e‐sportsチーム「ZETA DIVISION」リーダー・Laz、世界大会3位は「当然の結果」
ananweb / 2022年7月5日 19時0分
今年4月、日本のe‐sportsチーム「ZETA DIVISION」が国際大会で3位に輝くという偉業を成し遂げた。世界中の意表を突いた、大番狂わせ。実力と野心を併せ持った話題のチームを独占インタビュー。
Laz(ラズ)「どんな状況でも実力を最大限発揮したい」
高いスキルと自他ともに認めるストイックさで、数々の大会で伝説を生み出してきた「ZETA DIVISION」のリーダー。世界大会3位に導いた立役者だが、実は人と関わるのがあまり得意ではないそう。
「この世界で長くやってきたし、最年長だからリーダーを任せられることが多いのですが、実際にやってみて自分にはリーダーの素質がないと感じています。昔からひとりでいるのが好きで、放っておくとプラプラッとどこかに行ってしまうようなタイプ。ソロ向けのゲームも好きで、時間があれば『パワプロ』をひとりで黙々とやったり。最近はアクションRPGの『エルデンリング』がお気に入り。でも忙しくてなかなか進められなくて、毎回プレイするたびに浦島Laz太郎状態です(笑)」
柔らかな物腰で、チャーミングな一面を持つLazさんだが、ゲーム中は強気な姿勢を一切崩さない、頼りになる存在だ。
「これまで血がにじむような練習をたくさん重ねてきて、自分の実力は世界に通用するレベルだという自信があります。だから試合中も戦略が次々と湧いてきて、それに従っていると勝手に攻めたプレイになるんです。どんな状況であっても実力を最大限出し切ることが最優先。自分がどれだけ成長しているか、チームがどれだけ強くなっているかを考えて試合に挑むと、勝ち負けに一喜一憂せずに済む。負けるにせよ、その試合でできるだけ多くのことを吸収して、またそれを次に活かすために努力を重ねるというスタンスはずっと変わらないです。今回世界大会3位になってめちゃくちゃうれしかったけれど、当然の結果だなという気持ちもありました。新しいメンバーになってから練習段階でこのチームにとんでもないポテンシャルを感じていたので、まだまだ上を目指せるとも思っています」
そんなLazさんがポジティブな気持ちを保つために日頃行っていることは?
「珍しい場所に行ったり、普段とは違う景色を見ることです。歩くのも好きで、先日も小さな山ですが、ひとりでふらっと登ってきました。自然豊かな場所に身を置くと、気持ちが落ち着き、最高のデトックスになります。でもまた大会が始まれば、当分お出かけはお預けですね」
Laz 1995年11月26日生まれ、神奈川県出身。『カウンターストライク:グローバルオフェンシブ』(CS:GO)の大会で実績を重ね、プロゲーマーに。日本のVALORANTシーンを牽引してきた孤高の天才。
シャツ¥28,600(シャリーフ/シアン PR TEL:03・6662・5525) ネックレス¥46,200(バフ TEL:0154・38・2600) ブレスレット¥29,700(トゥエンティーエイティー/HEMT PR TEL:03・6721・0882) ジャケット、パンツ、ベルト、シューズはスタイリスト私物
crow(クロウ)「意見が衝突しても、和が乱れないように」
いくつかのプロゲーミングチームを経験したcrowさん。プロになったきっかけは、チーム制シューティングゲームの先駆けともいわれる『CS:GO』だった。
「自分含めて5人で、アマチュアのチームとして遊んでいました。ゲーム内のランキングトップはずっとプロチームだったんですけど、そこに食らいつくような感じで2位につけていて。その結果を見たチームからスカウトされました」
2015年に「Absolute」に加入。プロの道を進み始めた。両親の影響でゲームが好きになり、小さい頃は『大乱闘スマッシュブラザーズ』『ポケットモンスター』『ドラゴンクエスト』などの王道ゲームをプレイしてきた。物心ついた頃、『CS:GO』にのめり込むように。プロとして経験を積み、2020年からは戦いの場を『VALORANT』へ。同じくチーム制のバトルゲームだ。
「FPSゲームは個人の撃ち合いの強さが前面に出るジャンルではあるんですが、『VALORANT』はスキルやアビリティを組み合わせて、頭を使って戦うんです。1対複数ではなく、常にチームで戦略を立てていく。その点に魅了されました」
crowさんはチームをバックアップする“サポート”という役割を担っているという。物腰が穏やかなcrowさんの、本来の性格とも近い?
「昔は違いましたけど、最近はそうかもしれません。チームでプレイする以上、意見が衝突することもあるんですけど、なるべく和が乱れないように、ネガティブな気持ちが残らないように、というのは意識しています」
プロゲーマーとしてメンタル面で気をつけていることはあるんだろうか。
「壁にぶつかったらまずは気持ちを切り替えて、原因を見つけます。そして解決策を冷静に分析して、実践していく。そうやって積み重ねながら、不安要素を取り除くようにしています」
生活リズムは規則正しく。だが早く起きすぎてもいけないのだそうだ。
「遅くまで練習すると持たなくて。ベストは昼起床。早く起きたら二度寝します」
休日はゲームから離れてリフレッシュ。
「大好きなハンバーグを食べに行きます。新しい店も大体リサーチ済みですよ」
crow 1997年11月28日生まれ、神奈川県出身。2015年にプロゲーミングチーム「Absolute」に加入。以降「SCARZ Absolute」など様々なチームで経験を積む。自身のYouTubeチャンネル「crowfps」で行うコーチング企画も人気。
ベスト¥30,800(ヌンク/HEMT PR) ネックレス¥5,500 ブレスレット¥4,950(共にエルエイチエムイー/シアン PR) カットソー、パンツ、シューズはスタイリスト私物
Dep(デップ)「ミスが許されないから練習して体に叩き込む」
抜群のゲームセンスを持ち、数々のタイトルを渡り歩いてきた日本の至宝。他の人には真似できないような大胆で華やかなプレイから“神の子”の異名を持つ。
「ゲームとの出合いは、小学生の時に兄の影響で遊んだPCゲーム。でもその時はあまりハマらなくて、16歳の時に久々にゲームをやったら『俺、結構うまいじゃん』って気づいて、いつの間にかプロゲーマーになっていました(笑)。ジャンル問わず、ゲーム全般得意で、普段はオンライン対戦ゲーム『リーグ・オブ・レジェンド』や音ゲーをやることが多いですね。他ジャンルのゲームをすると、脳の違う回路が働くのか、リフレッシュになる。それに自分が極めていないゲームって伸びしろが大きいから、純粋に楽しいし、やればやるだけうまくなっている実感が得られるんです」
ベストコンディションでプレイするために日頃から気をつけていることを聞くと、「特にないです」ときっぱり。
「食生活も寝る時間もぐちゃぐちゃで、生活リズムは乱れまくっているし。でも試合前のルーティンとして、必ず辛いものを食べるようにしています。唐辛子をかじったりするから、よくお腹壊さないねと周りに驚かれます。パワーが出るというわけではなく、願掛けみたいなもので、『今日もやれるぞ!』って気持ちになるんです。でも今日は寝る前にごはん食べすぎて、お腹壊しました(笑)」
チームメンバーにDepさんのイメージを聞くと、最初に会った時から印象が一番変わった人、チームのムードメーカー、コソ練好きという様々な声が。
「確かにとっつきにくそうに見られますが、実際に接してみると話しやすいと言われることが多いかな。ムードメーカーかはわからないけれど、試合中はここぞという時に声出しするようにしています。それはゲームの流れを変えるためでもあるし、ミスが許されないポジションにいる自分を鼓舞するためでもある。会場の雰囲気にのみ込まれてミスをしないように、同じシチュエーションを何度も何度も練習して、体に覚えさせておくんです。だからコソ練好きと言われれば、そうなのかもしれない。でもみんなめちゃくちゃ練習してますけどね」
Dep 2000年12月4日生まれ、東京都出身。『Overwatch』や『PUBG』など、様々な大会で日本代表を務める。’21年12月、エースとして活躍していた「REJECT」から「ZETA DIVISION」に移籍加入。
レザーベスト¥9,900(アイバー/シアン PR) パンツ¥47,080(アウケンリエヴ/ワイヤレス TEL:090・3001・0480) ネックレス¥27,500 ブレスレット¥41,800(共にバフ) シャツ、ソックス、シューズはスタイリスト私物
SugarZ3ro(シュガーゼロ)「“自分は最強”と思いながらプレイしている」
チーム最年少のSugarZ3roさんは、冷静沈着で、駆け引きのうまさが持ち味。昔からシューティングゲームが好きで、高校卒業後にプロのゲームプレイヤーに。
「小学生の時に遊んだ『ポケットモンスター ダイヤモンド・パール』が初めて触れたゲームです。その後『コール オブ デューティ』などのシューティングゲームにのめり込み、オンラインで強い相手と対戦してレベルを上げてきました。今は『VALORANT』一筋。チームで練習している時以外も、研究も兼ねてずっとひとりでやっています。僕は最適解を目指すプレイを目標にしているので、そういうプレイスタイルが冷静沈着だと言われるゆえんかもしれません」
淡々と語るSugarZ3roさんは、試合以外でも至ってクール。落ち着いていて、19歳とは思えないほど大人っぽい。
「たしかに周りの人たちからは『SugarZ3roは人生2周目っぽいよね』とよく言われます。一人っ子だけど、昔から年上の人と接する機会が多かったからそう見られるのかも…。今のチームメンバーも全員年上ですが、みんなの前では素の自分をさらけ出せている気がします。休憩中は意外と僕がボケて、周りがツッコむみたいなこともあって、とても居心地が良いですね。食べることも大好きで、特にパスタやラーメンの麺料理が好物。メニューを決める時はあれこれ悩んで、冷静でいられなくなります(笑)」
世界大会に初出場し、強豪たちを目の前にして、プレッシャーや緊張は?
「もちろんあるけれど、不安な気持ちに負けないために“自分は最強”と思いながら試合に挑んでいます。周りも対戦相手も僕自身も、僕が強いことは知っているし。たしかに負けた時はメンタルが崩壊しかけますが、落ち込んでる時間がもったいない! チームで反省会はしますが、個人的には自分のベストプレイを見返して、『やっぱり俺って強いじゃん!』とモチベーションを上げながら気持ちを切り替えて、すぐに練習にとりかかります。今も寝ている時以外はゲーム漬けの毎日。大変だけど充実しているし、何より楽しい。ゲームがない自分の人生は全く想像できないですね。今は世界の頂点を目標に、日々鍛錬しています」
SugarZ3ro 2003年3月18日生まれ、千葉県出身。『VALORANT』の核となる高難易度キャラクター「アストラ」の日本No.1プレイヤー。’21年12月、「NORTHEPTION」から「ZETA DIVISION」に移籍加入。鉄壁の守備力を誇る。
ジャケット¥12,980 パンツ¥6,930(共にキャスパージョン) シャツ¥18,150(エバース) ネックレス¥4,400(エルエイチエムイー) 以上シアン PR ブレスレット¥19,800(トゥエンティーエイティー/HEMT PR) ブーツはスタイリスト私物
TENNN(テン)「勝っても、慢心せずに次に行く」
4月開催の「VCT 2022 Stage 1 Masters」のNinjas in Pyjamas戦で華麗なプレイを見せ、逆転の突破口を作ったTENNNさん。実はプロゲーマーを目指していたわけではないという。
「もともと趣味で『Overwatch』をやっていたんです。チーム制だけどスナイパー同士1対1で戦わなければいけない状況が多くて、勝つとメリットが大きい。普通にランキングを楽しんでいたらプロチームから声をかけてもらったんです」
最初に夢中になったゲームは、小6で出合った『マインクラフト』だった。
「自由にブロックを配置して好きなものを建築できるゲームですけど、1対1で戦えるバトルモードもあって。あれでPvP(Player versus Player。対人戦ゲーム)の面白さに気づいたんです。とにかく負けず嫌いなんですよ。勝って、『俺が強いんだ!』って実感したくて」
その後『CS:GO』でチーム戦の魅力を味わい、6人編成の『Overwatch』に夢中になった。プロになったのは高校2年の時。学校を辞め、ゲームに専念すると決めた。生活も大きく変わったという。
「毎日、ほぼ休みなしでパソコンと向き合う状況になりました。昼に起きて、チーム内で話し合いをして、19時くらいまで練習。ごはんを食べたらまた練習して、反省会。22時くらいまでやっています」
現在の活動拠点である『VALORANT』の魅力は、一体どんなところなのだろう。
「まず5対5っていうチーム戦が好きなんですよね。さらにキャラクターがたくさんいて、違う役割があるのが面白い。僕は先頭に立つデュエリストとして活動しつつ、サポートもやっています」
先陣を切る上で欠かせないのが睡眠だ。
「絶対6時間以上とるって決めてます。脳が働かないし、目が開かないんですよ。食事も試合前には食べません」
気持ちのコントロールは?
「基本的に沈まないタイプなんです。負けたら足りないところを育成しようと思うし、勝っても慢心せずに次に行こうと考える。特に試合中は、ネガティブな思考になると負け始めちゃうんです。目の前のことに集中して、ネガティブな考えを吹き飛ばす気持ちでやっています」
TENNN 2001年10月19日生まれ、静岡県出身。2019年に「Green Leaves」の『Overwatch』部門に所属。「DetonatioN Gaming」で『VALORANT』の選手となり、’21年12月に「ZETA DIVISION」に加入。
ジャケット¥55,000 シャツ¥29,700(共にネフォロジスト) ブレスレット¥27,500(トゥエンティーエイティー/HEMT PR) パンツ、ソックス、シューズはスタイリスト私物
ZETA DIVISION(ゼータ ディビジョン) 日本発のゲーミングライフスタイルブランド。ゲーム選手からクリエイターまで様々なメンバーが在籍。選手たちの圧倒的な強さ、クリエイターたちが作る最先端の世界観で注目を集める。
※『anan』2022年7月6日号より。写真・内田紘倫(The VOICE) スタイリスト・鹿野巧真 ヘア&メイク・KOKI NOGUCHI(TRON) 取材、文・飯田ネオ 鈴木恵美 撮影協力・PROPS NOW
(by anan編集部)
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