男子バレーボール界の新星・髙橋藍「僕は今までにいなかったような選手になりたい」
ananweb / 2022年11月1日 18時0分
東京五輪では、史上最年少でのバレーボール男子日本代表でありながら全試合に先発出場。安定感抜群のサーブレシーブ、スピードあふれるバックアタックなど持ち味を存分に発揮し、日本の29年ぶりのベスト8進出に貢献。いま最注目のバレーボールプレーヤー・髙橋 藍さんに迫ります。
目標は明確。五輪の金メダル。
8月末からスロベニアで開催された世界選手権でも全試合に先発出場。日本は予選ラウンドを突破したが、決勝トーナメント初戦で東京五輪金メダルのフランスと対戦し、フルセットの激戦の末、惜敗。12位で大会を終えた。そのフランス戦の話になると、瞳に悔しさが甦った。
「最後の1点を取る力というのが、フランスとの明らかな差だったと思います。5セット目は主導権を握れていたけど、勝ちを意識して、先を急ぎすぎてイージーミスが出てしまって。相手のミスでマッチポイントを握ったときも、誰もが『勝てる』という景色を見てしまったんですね。そこでもう一度チームとして『1点ずつだぞ』と引き締められればよかったのに、流してしまった。でも、あそこからひっくり返されるんだと学べたことが、僕らにとって収穫だったとポジティブに考えています」
ただ、自身のプレーには手応えを感じていた。東京五輪では、相手の高いブロックに阻まれてスパイクが決まらず交代となることがあったが、世界選手権では決定力を示し、コートに立ち続けることができた。
「昨年は、代表チームでは周りに引っ張ってもらっているという意識が強くて、(得点源の)石川(祐希)選手や西田(有志)選手が攻撃に集中しやすいように、僕はスパイクよりまず守備で縁の下から支えようと考えていました。でも今年から自分に求めているのは、チームのもう一つの軸になること。頼れる場所が増えるほどチームは強くなっていくので、ここぞという場面でトスを託してもらえる選手になっていかないと。世界選手権ではその一歩を踏み出せたんじゃないかなと思っています。試合の中で修正して、ギアをもう一段上げる力がついてきたとも感じています。5セット目にセッターの関田(誠大)選手がトスを持ってきてくれたのも、『こいつなら試合中にパフォーマンスを上げて、最後やってくれる』と信じてくれたからだと思うんです。昨年はすぐに代えられていた場面でも、今年は代えられなかった。立て直せる選手だと、フィリップ・ブラン監督含めチーム全体が感じてくれたのかなと。だから最後までコートに立たせてもらえた。昨年はなかったその信頼を今回築けたことは、本当にプラスでした」
攻撃面で成長し、強みであるサーブレシーブは相変わらずチームを支えている。日本は6~7月のネーションズリーグで過去最高の5位となり、世界ランキングも11位から7位に上昇した。目指すものは明確だ。
「目標は’24年のパリ五輪でメダルを獲ること。あと2年で手が届くところまで来ていると感じています。そして、一人の選手として名を残せる、世界中に見てもらえる選手になることですね。僕は今までにいなかったような選手になりたいんです。レシーブができて、スパイクが打てて、オールラウンダーとして高いレベルですべてこなせた上で、バレー以外の面でもSNSやメディアを通して、ファンの方々や子供たちへの発信にも力を入れる。子供たちが僕をきっかけにバレーを始めてくれたり、自分のようなプレーヤーを目指してくれたら嬉しい。誰もができることではないと思っているので」
21歳でそんなことまで…。視野の広さと意志の強さに驚かされる。その芯にあるのは、この言葉だ。
“勇気と信念が世界を変える”
アメリカの人気ドラマ『プリズン・ブレイク』の中のセリフで、この言葉を自身の核にしているという。
「主人公が自分の信じるべきものを自分の意思で選び、世界を変えるという姿を見て、これからの自分の人生を変えていくのはこの言葉だなと思ったんです。常にこの言葉が背中を押してくれます。僕も自分のプレーや努力を信じて続けるしかないと思っているし、海外挑戦も、この言葉に勇気をもらったからできたこと。イタリアで成長できるかどうかはわからなかったけれど、自分を信じてやるしかないと思ったし、実際にすごく達成感がありました。向こうでは一人で何でもやらなきゃいけないし、言葉の壁もある。最初は監督に自分のやりたいことを伝えられない、仲間と上手くコミュニケーションをとれないというストレスがありました。でも赤ん坊のようなところからスタートして、一日一日、その日言えなかったことを調べたり、よく聞く単語をインプットしながら、少しずつ伝えられるようになって、自信がつきました。海外の友だちも増えたし、世界を見ることってすごく大事だなとも感じた。何かあっても、『全然なんとかなるわ』と余裕を持てるようになりましたね」
今季も迷わずセリエAへの挑戦を選んだ。今年はレギュラーをつかむため、大学の試合には出場せず9月に「パドヴァ」に合流した。10月1日の開幕戦から先発出場し攻守に躍動。強豪「モデナ」、昨季王者「ルーベ」に立て続けに勝利し、2試合続けてMVPに選ばれる最高のスタートを切った。行動力が成長を加速させ、また一足飛びで大きなものをつかむシーズンになる予感がする。
たかはし・らん 2001年9月2日、京都府生まれ。ポジションはアウトサイドヒッター。小学2年生のときに兄・塁の影響でバレーを始める。日本体育大学に所属しながら、セリエA「パドヴァ」でプレー。イタリアでの楽しみはカルボナーラと観光。
シャツ¥30,800(ウェルダー info@wellder.jp) パンツ¥85,800(ヘリル/にしのや TEL:03・6434・0983) 靴下、靴はスタイリスト私物
※『anan』2022年11月2日号より。写真・彦坂栄治(まきうらオフィス) スタイリスト・ダヨシ ヘア&メイク・村田真弓 取材、文・米虫紀子
(by anan編集部)
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