健康長寿の秘密は腸にあるかも!? 驚きの最新“腸”ニュース7選
ananweb / 2021年7月21日 20時10分
昨今、腸の研究は日進月歩の勢いで進んでいます。そんな中から、新しく始めたい腸活習慣やアンチエイジングのスーパーサプリメントなど、最前線の話題を7つお届けします。
1、日本人の腸内細菌はユニーク!
最近の研究では、腸内細菌叢、つまり腸内にすんでいる菌の種類が国によって異なることが明らかに。「世界各国の健康な人について腸内細菌叢を調べたところ、日本人の腸には炭水化物やアミノ酸を代謝する機能の高い菌が多いことが分かりました。おかげで、ほかの国の人に比べて短鎖脂肪酸や水素をたくさん作ることができます。短鎖脂肪酸はカラダのエネルギーになり、水素は高い抗酸化作用を発揮する物質。一般的に日本人が健康で長生きなのは、そういった腸内細菌の傾向に秘密がありそうです。ほかにも、約90%の人が海藻を分解する細菌を持っているという点も独特。同じアジアでも、中国では約15%の人しか持っていないのです」(医学博士・江田証さん)
2、“メトホルミン”で腸の抵抗力をアップ
腸内細菌を整えるサプリメントが続々登場する中、注目を集めている薬品がある。「血糖値を下げる糖尿病の治療薬“メトホルミン”は、健康に役立つ腸内細菌を増やして腸のバリア機能を高めることが分かっています。また、腸内細菌の種類を変えることで体重を落とすので、肥満外来でも処方されているお薬。糖尿病患者はがんに罹る確率が高いのですが、メトホルミンを飲んでいる糖尿病患者はがんに罹る確率が低いことから、がんを防ぐ効果が期待されています。アメリカでは“究極のアンチエイジングドラッグ”と呼ばれ、大規模な老化予防試験も始動。大腸ポリープを減らす効果もあるため、将来病気予防のサプリメントとして流通する可能性も」(医学博士・江田証さん)
3、究極の善玉菌“アッカーマンシア・ムシニフィラ”に注目!
腸内細菌の種類とその働きも続々と明らかになっており、スーパーヒーロー的善玉菌が登場。ちょっと発音しにくいけれど、“アッカーマンシア・ムシニフィラ”と呼ばれている。「アッカーマンシア・ムシニフィラは、腸壁表面の粘液層を作るムチンを分解すると同時に、ムチンを作れという指令を出します。そのため腸のバリア機能が整い、カラダの免疫力が上がります。また、肥満や糖尿病を防いだり、ある種の抗がん剤の効果を高めることも明らかになってきました」(江田さん)。アッカーマンシア・ムシニフィラは、もともと腸にすんでいる細菌。増やすには茶カテキンのほか、ブドウやクランベリーのポリフェノールを摂ることが有効だとされている。
4、朝の歯磨きが大腸がんを防ぐ!?
朝起きたら、水を飲んで腸を起こす前に口の中の掃除をしよう。「朝起きてすぐ水を飲むと、睡眠中に口の中で繁殖した菌が腸に到達してトラブルを起こします。歯と歯の間にいる菌はガスを作ってお腹の不快感を起こすし、歯周病菌が大腸がんの原因になり得ることも明らかになりました。胃がんの99%がピロリ菌による感染症であるのと同じように、多くの大腸がんがフソバクテリウムという歯周病菌によって悪影響を受けていることが分かってきました。そのため今、口腔内細菌の除菌療法が注目を集めています」(江田さん)。朝は、水を飲む前に歯を磨くか、うがいをすること。そうすれば、口の中の菌が腸に大量流入するのを防げるはず。
5、“デブ菌”“ヤセ菌”は間違い!?
肥満解消に役立つと話題の通称“デブ菌”&“ヤセ菌”。でも実はこの“デブ菌”こそ、健康長寿の秘密である可能性が。「これまでは、主に動物実験の結果から“デブ菌”と“ヤセ菌”の存在が指摘されていました。しかし“デブ菌”と“ヤセ菌”の比率は、実は日本人やアメリカ人の肥満度とは全く関係ないということが明らかに。このように、動物実験のデータと実際の人間のデータが異なるのは、よくあること。さらに最新の研究では、日本人の場合、“デブ菌”を多く持っている人のほうが健康長寿であることが明らかになっています。“デブ菌”は短鎖脂肪酸の一種である酪酸を作り、免疫力を高めるありがたい善玉菌だったのです」(江田さん)
6、“問題ない便秘”と“悪い便秘”がある
臨床の傍ら腸の形と健康について研究している水上健さんによると、便秘の人の中には“スーパー腸”と呼ぶべき素晴らしい腸の持ち主もいるという。「便秘に悩む患者さんをレントゲン撮影すると、腸の中に便もガスも何もない人がたまにいます。そういう人は、食べたものを完璧に消化しているスゴイ腸の持ち主。なかには、1か月便秘だけど腸は空っぽという人も。話を聞いてみると、仕事に情熱を傾けていたりアスリートで大会期間だったり、全神経を何かに集中させると便が止まるようなんです。便秘にはいくつかタイプがありますが、スーパー腸の持ち主は“痙攣性便秘”といって、自律神経の緊張から便が止まる人が多い。例えば旅行中は便が出ないなどというケースで、便秘のうち3人に1人はこのタイプ。痙攣性便秘はストレスがなくなれば解消するので、あまり心配しなくても大丈夫。むしろ気にしないほうが、便秘が早く解消しますよ」
7、日記で便秘にサヨナラできる!
腸の不調がなかなか改善しないという人は、日記を書く習慣をつけてみて。「脳と腸は、迷走神経や交感神経、ホルモンやタンパク質のやりとりなどで密に連携をとっています。そのためストレスが腸の不具合に、腸の不具合がストレスにつながり、便秘や腹痛などからなかなか抜け出せなくなるのです。この負の連鎖を断ち切るには、認知行動療法が効果的。認知行動療法とは、思考のクセを把握して、ストレスの原因になる考え方や行動から脱却する訓練のことです。日記をつけることも、認知行動療法のひとつ。毎日の出来事とそれに対する考え方を記録し分析することで、いろいろなことにストレスなく対処できるようになるのです。慢性的な腹痛を抱える患者さんが日記をつけると、症状が改善して医療機関の使用頻度が約50%減るという調査結果があります。また、日記をつけることで免疫力が向上したり、睡眠の質が改善するという報告も」(江田さん)
江田さん著、『3週間でお腹が整う まいにち腸日記』¥1,430(池田書店)。思考のクセや行動の改善に役立つ日記を書ける本。
江田 証さん 医学博士、日本消化器病学会認定専門医、江田クリニック院長。毎日全国から訪れる人の診察をする傍ら、多くの医学論文を精読。『新しい腸の教科書』(池田書店)など著書多数。
水上 健さん 国立病院機構久里浜医療センター内視鏡部長。2万人以上もの腸を内視鏡などで診察。著書に『ねじれ腸 落下腸 滞った便がグイグイ出てくる 快うんマッサージ』(主婦の友社)ほか。
※『anan』2021年7月28日号より。イラスト・鈴木衣津子 取材、文・風間裕美子
(by anan編集部)
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