られている濤川による七宝額絵の原画も省亭が描いたもの。展覧会では、その原画を見ることができます。
競争が嫌い?
1892年にはロンドンのギャラリーでイギリスの水彩画家と二人展を開き、その後も同ギャラリーで個展を開くなど、海外で高く評価されていた省亭ですが、画業の後半は日本の展覧会にはほとんど出品しなくなりました。美術団体に所属もせず、画壇とは距離を置いていたとのこと。性格的に、画壇政治や競争に巻き込まれるのが好きではなかったようです。
また、制作依頼は常に舞い込んでいたので、展覧会に出さなくても暮らしに困ることはありませんでした。省亭の作品は、著名な政治家や歌舞伎役者も買っていたのです。
ブームが来るかも!
省亭画伯の私生活も少しご紹介。パリから帰国後31歳で結婚し、浅草で新婚生活をスタート。その後は海外に行かず、国内旅行もせず、ほとんど浅草周辺で暮らしたそうです。
また、本妻のほかに近くの別宅にはお妾さんもいて、どちらにも子どもがいたそうです。自宅と別宅を行き来しながら注文に応じて絵を描くという生活をし、68歳で亡くなるまで制作を続けていました。
その後、画壇とつながりのなかった省亭は日本で忘れ去られてしまいますが、欧米での高い評価は続き、彼の作品が多くのコレクターや美術館にコレクションされていきます。先述したドガのために描いた作品も、現在はアメリカの美術館が所蔵。本展では、そんな海外からの貴重な作品も見ることができます。
近年再評価が進み、これからブームがきそうな渡辺省亭の作品、まとまって見られるこの機会をどうぞお見逃しなく!
参考文献:展覧会公式ガイドブック『渡辺省亭 ―欧米を魅了した花鳥画―』
Information
会期 : ~5月23日(日)※会期中展示替えあり(前期:~4/25、後期:4/27~5/23)
会場 : 東京藝術大学大学美術館 本館 展示室1、2、3
開館時間 : 10:00-17:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
休館日 : 月曜日(5月3日は開館)
観覧料 : 一般 ¥1,700、大学生・高校生¥1,200、 中学生以下無料
※ 本展は事前予約制ではありませんが、今後の状況により変更及び入場制限等を実施する可能性がございます。最新情報は、ホームページでご確認ください。
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