会って話して生まれる熱量が大事? 古着屋『DEPT』代表の“ものづくり”論
ananweb / 2021年7月14日 20時10分
自身の問題意識や好きなことを中心に、つながりの点を線、面へと様々なベクトルで広げていくeriさん。流動的なコミュニケーションが増える時代。根を張る縁をいかにして築くのか、お話を伺いました。
コネクターのような、人と出会い地場を張る積極的アプローチ。
幼少期から、職種や人種、ジェンダーなど多様な大人に囲まれて育ったというeriさん。人との関係性は、10代から今まで年齢を重ねるごとに変化を経てきた。
「18歳から仕事を始めたので、同世代の友達と遊んだのは、高校の3年間くらい。それからはずっと、大人たちに囲まれて仕事して遊んで生活していました。20代は本当に忙しかったです。仕事して遊んで、寝る暇なく10年が過ぎていった感じで…人間関係もけっこうめちゃくちゃだった(笑)。でも、この時期にたくさんの人に出会って様々なことを教わりました。20代の後半からは、人と出会って仲が良くなるまでの時間に変化が出てきて。長い付き合いだから仲が良いとかではなく、数回しか会ってなくても心許せる人に出会えるようになった。若い頃にはなかった新しいリレーションシップの形が生まれているのは、年を重ねたこともあると思うけど、自分を繕ったり飾ったりしなくていいと思えるようになったからかな。私自身がそう在ると、相手も同じようにそのままでいてくれる気がして。30代後半になった今、人間関係は充実していると感じています」
10代から仕事を始め、駆け抜けて30代後半へ。多くの人と出会いながら蓄積された人間関係が主体的なものへと変化している。
「それまで着飾っていたのが、もうなんでもいいや~ってなったのかも(笑)。自分自身に余裕が生まれてきたことと、人への興味が強まったのは大きいです。表現が難しいのですが、前はもう少し排他的な人間だったかもしれない。ひとりでいるほうが好きだったし、たくさんの人と一緒にいる必要はないと思ってて。先天的に人間は好きだけど、人のことを好きになって、自分をそのまま表現することが怖くなくなってきたのは変化としてあると思います」
自身のブランド『mother』を成長させながら、’15年には父が創設した古着屋『DEPT』を引き継いだeriさん。そこからまた、一段と活動の幅が広がっていくことに。
「『mother』でも古着を扱ってきたので、父の会社を継いだことで大きな変化はないのですが、その頃から自己紹介で『古着屋です』と言うようになって。自分のアイデンティティのひとつに“古着屋”が加わったことで、人とのコミュニケーションがスムーズになった気がします。“古着を扱っている人”として私に興味を持ってもらえたり、そこから話が広がったり。意図したわけではないのですが、いま私が取り組んでいる環境や政治に関する活動にもつながっているのかもしれない」
ファッションの枠組みだけでなく、環境問題へのアクションなど、ジャンルを問わず人と関わりながらのものづくりを通じて、行動にも変化が表れてきたという。
「自分からアプローチすることが増えました。最近だと、大麻布を使ったプロダクトを作っていて。大麻布を研究している吉田真一郎さんという先生がいるのですが、吉田さんの記事を読んで『会って話を聞きたい!』と思って実際に会いに行きました。これまでも、直接人に会って話して教わることが多かったし、会った時のケミストリーや熱量のようなものが自分にとってすごく大きいものだと改めて思って。それを自分から作り出していきたい。その気持ちが私の人見知りを凌駕したのかな」
自分の興味や関心によって、心が動けば行動する。そんなeriさんが惹かれる人とは。
「その人が使う言葉や仕草、私じゃない誰かへの対応など、ふとした時の、その人の素の部分に惹かれることが多くて。最近、正直に生きていきたいと思うんです。それが良いことかどうかはわからないけれど、素直でありたい。私は、好きな人とだけ、一緒にいたいと思っているので」
出会いの化学反応を欲し、人に会いに行き、学んでいく。
「知りたいことは、なるべく会って教わりたい。大麻布、ダウンのリサイクル素材、藍染め…様々な産地の方と話していると“こんなやり方があるんだ!”と発見があって。その会話の先にあるものづくりがおもしろい」
エリ 1983年生まれ。DEPT Company代表。配信中のPodcast「もしもし世界」のパートナー佐久間裕美子さんと共に作ったウェブサイト「クイズ!この国の問題が問題」がオープン。Instagramは@e_r_i_e_r_i
※『anan』2021年7月21日号より。写真・嶌村吉祥丸 取材、文・菅原良美(akaoni)
(by anan編集部)
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