藤間爽子、26歳で日本舞踊の家元襲名「こんな舞踊家がいてもいいんじゃないかな」【WEB限定カット&一問一答】
ananweb / 2022年5月18日 20時30分
幼少より、祖母の紫派藤間流家元・初代藤間紫に師事し、日本舞踊家として活躍。現在は話題のドラマ『マイファミリー』に出演するなど、俳優としても活動中の藤間爽子さん。祖母も歩んだ舞踊家と俳優の二刀流の道を邁進する。
「祖母を真似してということではないのですが、気がついたら同じ道に進んでいました。小さい頃から日本舞踊をやっていたせいか、表に出ることが好きで。学芸会や演劇部でも率先して主役をやるタイプだったんです(笑)」
2つの肩書を持つ強みは、「表現の幅が広がる」こと。
「俳優業をやることで、演技の引き出しは増えたと思いますし、本番に臨む回数も間違いなく増える。舞踊家は人に教えることが主な仕事で、公演会も、例えば歌舞伎のような長期間ではなく、多くて3日程度。でも、俳優として舞台に出演したら2週間ぐらいお客様の前でお芝居できたりするので、場数を踏めるのも大きいですね」
昨年、三代目藤間紫を襲名。26歳という若さで流派を背負う覚悟と責任の重さはいかほどか…。
「襲名に関しては、小さい頃からそれとなく言われていて。ただ、14歳のときに祖母が他界し、当時はまだ家元になれる年齢でもないので、二代目を祖父が継承。その後、私は俳優業もスタートさせ、なかなか家元になる覚悟が決まらず、揺れ動いていたんです。でも、正直このまま逃げていても自信を持てるときなんて来ないかもしれないと思ったら、むしろ若さを武器に、皆さんに支えてもらいながらやってしまったほうがいいのかなと、襲名を決意しました」
今年1月には襲名披露公演を開催。決意を胸に挑んだ演目は、歌舞伎舞踊の中で女形の最高峰といわれる『京鹿子娘道成寺』。
「一つの節目として、あえて高い壁に挑戦したいと思って。でも、本番を迎えるまでは恐怖との戦い。1年ほど前からお稽古に取り掛かり、最後の1か月は毎日稽古場にこもって踊り、自分と向き合う時間を過ごしました。公演を終えて、周りの方々からは『もっと頑張っていかなきゃね』という厳しいお言葉もいただきましたが、それはありがたいこと。現状に満足したら終わりですし、自分も幕が閉じたあと、もう一回やりたいと思った。また30代で踊るぞって」
何度でも同じ演目に挑戦したくなる。「それこそが日本舞踊の奥深さであり、醍醐味」と話す。
「7月に『藤娘』という演目を踊るのですが、お酒を飲んで酔っ払う振りが出てくる。私は過去に2度踊ったことがあるのですが、最初が小学6年生で、2度目は高校生。酔っ払う感覚はわからず、こんな感じかなと想像して演じていたものが、今は経験を元に演じられる。同じ演目でも年齢によって感じ方も違い、長いスパンで変化を楽しんでいけるのが日本舞踊の面白さなのかなと思います」
家元としての一歩を踏み出し、昨年、日本舞踊の配信映像作品でも主演を務めた藤間さん。
「『地水火風空 そして、踊』は日本舞踊を盛り上げていこうと考えられた試みで、映像作品の中で踊るというのは私も初めて。普段は引きで見ているものを、手先や足元に寄って撮ったりするので、細部まで見ることができるのは映像ならではの魅力ですし、“日本舞踊ってカッコいいな”と改めて惚れ直しちゃいました(笑)」
同時に、劇場空間を飛び出して踊る楽しさを知り、新たな願望も。
「去年、『あしかがフラワーパーク』で満開の藤の花を見たのですが、今度踊る『藤娘』をここで踊りたいと思ったんですよね。もちろん日本舞踊は劇場で踊るように考えられているし、実際にはないものをあるように演じる面白さもある。でも、本物の藤の花の前で踊ったり、演目ゆかりの地で作品の背景を感じながら演じるのも楽しいだろうなと思うんです」
慣習や固定観念に囚われず、柔軟な視点で日本舞踊を楽しむ。そこには、家元の肩書に縛られず、「一人の人間としてやりたいことをやる」という強い信念が。
「責任ある立場ではありますが、自分が楽しいと思えなければ続けられない。日本舞踊をすごく好きだからこそ、嫌いになってしまわないように、楽しむことを大事にしています。私の場合、俳優業もやらせてもらっているので、なかには『責任感が足りない』『舞踊を疎かにして…』と思う方もいるかもしれないけれど、こんな舞踊家がいてもいいんじゃないかなって思うんですよね(笑)」
「家元としてのコメントを求められると、正直ドキドキしちゃう」とハニかみながらも、伝統芸能の未来にしっかり目を向けている。
「今は『劇団ひまわり』の役者さんに教えるなど、生徒さんを増やす活動も考えています。日本舞踊を通して、所作や礼儀作法、日本人が持つ心の美しさを伝えていけたらいいなと思って。日本舞踊はハードルが高いと思われがちですが、着物を着てみたい、美しい所作や立ち姿を身につけたい、健康のために体を動かしたい…といった気軽な気持ちで一度触れてみてもらえたらうれしいですね」
WEB限定公開の「一問一答」
藤間爽子さんに10の質問を投げかけてみました。
Q. 朝起きて、一番にすることは?
カーテンを開ける。
Q. なかなか眠れない夜、何をする?
寝れないときは、寝ようと思わないで諦める。かといって、携帯をいじったりもしないでぽけーっと、ベットの中でただボーっとする。
Q. 犬派? 猫派?
どっちもって言いたいけど、犬を飼っているので犬派。
Q. タイムマシーンがあったら過去に行きたい? 未来に行きたい?
過去。おばあちゃんが生きていた頃に、今のこの自分の状態で戻りたい。
Q. 宝くじが当たったら、何に使う?
額にもよるな(笑)。貯金はするけど、旅行に行きたいです。
Q. 愛用のマスクはどんなデザイン?
立体型のサンカクになるタイプ。お稽古してるときにマスクすると苦しいのですが、そのタイプだと息を吸いやすいんです。
Q. 好きなおにぎりの具は?
迷う~。白米もいいけど、ふりかけの混ぜご飯みたいなものも好きです。「まつのはこんぶ」を混ぜたのも大好き。
Q. あなたの弱点を教えてください。
ジェットコースターが苦手です。地に足がついてないところや、飛行機とかふわふわしてるのも苦手。
Q. 子どもの頃の夢は?
小学生のときに答えていたのは、「日本舞踊のできる女優さん」。
Q. 無人島に持って行くなら?
家族とか仲間。物とかいらないので、大切な人と一緒に行きたいです。
ふじま・さわこ 1994年8月3日生まれ。東京都出身。日本舞踊家として活動する傍ら、劇団「阿佐ヶ谷スパイダース」に所属し、俳優としても活躍。現在はドラマ『マイファミリー』(TBS系・日曜21時~)に出演中。
トップス¥19,800 スカート¥46,200(共にシーエフシーエル cfcl.jp) ハートリング¥16,500 サファイヤリング¥88,000(共にエナソルーナ ) その他はスタイリスト私物
※『anan』2022年5月25日号より。写真・小笠原真紀 スタイリスト・石川美久 ヘア&メイク・村上 綾 取材、文・関川直子
(by anan編集部)
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