平井堅「ショックだったけど、致し方ない」 デビュー前に受けた衝撃指令とは
ananweb / 2021年5月23日 19時10分
デビュー25周年の最後の日にアルバムをリリースした平井堅さん。ソウルフルな歌声も、年齢を重ねて更にジェントルな見た目も素敵。だけど彼は今も誰かに羨望の眼差しを向け、憧れを歌にする。この時代の中で見つけた、「どこかの誰か」を照らす使命感とは。
デビュー25周年という節目に、ニューアルバム『あなたになりたかった』をリリースした平井堅さん。「歌」に対するひたむきな想いを胸に、活動を続けてきた。それはデビューを夢見ていた頃から変わっていない。
「デビューする2~3年前は学生でしたが、オールディーズハウスでアメリカンポップスを歌うバイトをしていました。当時、歌手にはなりたかったけどバンド活動はしていなくて、家庭教師をしたり歌うバイトをしたりしながら、オーディションを受けたりレコード会社にデモテープを送ったりする日々。そんな時にソニーのオーディションを受けたことがきっかけで、デビューを目指してオリジナル曲を作るようになりました」
今回の撮影でもスラリとした長身で服を着こなしていた平井さんからは考えられないけれど、当時のスタッフからは「とりあえず今持っている服を全部捨てようか」と言われるほど、見た目に無頓着だったのだとか。
「そう言われた時はショックでしたけど、致し方ないですよね。ファッションセンスは今も全然磨かれていないし(笑)、あまり興味がないので自分では服を一切買いません。友達に選んでもらったり、撮影で着た服を買い取ったり。そもそも物欲がないので、ごはんやお酒や旅行にしかお金を使うことはないし、今はコロナ禍でそういうこともできないですからね」
デビュー前も25周年を過ぎた今も、自らの欲望とは関係のないところで「歌」というものを表現し続けてきたのが平井堅というアーティストなのかもしれない。アルバム『あなたになりたかった』のジャケットが、自身のポートレートなのに表情が全くわからない写真であることも象徴的だ。
「タイトルの『あなたになりたかった』は、自分ではないものになりたいという願望なんですよね。シンガーソングライターって自分の個性や主義主張を声高に人にアピールする要素って大きいと思うんですけど。僕はこの仕事において、自分の意見を消す作業のほうが多い気がしているんです。単純に言うと、身の回りのスタッフ、自分以外の人のクリエイティビティをもらってアウトプットしてるというか。もちろん歌う時は自分が頑張るしかないんだけど、スピーカーとして鳴らしてるようなイメージ。だから自分でこういう服を着たいとか、こういうメイクをしたいとか、写真を選ぶにしても、みんなで決めてもらっていいくらい。自分のこだわりって、捨てたほうがこの仕事って上手くいく気がしていて。そういう意味で自分の感覚を殺すクセがついたというか、僕自身がそういう人間になっちゃったところがあって。だからジャケット写真で顔を消したり、こういうタイトルでアルバムを作ったのかもしれないですね」
個性的な人への憧れ今でもありますよ。
彼は自分のことを「ただ歌が得意だっただけで、歌うこと以外に関しては、特に何かが優れているわけでもないし、自分のセンスや感覚を全く信じてない」と言い切る。だからこそ周りのエキスパートを信じて平井堅というひとつのプロジェクトを作り上げてきた。それがポップにもシリアスにも振り切れていく表現の自由度を高め、また「僕以外の他者は全てクリエイティブな存在である」という考え方が「自分以外の主人公」をリアルに歌う作風にも繋がっていったのだろう。
「強烈な個性を持った人への憧れや羨望はもちろんありますよ。『この人みたいになりたいな』と毎日思うし、でも自分以外にはなれないっていう諦めもある。僕はいつも何かに強く想いを馳せて、とにかく『ここじゃないどこかに行きたい』と常に思ってるタイプの人間なのかなと思います。それは苦しいことなのかもしれないけど、僕にとっての原動力になっているので。生きる上でもそうだし、歌う上でもそう。『このままじゃいけない』という想いが活力になっています」
そんな想いはアルバム曲中の様々な境遇の主人公たちにも通じるものがある。特に「オーソドックス」という曲では、暮らしている街が退屈でうんざりしている女性の生き様が垣間見える。その虚しさや、悔しさ、しかしどこかで滲む「この街」への愛着まで、あまりにもリアルな筆致で描く。
「女性が主人公の歌ですけど、でも僕も地方出身で、国道沿いに住んでいて、『ここから出たい』とずっと思っていたし、そういう意味ではやっぱり僕の想いでもあるんでしょうね。地方都市に暮らしていて、そこから出られなくて、でもある種、憎みながらもその土地を愛しているような、そういう人の物語を書きたいなとずっと思っていたんです。どこかにいる誰か―そういう想いをしている人がいるならば、その人に一度ピンスポを当てて照らすことで、救うことはできないんだけど、どこかにこういう人はいるんだろうなと思って物語を曲にすることが、自分にとってカタルシスがあるというか、『見つけた』っていう気持ちがあるのかもしれないですね」
ひらい・けん 1972年生まれ、三重県出身。1995年にデビュー。「楽園」や「瞳をとじて」「POP STAR」などヒット曲多数。J-POP/R&Bを軸に様々なジャンルで楽曲を発表し、コラボも話題に。
シャツ¥51,000 パンツ¥67,000(共にLEMAIRE SKWAT/LEMAIRE TEL:03・6384・0237) 靴はスタイリスト私物
5年ぶり10枚目のオリジナルアルバム『あなたになりたかった』は多数のタイアップ曲と新曲による全13曲。【初回生産限定盤(CD+BD/DVD)】¥6,050 【通常盤(CD)】¥3,300 MUSIC VIDEO集『Ken Hirai Films Vol.15』も発売中。(すべてソニー・ミュージックレーベルズ)
※『anan』2021年5月26日号より。写真・長山一樹(S-14) スタイリスト・nadY ヘア&メイク・TAKE 取材、文・上野三樹 撮影協力・バックグラウンズ ファクトリー
(by anan編集部)
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