「命を削っても苦にならない…」88歳の女性作家が命がけでつくった迫力アート
ananweb / 2021年7月11日 19時30分
森美術館で『アナザーエナジー展』が開かれています。世界14か国出身の50年以上のキャリアをもつ女性アーティスト16名による代表作や新作など約130点が集結。88歳の現役アーティスト、三島喜美代さんのしびれる生コメントもご紹介!
どんな展覧会?
【女子的アートナビ】vol. 214
『アナザーエナジー展:挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人』では、現役で活躍する71歳から106歳までの女性アーティスト16名による作品を展示。絵画をはじめ、彫刻、映像、大型インスタレーションなどさまざまな作品が紹介されています。
森美術館館長の片岡真実さんによると、本展は「ジェンダーや年齢、ダイバーシティの意識を高く喚起するものでありながら、そうしたアイデンティティからも解放され、個々のアーティストの芸術性、個々人の尊厳に意識が向かうような展覧会を目指した」とのこと。
16名の参加アーティストは、近年国際的な評価が高まっている人や、それぞれの国や地域で長年高い評価を得ながらも国際的な評価が待たれる人たちで、世代やテーマの多様性などのバランスを考慮して選ばれたそうです。
入り口から圧倒…!
それでは、展示品をいくつかピックアップしてご紹介していきます。
まず入り口を抜けると、フィリダ・バーロウさん(1944-)のインスタレーション《アンダーカバー 2》が登場。空間いっぱいに広がる巨大な作品に度肝を抜かれます。28本の柱の上に34枚の布と77個の玉が乗っているこの作品は、詳細な設計図があるわけではなく、現場で素材と向き合いながら組み立てられているそう。
ご高齢のアーティストたちによる展覧会と聞いてイメージしていたものとは真逆の、とても力強い作品に最初から驚かされます。
美しい作品に描かれているものは…
ミリアム・カーンさん(1949-)の油彩画《美しいブルー》も見逃せない作品のひとつ。
タイトルどおり、鮮やかな青色が目を引く美しい絵なのですが、よく見ると右側に両手をあげた人影のようなものが描かれています。実は、この人たちは難民。自国から逃げていく難民が海に沈んでいくところを描いた作品です。
ユダヤ系であるカーンさんは、戦争や人権、社会問題などに関心をもち、その強い思いが作品にも投影されています。
命を削って仕上げた作品
最後は三島喜美代さん(1932-)の迫力ある作品群をご紹介。うずたかく積み上げられた新聞の束や、ドラム缶からあふれた新聞……これらはすべて陶でつくられた焼き物です。
三島さんは1960年代に新聞や雑誌の切り抜き、チラシ、蚊帳や着物などを使ったコラージュ作品を制作。
70年代には、社会に氾濫する膨大な情報に対し不安感や恐怖感を覚え、新聞を独自の技法で焼き物に転換し、進展する情報化社会への危機感を表現していきました。
取材会に登壇された三島さんは、88歳になる現在も「毎日朝起きるとすぐに仕事(作品制作)をしている」といい、「命がけで作品をつくって遊んでいます」と笑顔でコメント。さらに次のように語りました。
「命を削って仕事をしていますが、苦になりません。自分のつくりたい作品ができあがったときのほうが喜びが大きいからです。今回もずっと立ったまま新作をつくっていたので足が動かなくなりましたが、リハビリをすればいつか足は動きます。仕事をとるか体をとるか。私は仕事をしていると自分の気持ちが落ち着いて、楽しいのです」
「好奇心を失わず、おもしろいと思ったらすぐにやる」と語った三島さんの作品からは、「現代社会への警鐘」といった重いテーマだけでなく、ふわっと温かいユーモアも感じられます。何より、88歳になっても毎日体を張って楽しく仕事をしているという生き方がカッコよく、しびれました。
女性アーティストたちのパワーを感じられる『アナザーエナジー展』は9月26日まで開催。
取材・文:田代わこ
Information
会期 : ~9月26日(日) 会期中無休
会場 :森美術館
開館時間 : 10:00~20:00(最終入館 19:30)※火曜日のみ17:00まで(最終入館 16:30)
※当面、上記の通り時間を短縮して営業いたします
観覧料 :※事前予約制(日時指定券)を導入、詳細は公式サイトをご確認ください
平日 一般 ¥2000 / 65歳以上 ¥1700 / 大学・高校生 ¥1300 / 4歳~中学生 ¥700
土日祝 一般 ¥2200 / 65歳以上 ¥1900 / 大学・高校生 ¥1400 / 4歳~中学生 ¥800
※7月31日(土)まで、学生および子供料金が一律ワンコインの¥500で入館できるキャンペーン中
※最新情報は、美術館のウェブサイトをご確認ください
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