日本の性教育は40年間変化なし!? わたなべ麻衣「家庭では何歳から始めたらよい?」
ananweb / 2022年10月16日 22時0分
ananフェムケア連載「Femcare File」。今回のテーマは「世界の性教育事情」です。自分を守るために欠かせない性に対する知識。性教育の必要性について、もうすぐ2歳の娘さんを持つわたなべ麻衣さんが、専門家とともに考えます。
世界の性教育事情
性教育アドバイザーとして、講演を行うのじまなみさんは、3姉妹の母。娘たちが幼い時に動画サイトのアニメからアダルトサイトにアクセスしてしまったことに危機感を抱いたのが、活動のきっかけになったそう。
「子供を狙った性犯罪は本当に多い。自分の身を守るためにも、子供のころから正しい知識を教えるべきだと考えました」
子供を取り巻く環境は、ネットの発達で激変しているのに、日本の性教育は40年も変わっていないのが現状。しかも小中学校ともに性に関する授業は、年間1~3時間しかないのも問題だという。
「日本では、学習指導要領に『妊娠の経過は取り扱わないものとする』という“はどめ規定”があり、精子と卵子、受精卵といった生物学的な知識は教えるものの、セックスについては教えてくれないことが多いんです。コンドームについても中学3年生の感染症の授業で習うだけで、性交渉で使うものとして解説されているわけではありません。高校生になって初めてセックスについて学ぶ授業がありますが、遅すぎます。今、平均すると1日に40人の10代女子が中絶をしているといわれていますが、これは、正しい避妊の方法などの知識をきちんと持っていないせいでもあるんです」
さらに、セックスに同意する能力があるとされる「性的同意年齢」をめぐる問題も。
「日本では、性的同意年齢が13歳とされており、13歳以上なら暴行や脅迫によって抵抗できなかったことを自ら証明できなければ、レイプであったとしても同意の上の行為とみなされてしまうんです。でも、恐怖で体がフリーズして逃げられないケースだってあるはず。中学生の子が、抵抗できなかったことを言葉で証明するのは非常に難しいのが現実です」
性的同意年齢は、アメリカは州によって16~18歳、韓国やイギリス、カナダ、ロシアは16歳だ。また、ヨーロッパではかなり踏み込んだ性教育を行っている国も多い。
「日本は性に対する正しい知識も教えない上、性犯罪に巻き込まれて傷つくリスクが高い国といえると思います。近年、性教育の重要性がようやく理解されつつありますが、学校教育が変わるのには残念ながら時間がかかります。まずは自分から正しい情報を取りにいき、性の知識やグローバルスタンダードを共有することが大切」
身近なことから、何ができる? 私たちが今、知っておきたいこと。
わたなべ麻衣:性教育というと、私自身は小学校の時、男女分かれて女子は生理用品の使い方を習う…くらいしか記憶にないんです。今の性教育は進化しているんですか?
のじまなみ:それが今もまったく変わっていないんですよ。「はどめ規定」によって性交については取り扱わない傾向にあるので、教えられることに限界があるんです。それに、性教育に対して拒否反応が強い大人もいるので「こんなことを教えたらふしだらになる」といった保護者からのクレームを恐れて学校としても踏み込んだ授業ができないんですよ。だからネットから得た「セックスをしても3回ジャンプしたら、妊娠しないから大丈夫」などというようなデマを本気で信じている子もいて…。
麻衣:タブーにすると、かえって間違った方に向かいますよね。
のじま:そうなんですよ。それに、性教育はセックスの話だけではありません。「性」という字が表すように、「心を生かすための教育」であり、自分が自分らしくあるための方法を学ぶ教育だと私は思っています。たとえば海外では性交の断り方について教える国もあります。パートナーであっても、ノーと言っていい。「あなたを否定しているのではなくて気分が乗らない日だから」と。それこそが相手も自分も大切にする方法だと、きちんと教わるんです。
麻衣:うちの娘はもうすぐ2歳なんですが、家庭での性教育は何歳から始めたらよいのでしょうか。
のじま:ユネスコのガイダンスでは5歳からとされていますが、私は3歳からすべて教えていいと思っています。うちでは、「赤ちゃんはどうやったらできるの?」と聞かれたら、「膣にペニスを入れるんだよ。それは精子を卵子の近くに届けるため」とナチュラルに伝えています。実は恥ずかしがっているのは大人だけ。子供にとっては「どうして飛行機は空を飛ぶの」というのと同じように好奇心からくる純粋な疑問なんですよ。
麻衣:これだけネットが普及しているわけだから「赤ちゃんはコウノトリが運んでくるよ」では無理があるし、親が隠してタブーのようになるのも良くないですよね。(夫の)JOYくんとも「娘から聞かれたら、きちんと向き合いたいね」って話し合っています。
のじま:夫婦で話し合っているという点が素晴らしいですね。父親と母親、それぞれが性教育をすれば、様々な考え方を吸収することもできる。子供にとっても相談相手が2人いるのは心強いこと。
麻衣:性教育という視点から、私たちも含め、今後結婚や出産を選択する人が、実践すべきことは?
のじま:コミュニケーションの練習です。性というのは突き詰めるとコミュニケーションから始まるものですが、特に若い人は自分の気持ちを言葉にする機会が減り、本心でぶつかったら嫌われるかもと気持ちを抑えこみがち。だから様々な人と言葉で気持ちを交わす練習をしておくといいですね。
麻衣:夫婦間でも「察してよ」では伝わらないですもんね。今日教えていただいたことを家に持ち帰って夫婦で話し合いたいです。
のじまなみ(写真右) 結婚、出産を経て看護師から性教育アドバイザーに。2016年、「とにかく明るい性教育『パンツの教室』」設立。『大人も知らない!? 性教育なぜなにクイズ図鑑』など著書多数。
わたなべ・まい(写真左) 1989年生まれ、広島県出身。2019年にタレントのJOYさんと結婚、翌年10月に長女を出産。キュートなキャラクターが支持され、雑誌や広告などで活躍中。
※『anan』2022年10月19日号より。写真・水野昭子 イラスト・REDFISH ヘア&メイク・megu(麻衣さん) 取材、文・音部美穂
(by anan編集部)
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