今はまだ「知ろうとする人にしか届かない」? リプロダクティブ・ヘルスを考える
ananweb / 2021年7月10日 21時10分
自分の体と相手の体を重ね合うセックス。もっと充実した時間を過ごすためには、自分の体について深く知ることが必要です。今、きちんと知りたい“私たちのリプロダクティブ・ヘルス”について、性教育YouTuber・シオリーヌさん、思春期保健相談士・にじいろさんにお話を伺いました。
リプロダクティブ・ヘルスとは?
【性と生殖に関する健康】
広辞苑には「安全な性生活を営む権利が女性に認められるべきだとする理念」という記載も。1994年カイロで開催された国際人口開発会議で提唱された概念で、日本では「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」と、“生殖に関する自由”を持つ権利とともに語られることが多い。
最近の動画の感想に、みなさんの意識の変化を感じています。
2年半ほど前から生理や避妊などにまつわる情報を扱う動画の配信を始めた、助産師で、性教育YouTuberのシオリーヌさん。
「開始当初は、“女性が顔を出し、性の話をおおっぴらにするなんて…”みたいな反応がすごく多かった。でも最近は、“大事なことですよね”とか、“これを見て婦人科に行きました”“彼女のために勉強しようと思います”など、いただくコメントが変わってきた。そして、情報を得て、アクションを起こす人が増えている印象があります。以前は、女性が性に関して積極的に情報を知ろうとすることを、“はしたない”と見る視線が強かったですよね。関心を持っているだけで、人になにか言われるんじゃないか、みたいな不安を抱えていた人も多かったと思います。でもSNSが当たり前の世界になったことで、人の視線を気にすることなく、性に関して学べたり、人と話ができるようになってきた。少しずつですが、性の話がタブーではなく、“日常の中に存在する話”になれている気がして、個人的にはとても嬉しい」
今はまさに、過渡期なのではないかと、とシオリーヌさん。
「昔に比べて正しい性教育の情報が手に入りやすくなったのは事実。でも今はまだ“知ろうとする人にしか届かない”状況です。リプロダクティブ・ヘルスの情報は、本来ならば学校教育で提供されるべきもの。自らリーチしない層にも広く知らせる努力を、これからも続けていきたいと思います」
知識を得ることで、より自分らしく自由に生きられる。
現在30代後半の、思春期保健相談士のにじいろさん。学生時代、いわゆる性教育をしっかり学んだ記憶があまりない、と言います。
「30歳を越えてから、体の不調を感じて初めて婦人科に行った人や、妊娠出産を考えたときに初めて、生理や体の仕組みに詳しく触れた、といった女性が本当に多い。大人になり自ら知識を得て初めて、生理をラクにする方法があったことや正しい避妊法を知り、“これを若いときから知っていたら、どんなにラクだったか…”という経験をした人が、私の周りにもたくさんいます。かつて10代、20代にとっては、リプロダクティブ・ヘルスにまつわる話は、どこか遠いところにあった。でも、ここ数年、風向きが大きく変わってきた印象がありますね」
性にまつわる話題がゴールデンタイムのニュースで取り上げられたり、番組が作られたり。また生理用品や、避妊方法の選択肢が増加。昔より性に対しての向き合い方に、ポジティブな雰囲気が漂っている、とにじいろさん。
「情報が増え、自分だけでなく社会としても知識が増えることで、“生理は我慢しなくていいんだ”とか“人と話して共有できる”と思えるようになり、今まで一人で苦しんでいたことが、少しずつ解消されるようになる。生理や避妊に対して受け身だった女性が、方法や生き方を選べるようになる。本当に良いことだと思います。これを読むみなさんもぜひ、性と人生の選択肢を増やしてほしいです」
シオリーヌさん 助産師、性教育YouTuber。本名・大貫詩織。新卒で助産師として総合病院産婦人科病棟で勤務。2019年よりYouTubeチャンネルに性教育にまつわる動画を投稿。著書に『CHOICE 自分で選びとるための「性」の知識』(イースト・プレス)が。
にじいろさん 思春期保健相談士。元養護教諭。現在はフリーランス性教育講師として小中高校を中心に活動中。大人向けの講座も開催。医師夫婦・アクロストンの著書『思春期の性と恋愛 子どもたちの頭の中がこんなことになってるなんて!』制作協力を。
※『anan』2021年7月14日号より。
(by anan編集部)
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