生人形がお出迎え!…“エロ・グロ・退廃”がテンコ盛りの話題スポット
ananweb / 2021年4月18日 11時0分
退廃的、エロティック、グロテスク……そんな言葉がぴたりと合ってしまうアートが集まる展覧会が東京・竹橋の東京国立近代美術館で開かれています。会場には、幽霊や地獄図などグロテスクなものから、背景を知ってじわじわと感じるものなど、人間の欲望や闇を描き出した“あやしい”作品がテンコ盛り。この春注目のスポットをレポートします!
「生人形」がお出迎え…
【女子的アートナビ】vol. 202
『あやしい絵展』では、幕末から昭和初期にかけての日本美術を中心に、広告や挿絵、西洋美術なども含めた160点の作品を紹介。美しいだけでなく、退廃的で神秘的、妖艶、エロ、グロなど、人間の欲望やディープな闇の部分を映し出した「あやしい」雰囲気をまとうアートが集まっています。
展示は、まず1章のプロローグからスタート。最初の部屋に入ると、薄暗い空間のなかで赤い着物を身につけた一体の人形が待ち受けています。これは生(いき)人形と呼ばれるもの。何か怖~い人形なのかと思ってしまいそうですが、そうではありません。
生人形は、幕末から明治にかけて縁日や社寺などの見世物で使われていました。本物の人間のようにリアルに作られていて、今見ると少々怖い感じもしますが、当時はとても人気があったそうです。
生人形と同じ空間にいるのが、こちらの猫作品。暗い展示室で見るとけっこうギョッとします。声優の平川大輔さんがナビゲーターをつとめる音声ガイドを聞くと、この猫がときどき登場して、あやしい作品の背景なども教えてくれます。
エロティックで退廃的
続く2章では、明治から大正にかけての作品が展示されています。
ここで注目したいのが、ラファエル前派の画家ダンテ・ガブリエル・ロセッティが描いた官能的な作品《マドンナ・ピエトラ》。マドンナ・ピエトラとは、イタリアの詩人ダンテ・アリギエーリの詩のなかに登場する人物で、自分に恋する者を石に閉じ込めてしまう冷酷な女性です。
このような美しくあやしげな女性は、西洋でファム・ファタル(宿命の女・魔性の女性)と呼ばれ、多くの芸術作品に登場。ラファエル前派などが描いたこれらの作品は、当時の日本の芸術家たちにも影響を与え、アートや文学作品に登場するようになります。
表面的な美に抵抗
2章では、表面的な「美」に抵抗した作品も展示されています。
例えば、北野恒富の《淀君》は、豊臣秀吉の側室であった淀君が、落城寸前の大坂城で息子の秀頼を守ろうとしている姿を描いた作品。着衣が乱れ、表情はかたく、美しい女性像として描かれていません。本作品では、表面的な美しさではなく、内面にある意志の強さなどが表現されています。
最後の3章エピローグでは、大正末から昭和にかけて出版された雑誌の口絵や小説の挿絵などが展示されています。
関東大震災後に大きく変化した東京では、都市文化が発展。モダンなファッションが流行し、前衛的な芸術家たちも活躍します。
出版界では、エロ、グロものが人気を集め、探偵小説や怪奇小説が登場。この展示室では、当時人気だった小村雪岱や高畠華宵などが描いた“あやしい”雰囲気の挿絵や表紙絵を見ることができます。
ぜひ会場で!
明治期に西洋の文化や技術が急激にもたらされた日本では、芸術の分野でも、日本の古典と西洋文化が入り混じった“あやしい”雰囲気の作品が数多く生み出されました。
単純に美しいだけではない、心に刺さる作品の数々を、ぜひ会場でご覧になってみてください。
Information
会期 :~5月16日(日)
会場 : 東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー
開館時間 : 9:30-17:00(金・土曜は9:30-20:00)*入館は閉館30分前まで
※本展会期中に限り9:30開館(ただし「MOMATコレクション」、コレクションによる小企画「幻視するレンズ 」は10:00開場)
※臨時夜間開館日:金・土曜日以外の以下の日程も20時まで開館
4月25日(日)、4月29日(木・祝)、5月2日(日)、5月3日(月・祝)、5月4日(火・祝)、5月5日(水・祝)、5月9日(日)、5月16日(日)*入館は閉館30分前まで
休館日 : 月曜[ただし5月3日は開館]、5月6日(木)
観覧料 : 一般¥1,800、大学生¥1,200、高校生¥700、中学生以下無料
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