川邉サチコ「ハッタリをかますことも時には必要」 ヘアアーティストとしてのプライド
ananweb / 2022年8月7日 18時0分
人生の先輩的女性をお招きし、お話を伺う「乙女談義」。8月のお客様は、長くトータルビューティクリエイターとして活躍される川邉サチコさん。凛々しく働き続けてきたその裏側には、戦争での経験や、職業へのプライドがあります。第2回目はそんなお話です。
達観しているのは、戦争の経験が大きいです。
私が生まれたのは戦前で、幼稚園のときに戦争が始まり10歳で終戦を迎えます。父にばかり甘えている子どもだった私は、静岡に疎開をして父と離れたのがつらく、とにかく東京に帰りたかった。父から、「焼夷弾が雪のように降ってきて、痛いと思ったら前後の人が死んでいた」という話を聞いたときには、生きた心地がしませんでしたし、父が戦争に行くと決まったときには、とにかく生きて帰ってほしいと泣いたものです。父は無事に帰ってきましたが、家も燃え、文字通り本当になにもない。でもそこから両親は家族を食べさせるためにがむしゃらに頑張っていた。その姿は今でも脳裏に焼き付いています。
人生にはとてつもなく厳しいことがあり、乗り越えるために必死にならなくてはいけないことがある。戦争を経験した世代の心には、そういう達観みたいなものがあると思います。その感情は、私が仕事をしていく上での強さになりましたし、役に立っています。
一つ一つ積み重ね、仕事の地位を上げてきた。
1960年代の日本では、ヘアアーティストは〈結髪(けっぱつ)〉と呼ばれていました。メイクは〈メイキャップアーティスト〉と書かれているのに、ヘアは〈結髪〉。これはちょっとと思い、編集者に変更をお願いしたんですが、「そういうものだから」と。「じゃあメイクも〈化粧〉にして」と言ったら、拒否。なんだか差別されている気がして、私、現場を引き上げちゃったんです。実力行使に出ないと、どうにもならないと思って。私は、自分の仕事や職業を認めてほしかったし、地位を上げたかった。そのためにはハッタリをかますことも時には必要です。結果、「ヘアアーティスト」という表記になりました。そういえば、オートクチュールの仕事をしていたツテで、モデルが着た洋服を安く譲ってもらえることがあり、ここ一番のときにはそんな服を着て挑んだことも。今思えばそれもハッタリの一つ。私自身と仕事へのプライドが、そういう行動に駆り立てたんだと思います。
かわべ・さちこ トータルビューティクリエイター。1938年生まれ、東京都出身。’60年代よりヨーロッパのオートクチュール、国内外トップデザイナーのヘアメイクを担当。現在は自身の名を冠したサロンを運営しながら、様々な雑誌に登場。
※『anan』2022年8月10日号より。写真・中島慶子
(by anan編集部)
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