高橋一生「舞台から客席の様子をしっかり見ておくつもり」 『2020』で一人舞台に初挑戦
ananweb / 2022年7月12日 19時40分
ドラマや映画で大活躍、言わずと知れた実力派俳優。近年は菊田一夫演劇賞、読売演劇大賞最優秀男優賞と、名だたる演劇賞を続けて受賞。高橋一生さんの演劇人としての矜持とは?
「行き止まりの人類」のような今、何を表現するべきか問うています。
フィリップ・リドリーや野田秀樹作品など、高橋一生さんが出演する舞台に触れると、のほほんと安全な場所にはいられなくなる。心は揺さぶられ、物語と地続きにある、現実社会に無自覚ではいられなくなるからだ。新作舞台『2020(ニーゼロニーゼロ)』もそんな危険な薫りが。親交の深い芥川賞作家の上田岳弘さん、演出家の白井晃さんと長年温めてきた企画で、高橋さんは一人舞台に初挑戦する。
「一人舞台を前からやりたかったというわけではないのですが、打ち合わせを重ねるなかで『一人でいいんじゃないですか?』と言ってしまったんです。昔から僕のことを客観的に見てくださる白井さんが、『一生がいったん一人芝居に向かうのは必然かもしれないね』とおっしゃったことにも背中を押されました」
時空を超え重層的な物語を紡ぐ上田さん。『2020』はこれまでの小説に出てきたモチーフを多く盛り込む予定だが、なかでも小説『キュー』に出てくる、700年間の冷凍睡眠から目覚めた“人類最後の人間”「Genius lul‐lul(以下、GL)」が軸になりそう。そもそもこのキャラクターは、高橋さんをイメージして書かれたのだそうだ。
「『キュー』を発表する前に、上田さんが書かれた戯曲のようなものを見せていただいたことがあります。そこにはすでにGLが登場していました。聞けば、僕が出演した白井さん演出の舞台『マーキュリー・ファー』を観て思いついたそうです。上田さんは僕をこんなふうに見てくださっていたのかというのがわかり、光栄でした。『マーキュリー~』からこれまで、このキャラクターが長い旅をしてきたようで、その感覚は舞台上でも持っておきたいです」
今回、上田さんの戯曲をもとに白井さんが上演台本を書き、戻しという推敲作業は10回以上に及んだ。また、連日ディスカッションを繰り返しているらしい。
「セリフ云々ではなく、そもそもこの舞台のテーマは何なのか、何を表現するべきかということを話していました。普段の舞台作りとは違う脳の使い方をしています」
本作にはダンサーの橋本ロマンスさんも出演。高橋さんは、セリフ以外の表現にもこだわりたいと考えている。
「舞台は小説と違い、肉体を通すことで言葉がいらなくなる瞬間もあります。簡単に言ってしまうと、『バカやろう!』というセリフを言ったあとに笑うか笑わないかで、伝わるものは変わってくると思うんです。歌舞伎の拍子木が、音と音との間の無音の存在を示すための役割にもなるように、言葉を使えたらと思っています」
演出の白井さんとは、6年ぶり、4回目のタッグになる。
「『マーキュリー~』でも『レディエント・バーミン』でも、白井さんとご一緒する作品は、まるで予言のように、舞台から想起させられる事件や情勢が上演時に現実で起きていました。2020年は過ぎていますが、上田さんが小説に書いておられる“行き止まりの人類”という感覚はリアルにあります。行き止まりの曲がり角にある今、この作品を上演するのも意味深い気がします」
万人受けしなくても、誰か一人にでも響いたらという思いでいつも芝居をしていると語る高橋さん。
「自分はマスの側ではなく、少数派であることはずっと意識してきました。この作品も、一人一人全く違う反応になっていいと思います。胸が熱くなるお客さんの隣で、頭に疑問符が浮かぶ人がいてもいい。僕は舞台から客席の様子をしっかり見ておくつもりでいます」
パルコ・プロデュース2022『2020(ニーゼロニーゼロ)』
2020年、世界で疫病が流行し、東京五輪がなくなった。この年を起点に、人類誕生から世界の終わりまでを高橋一生の体を通して表現。批評眼に満ちた、上田岳弘の壮大な世界観が体感できる舞台。7月7日(木)~31日(日) PARCO劇場 作/上田岳弘 構成・演出/白井晃 出演/高橋一生 DANCER/橋本ロマンス 全席指定1万1000円ほか パルコステージ TEL:03・3477・5858 福岡、京都、大阪公演あり。
たかはし・いっせい 1980年生まれ、東京都出身。俳優。ドラマ、映画、舞台などで幅広く活躍。『天保十二年のシェイクスピア』’20)で第45回菊田一夫演劇賞、NODA・MAP『フェイクスピア』(’21)で第29回読売演劇大賞最優秀男優賞を受賞。
Tシャツ¥11,000(タンジェネット mitsuruyoshiya@gmail.com) パンツ¥49,500(ユーゲン/イデアス TEL:03・6869・4279) その他はスタイリスト私物
※『anan』2022年7月13日号より。写真・上澤友香 スタイリスト・秋山貴紀 ヘア&メイク・田中真維(マービィ) 取材、文・黒瀬朋子 撮影協力・Compartment.
(by anan編集部)
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