清水尋也、演じるうえで「“目”が一番大事」 『さがす』で連続殺人犯役に
ananweb / 2022年1月28日 21時10分
「ダメだったらやめればいい」。そんな思いで小6の時に俳優活動を始めてから早10年。今ではカメレオン俳優と謳われるまでの存在になった清水尋也さん。意識が変化した転機、そして今の覚悟とは。
NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』で演じた、マッシュルームカットがトレードマークの気象予報士・マモちゃん役が記憶に新しい。一方で、一度見たら脳裏に焼きつく強烈な存在感を武器に、サイコパスや引きこもりなど、ひとクセもふたクセもある難役を得意とし、猟奇的な役もフラットに演じられる稀有な俳優でもある。公開中の映画『さがす』では、自身も「原点回帰」と語る狂気に満ちた連続殺人犯・山内照巳役に挑んでいる。
――映画『さがす』のオフィシャルコメントで、「役者として“たぎる”脚本で手が止まらなかった」と語っていらっしゃいましたが、一体どんなところにたぎる思いを引き起こされたのでしょうか?
役者をやっていれば当然、おもしろい作品や自分好みの作品に出たいという思いがあります。『さがす』は筋がしっかりしていてシリアスな温度感を保ちつつ、遊び心もあるバランスの良さや、作品の雰囲気自体も自分好みで引き込まれました。そう思える作品に出合えるのは貴重な経験ですし、役者として燃えたというか、絶対にいい作品にしてみせるっていう気持ちが湧いてきた感じですね。
――山内を演じるうえで一番大事にしたのはどんな部分ですか?
目です。山内は普通の青年ぽい部分と狂気を持ち合わせた二面性のある男。普通にしている時と殺人鬼の顔をする瞬間の差をしっかりつけたかったので、そのためには目が一番大事かなって。自分でも意識してやっていたんですけど、監督もそう思っていらっしゃったみたいで、目に関しては「もっとトローンとした感じで」とか、その都度、試行錯誤を重ねて細かく作っていきました。最終的には“あの目”っていう共通の認識ができたので、「このシーンは“あの目”でいきましょう」で伝わるようにもなりましたね。
――共演者の方の演技も素晴らしくて目が離せませんでしたが、清水さんの印象に残っているのは?
伊東蒼ちゃんの天才ぶりに毎日心を打たれてました。完成した作品を観てより一層思いましたし、心から尊敬してるので、またぜひ共演させていただきたいなって。あとは、(佐藤)二朗さんが本当に変なおじさんなんだなっていうのが印象的でしたね(笑)。共演させていただくのを楽しみにしていたんですけど、本当にテレビで見るとおりの方で大好きです。二朗さんが僕たち若手にも気さくに話しかけてくださったおかげで、現場の雰囲気もすごく和やかでした。
――ズバリ、完成作の満足度は?
300%! 本当にこの作品に出られてよかったなって思ってます。心から。もともと殺したり殺されたりっていう役は多かったんですけど、ここ2~3年はそこまでディープな役がなかったので、原点回帰じゃないですけど、また一つ成長した清水尋也を見せられるかなって。公開前からこれは絶対に話題になると思っていたくらい純粋に映画としても素晴らしいので、反響が楽しみで仕方ないです。むしろこれが通用しなかったら、もうどうしようもないんじゃないかなとも思っています(笑)。
――清水さんは、芸能活動をしていたお兄さんの影響で小6の時に事務所に入られたんですよね?
影響というか、たまたま当時の兄のマネージャーさんに声をかけてもらって無理やり入れられた感じです(笑)。3回くらい断ったんですけど、無理やり連れていかれた事務所のレッスンが楽しかったので、なんとなく始めてみようかなって。学生だったので基本的には学業優先ですし、別にこの仕事を一生やっていくつもりもなく、ダメだったらやめればいいやぐらいの気持ちで始めて今に至ります。
――意識が変化したきかっけは?
やっぱり映画『渇き。』が大きいです。まだデビューして1年ちょっとだったので、撮影中は何もわからない状態だったんですけど、公開してから自分がどれだけ大きな作品に出させてもらって、どれだけすごい人たちと共演させてもらって、その中でもどれだけいい役をいただけたかってことに気づいて。最初に街で声をかけられたのも「『渇き。』出てましたよね」でしたし、いまだに「『渇き。』の子」って言われたりもするんです。そこで自分が不特定多数の人に認識される立場であることを理解して、強い自覚を持つようにもなりましたし、単純に声をかけてもらったことが嬉しくて、もっともっといろんな人に知ってもらいたい、認めてもらいたいと思うようにもなりました。
――映画『アウトサイダー』に出演を決めた時、映画を取るか、在籍していた中高一貫の進学校の卒業を取るかという決断を迫られて、俳優業を続けていくことを選んだと過去に語っていらっしゃいましたが、その選択に後悔は?
まったくないです。それもそうですし、今までにしてきた選択の中で後悔したことは一度もないです。『アウトサイダー』を選んだ時は、後悔しないように生きなさいと母親にも言われました。結果、母親が望む選択ではなかったのですが、そこを裏切ってしまう以上、ちゃんと結果を出して、この道を選んで間違ってなかったって母親にも思ってもらわないといけないし、自分でも思わないといけないなって。でも今こうして、これだけ順調にお仕事させてもらって、友達にも恵まれて、毎日幸せに楽しく生きられてる時点で、何も間違ってなかったなって思ってます。
――この作品をきっかけに、活躍の場を広げるためには英語が必要だと感じられて、LAに短期留学されたんですよね。振り返ると、どんな経験でしたか?
人生、変わりましたね。単純にコミュニケーションをとれる人数が1億2600万人から何十億人に増えたっていう時点で世界が変わってるんですけど、誰も僕のことを知らない環境で気楽に過ごせたことで、自分の凝り固まった価値観にとらわれなくなりましたし、余計なことを気にしなくなったっていうのは大きいですね。帰ってきてからも、良くも悪くも人の目を気にしないし、何を言われても何も思わなくなりました。
しみず・ひろや 1999年6月9日生まれ、東京都出身。2012年、ドラマ『高校入試』で俳優デビューしたのち、映画『渇き。』や『ソロモンの偽証』など話題作に次々と出演し、脚光を浴びた。出演映画『スパゲティコード・ラブ』が公開中のほか、現在放送中のドラマ『となりのチカラ』(テレビ朝日系、毎週木曜21:00~)では上条知樹を演じている。
出演した映画『さがす』は絶賛公開中。「お父ちゃんな、指名手配中の連続殺人犯見たんや。捕まえたら300万もらえるで」。そう言い残して姿を消した父・原田智(佐藤二朗)を捜す娘・楓(伊東蒼)は、青年=連続殺人犯・山内照巳(清水尋也)にたどり着く。監督・脚本/片山慎三 出演/佐藤二朗、伊東蒼、清水尋也、森田望智ほか。
※『anan』2022年2月2日号より。写真・岩澤高雄(The VOICE) スタイリスト・八木啓紀 ヘア&メイク・三田明美 インタビュー、文・菅野綾子
(by anan編集部)
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