一条ゆかり「思い出すと涙が出ちゃう」 人生で一番嬉しかった、漫画家としての第一歩
ananweb / 2022年11月19日 18時0分
人生の先輩的女性をお招きし、お話を伺う「乙女談義」。11月のゲストは『有閑倶楽部』などでおなじみの一条ゆかりさん。第2回目は、漫画家を目指した理由についてのお話と、デビュー当時がどんな時代だったのか、語ってくれました。
自分で自分を養う。それが自立であり、自由です。
16歳のときに単行本に漫画が掲載されたのが、私の漫画家としての第一歩。本当に本当に嬉しくて、毎日その単行本を持ち歩き、食事のときも開いては眺め、寝るときは枕元に置き…。思い出すと涙が出ちゃう。人生で一番嬉しい出来事だったと思います。
私が漫画家になったのは、自由が欲しかったから。貧乏な家で、そのうえ親は「漫画なんて描くな、バカになる」という環境だったんですが、でも親に養われているわけだから、ある意味仕方がない状況ですよね。だから私は、自分で自分を養い、自由を手に入れ、好きなことをして生きていきたかった。本質的な意味では、誰かに養われている状況では、自由は手に入らないんです。なので私は、とにかく早く自立をしたかったんですね。
そんなこともあり、私の漫画のテーマは“女性の自立”です。なので、『有閑倶楽部』のような学園コメディを描くなんて、デビュー当時はまったく想像できませんでした…。
目の前に火炎瓶が?! デビュー当時の思い出。
高校時代、男女10人ほどの仲良しグループがあって、毎日集まってはいろんな話をしていました。当時は学生運動真っ盛り。頭の良かった男の子たちが「マルクス主義が…」とか熱く語る横で、「そんなの机上の空論!」と論破しながら漫画を描く、そんな高校生でした(笑)。ゆえに、当然社会派の漫画を描こうとは思いませんでしたし、兄がいたこともあり“男の現実”を日々目にしていたので、「男子に憧れる…」的なお話を描く気にもなれず。結果、貧乏だった自分が絶対体験できなかった、妄想の世界が題材になりました。
ちなみに私は高校卒業後に上京し、雑誌『りぼん』で連載を始めました。当時がどんな時代だったか。あるとき集英社主催の少女漫画家バス旅行があり、その帰り、新宿駅から家に帰ろうと歩いている途中、後ろから何かが降ってきた…と思ったら、目の前の交番に火炎瓶が投げ込まれ、爆発!! ananの読者さんは想像できないですよね…(苦笑)。
いちじょう・ゆかり 漫画家。1949年生まれ、岡山県出身。代表作に『デザイナー』『有閑倶楽部』『プライド』など。今年エッセイ集『不倫、それは峠の茶屋に似ている たるんだ心に一喝!! 一条ゆかりの金言集』(すべて集英社)を発売。
※『anan』2022年11月23日号より。写真・中島慶子
(by anan編集部)
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