津軽弁JKがメイドカフェでバイト!? 心温まる人間ドラマ『いとみち』
ananweb / 2021年6月28日 19時10分
もやもやしてもけっぱれ! 青森発の心温まる人間ドラマ『いとみち』をご紹介します。
人見知りの女子高生がバイトをきっかけに成長する姿を追う越谷オサムの同名小説を、横浜聡子監督が実写化した人間ドラマだ。
主人公の相馬いとは、津軽三味線が得意な祖母と津軽弁を研究する大学教授の父と暮らす高校生。幼い頃に母を亡くしたため祖母に育てられた彼女の口から出るのは、今どき女子とは思えないハードコアな津軽弁だ。訛りと引っ込み思案な性格のせいで他人となかなか打ち解けられないいとはメイドカフェで働き始め、新しい人生の扉を開く!
メイド用語の「ご主人様」や「萌え萌えキュンキュン」の発声からして、訛りの強いいとにはハードルが高い。謎の鼻濁音が入ったり、イントネーションが奇妙だったり。しかも引きつり笑顔だし、よく転ぶ。不器用だけどじょっぱり(強情)ないとはバイト先で人にもまれ、徐々に成長する。彼女の世界を広げてくれるのは、自称“永遠の22歳”な先輩や人気No.1メイドだ。痴漢事件で自分に非があると言ういとを諭し、彼女のコミュ障の本質を見抜く言葉は心に突き刺さった。また初めての友達に悩みを打ち明けて、「自分ばっか」と冷静に分析されるくだりも沁みた。思春期は自分だけの悩みに囚われがちだが、第三者的な視線で自分を見つめることも必要なのだ。人と触れ合うことで世界を広げ、ゆっくりとだが着実に成長するいとの姿が愛おしい。もちろん成長するのは、ヒロインだけではない。メイドに偏見を持っていた父親との関係も進化するし、大股開きがカッコ悪いと感じていた津軽三味線への思いも大きく変わる。さらに閉店の危機に直面したカフェの仲間も、いとからある提案を受けて経営見直しに舵を切る。どのエピソードも「こういうことある!」と納得できる自然さで、人間を見つめる監督の温かい視線が感じられる。
いと役は、青森県出身の駒井蓮。内心のもやもや感をリアルに演じた上、猛特訓した津軽三味線の見事な演奏も披露する。また「りんご娘」として活躍するジョナゴールドや津軽三味線の第一人者である西川洋子(高橋竹苑)らが脇を固め、青森らしさを醸し出す。小説は3部作だし、シリーズ化を期待したい快作だ。
『いとみち』 監督・脚本/横浜聡子 出演/駒井蓮、豊川悦司、黒川芽以、横田真悠、中島歩、古坂大魔王、宇野祥平、ジョナゴールド、西川洋子ほか 青森県先行上映中、6月25日より全国公開。©2021『いとみち』製作委員会
※『anan』2021年6月30日号より。文・山縣みどり
(by anan編集部)
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