葵わかな「ちぐはぐ感が魅力的」 演劇界を騒然とさせた、野田秀樹の傑作に挑む
ananweb / 2022年5月29日 21時40分
太平洋戦争開戦前夜の長崎で、考古学者のカナクギ(片岡亀蔵)の助手であるオズ(大鶴佐助)が遺跡を発掘する。それは、若く美しいヒメ女が治めていたが滅亡した古代王国だった。現代と古代の世界が折り重なり、やがてとんでもない古(いにしえ)の秘密が明かされていく。野田秀樹さんが1999年に書き下ろし、これまでタブー視されてきたテーマに真っ向から切り込み、壮大なスケールで描かれた戯曲『パンドラの鐘』。今作で葵わかなさんが演じるのは古代の女王・ヒメ女。
「最初に脚本を読んだとき、キャッチーな作品だなと思ったんです。時代が行き来するので、最初は少し混乱もするけれど読み進めばわかってくるし、小説のようにいろんなところに伏線が張り巡らされていて、最後にそれがわかるとすっきりする。それでいて、観る人によっていろんな捉え方ができる物語だと思います。答えがひとつじゃないというか、定まった答えを提示するのではなく、伝えたいことをニュアンスで描いて、大事なことは言葉にしきらないんです。そこがお洒落だし、明確な言葉を使わないことが逆に、そのテーマに対して敬意を払っているように感じました。今の社会情勢や人々が抱えているものに対して、いろんな角度から寄り添ってくれるような物語だと思うし、そういう側面がありながら、コメディチックなセリフやテンポ感で進んでいったりもする。そのちぐはぐ感が魅力的ですよね」
演出を手がけるのは、若手の気鋭として注目を集める杉原邦生さん。初演時は、野田さんと蜷川幸雄さんが同時期に本作を上演。まるで違う演出で上演されたことで、戯曲の多面的な魅力がより浮き彫りにされた。今回の杉原演出版は、「華やかな舞台になりそう」とのこと。
「セットだったりダンサーの方の動きだったりは、イメージの中に歌舞伎の要素も入っているようで、和洋がミックスされているんじゃないかと思います。かと思えば、音楽は現代がミックスされた不思議な雰囲気で、それが爆音で流れたりもして」
ヒメ女は、兄・狂王の幽閉により女王に担ぎ上げられるが、次第に自分の役割を自覚していく。
「14歳の女の子がどうやって成長していくのか、その過程をどう作るかが大事じゃないかと思っているんですよね。最初は14歳の少女らしく不安定さがあって無知で。でも大人になっていく中で、純粋の塊ゆえに出会うものすべてからいろんなことを吸収して、ときには間違ったりしながらも女王としての覚悟を持っていく。真っ白なものが徐々に色づいていく感じを、今はまだどう表現できるかわからないですけれど、素敵に演じられたらと思っています」
3年前にミュージカル『ロミオ&ジュリエット』で初舞台を踏んで以来、舞台出演がコンスタントに続く。
「ミュージカルに参加できたとき、自分が知らなかった舞台に立つ楽しさを教えてもらったんですよね。その後に経験したストレートプレイの舞台では、自分が思っていた価値観が総入れ替えされるくらいの刺激をもらって、視野をものすごく広げてもらえたんです。ドラマで描かれるような身近に起こりそうな物語もすごく好きですけれど、それとはまた違う別の刺激や興奮を舞台では味わわせてもらえている気がします」
COCOON PRODUCTION 2022 NINAGAWA MEMORIAL『パンドラの鐘』 古代王国の女王・ヒメ女(葵)のために葬式屋のミズヲ(成田)が持ち帰った「パンドラの鐘」が、現代の長崎で掘り起こされる。鐘に記された、王国滅亡の秘密とは? 古代の閃光の中に浮かび上がった〈未来〉の行方とは? 6月6日(月)~28日(火) 渋谷・Bunkamura シアターコクーン 作/野田秀樹 演出/杉原邦生 出演/成田凌、葵わかな、前田敦子、玉置玲央、大鶴佐助、柄本時生、片岡亀蔵、南果歩、白石加代子ほか S 席1万1000 円ほか Bunkamuraチケットセンター TEL:03・3477・9999(10:00~17:00) 大阪公演あり。
あおい・わかな 1998年6月30日生まれ、神奈川県出身。最近の出演作にドラマ『女の戦争~バチェラー殺人事件~』『インフルエンス』『年の差婚』、舞台『冬のライオン』、ミュージカル『The PROM』など。
Tシャツ¥56,100 パンツ¥108,900(共にマルニ/マルニ ジャパン クライアントサービス TEL:0800・080・4502) ピアス¥11,000(マナ ローザ ジュエル/マナ ローザ TEL:011・616・0106) 靴¥255,200(クリスチャン ルブタン/クリスチャン ルブタン ジャパン TEL:03・6804・2855)
※『anan』2022年6月1日号より。写真・小笠原真紀 スタイリスト・岡本純子 ヘア&メイク・竹下あゆみ インタビュー、文・望月リサ
(by anan編集部)
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