10代でドラッグや違法行為も…映画監督として夢を掴んだ女性の「衝撃的な青春体験談」【映画】
ananweb / 2022年12月14日 21時0分
今年もあとわずかとなり、1年の疲れが溜まりやすい時期ですが、そんなときだからこそ、エネルギーをチャージしてからラストスパートと行きたいところ。そこで、そんなときにぴったりのガールズムービーをご紹介します。
『Never Goin’ Back / ネバー・ゴーイン・バック』
【映画、ときどき私】 vol. 543
テキサスに暮らす親友同士のアンジェラとジェシー。高校を中退した2人は、ダイナーでウェイトレスのバイトをしながらワンルームに同居していた。ある日、アンジェラがジェシーの誕生日を記念して、憧れのリゾートビーチへのバケーションをプレゼント。旅行費用の支払いにお金を使ってしまったため、2人はアルバイトを増やして家賃を稼ごうとする。
ところがその矢先、自宅に突然強盗が入る騒ぎが起き、駆け付けた警察が部屋にあるドラッグを発見。アンジェラとジェシーは逮捕されてしまう。そこからカオスな数日間が幕を開けるのだった。はたして、2人は憧れのリゾートビーチへ行くことができるのか……。
『ミッドサマー』や『レディ・バード』など、数々の話題作を世に送り出し、いまもっとも勢いのある制作・配給会社A24。今回も、斬新なティーンムービーを手掛けて大きな注目を集めています。そこで、こちらの方にお話をうかがってきました。
オーガスティン・フリッゼル監督
Photo by Sergio Garcia
女優として15年以上のキャリアを持ちながら、監督としても活動しているフリッゼル監督。長編監督デビューとなる本作は、自身の経験をもとにした自伝的な映画となっています。今回は、キャスティングの裏側や自身が立ち直れたきっかけ、そして新たな一歩を進みたい女性へのアドバイスなどについて語っていただきました。
―ストーリーはほぼ自伝ということですが、描くうえで大切にしたのはどんなことですか?
監督 自分の人生をベースにした作品ではありますが、意識したのは、彼女たちがどんなに大変で必死な状況に陥ろうとも2人の友情と若さによる楽しさを決して失わないようにすること。今回は、未来に対する可能性や希望を描くことを一番大事に考えていました。
―本作の魅力といえば、アンジェラとジェシーを演じたマイア・ミッチェルとカミラ・モローネの見事なコンビネーション。どのようにして彼女たちを選んだのでしょうか。
監督 キャスティングというのは本当に難しいもので、たとえ「この役にはこの人がいい」と感じたとしても、俳優同士の間にケミストリーがなければうまくいきません。近くに座らせたり、お互いの目を長く見つめ合わせたりして親密さを出すための演出はできます。でも、ケミストリーはあるかないか、そのどちらかしかない。2人の間にそれがなければ、悲しい結果になってしまうものなのです。
オーディションにはほかにもいい役者はいましたが、今回は素晴らしい役者を2人選ぶよりも、重要だったのは一緒にいることに素晴らしさを感じられる2人であること。そういう意味では、マイアとカミラは2人で部屋に入ってきた瞬間に、「この2人だ」とすぐにわかりました。みなさんにも、そんなキャストたちの素晴らしさを感じていただけたらうれしいです。
作っていたときの楽しさも伝わってほしい
―作品を制作する過程では、ご自身の10代に戻るような感覚が強かったのか、それとも映画監督として客観的に見つめ直しながらだったのか、そのあたりのバランスはいかがでしたか?
監督 どちらかというよりも、その両方が混ざったような感じだったかなと思います。ただ、この作品に関しては、すでに超低予算で1度作ったことがあり、それを今回最初から撮り直したという経緯があったので、同じ映画を別の役者で撮っていることに対して不思議な気分になりました。
とはいえ、アンジェラとジェシーが小指を絡ませて約束を交わすシーンなどは実際に私が親友としていたことなので、昔を思い出しましたし、自分の人生が映画になる奇妙さみたいなものは感じていたかなと。そのときはこの映画が成功するかどうかはわかりませんでしたが、作っている最中はとても楽しかったので、そういった思いが伝わればいいなという気持ちでした。
―本作のスタッフは女性が中心だったそうですが、女性同士だからできたこともありましたか?
監督 そうですね。普段であれば、たくさんの資料と言葉を合わせて説明をしなければいけないところですが、それをしなくてもすぐにわかってくれたので、コミュニケーションが楽にできたのは大きかったです。たとえば、10代女子の部屋がどんな雰囲気かをいちいち言わなくても美術担当の女性は理解してくれました。それは女性カメラマンも同じで、若さを表現する温かみやどんな光で見せるべきかとか、時間がすぐに過ぎてしまう青春の様子など、説明をすることなくすべて思っていた通りに表現してくれたのです。
最近は関わる作品の規模が大きくなってきたこともあり、私がスタッフを選べないことも多いのでいろんな方と一緒になりますが、男性との仕事のほうが増えているような印象を受けています。そういうときに、各部署において女性がトップになることの難しさを実感することも。女性が選ばれないことに対しては残念にも思うので、また女性が多い現場で仕事ができたらいいなと考えているところです。
好きなことを見つければ、つらい状況からも抜け出せる
―アンジェラとジェシーが興味深いのは、ドラッグはするけれど仕事はしっかりしようとするなど、さまざまな点で相反するような倫理観を持っている人物であることです。バックグラウンドについてはほとんど触れられていませんが、描くうえで注意したことはありましたか?
監督 若い頃というのは、誰もが過ちを犯してしまいがちだと思いますが、一般的な家庭であれば、親がいて、自分たちが間違った道に行こうとするのを正してくれるような安定した状況にいます。でも、2人の場合は、自分たちを導いてくれる人がおらず、頼る人もいない状況なので、自分たちなりに正しいことをするしかありません。実際、家賃を払い、仕事をして、制服もキレイに洗濯しようとしますよね。それが彼女たちにとっては正しいことなのです。
ドラッグに関しては、もちろんいまはしていませんし、もうするべきではないと思っていますが、アメリカの若者がカジュアルにすることは珍しいことではありません。それよりも、仕事もせずにドラッグをビジネスにしようとする兄たちの姿を描くことによって、正しいことをしようとする彼女たちのコントラストとして見せたいと考えました。
―監督自身もドラッグなどの違法行為をしていた時期もあるということなので、一歩間違えればもっと悪い世界に足を踏み入れていた可能性もあったのではないかなと。どうやってその環境から立ち直れたのでしょうか。
監督 何かを愛したり、大事にしたり、やりたいことをしたいという思いが大きなモチベーションになっていたように感じています。私の場合は、まず音楽に始まり、それが演技、映画づくりへと移行していきましたが、そんなふうに物事を愛する気持ちが強いタイプであったことがそこから抜け出せたきっかけになったのかもしれません。
なので、いまつらい状況にいる方でも、いくつになっても遅くはないので好きなことを見つけてそれを追求することがひとつの方法だと思います。
年齢は私たちを束縛するものではない
―日本についてもおうかがいしますが、どのような印象をお持ちですか?
監督 いつか絶対に行きたいと思っている場所のひとつですが、実はまだ行ったことがありません。日本食は大好きですし、日本の都市や建築、文化といったものに興味は持っています。あとは、私が猫を5匹飼っていることもありますが、日本も猫が好きな国というイメージです。
あと、日本の映画はどちらかというと古い作品を観ることが多く、最近よく観ているのは鈴木清順監督。特に『殺しの烙印』では蝶々などが非常に美しく描かれていたのが印象的でした。学校でもこういった作品ともっと早くに出会えていたらよかったなと思ったほどです。
―それでは最後に、いろんな経験を乗り越えてきた監督から日本の女性に向けて、メッセージをお願いします。
監督 私は、年齢というものは意味のない数字だと考えています。自分が思う年齢の概念に縛られているだけで、実際には私たちを束縛し、限界を作るものではありません。あくまでも、ただの数字なんですよね。だから、仕事でも夢でも、いくつになっても新たに何かを始めることはできるのです。
私自身は若くして子どもを産んだので現在24歳の娘がいますが、私と同じような経験をした女性のなかには、夢もキャリアも諦めた人がいました。でも、私は違います。娘を学校に進学させてからスタート地点に立つことを決めました。年齢的には少し上ではありましたが、そこから始めることができたので、私の実体験を通したアドバイスをみなさんにもできたらいいなと思っています。
青春も人生も、全力で挑むから面白い!
ちょっとおバカで、ちょっぴり下品なところもあるけれど、愛おしくてたまらないアンジェラとジェシー。疲れもストレスも吹き飛ばしてくれるガールズパワーが、最悪な日常から抜け出すきっかけを与えてくれるかも?
取材、文・志村昌美テンションが上がる予告編はこちら!
作品情報
『Never Goin’ Back / ネバー・ゴーイン・バック』
12月16日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開
配給:REGENTS
️©2018Muffed Up LLC. All Rights Reserved.
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