不動産会社の経営者が教える! 知らないと損する「物件退去時のNG行動」
ananweb / 2023年10月28日 20時30分
物件探しの際、知っておくと助かるトピックをご紹介。『持ち家女子はじめます』(飛鳥新社)の著者であり、5000人超の女性たちの「幸せになれる家選び」をサポートしてきた「ことり不動産」代表の石岡茜さんに、退去時にしてはいけない「損するNG行動」について教えてもらいました。知っておくと引っ越しの際、得する情報も満載です。ぜひ参考にしてください!
NG1 火災保険の解約を忘れること
引っ越し前後は慌ただしいため、旧居の電気、ガス、水道といったライフラインを解約することを忘れてしまう方がいます。
気づかないまま、次の入居者の方が使い続け、その分の料金まで請求されてしまった……という話を聞くこともあります。
解約手続きはアプリ等でもできますので、郵送物の転送手続きや住民票の転出届とあわせて忘れずに行いましょう。
また、知らないと損するのが火災保険の解約です。
契約期間内であれば解約返戻金が支払われるのですが、不動産会社から連絡がいくわけではなく、自分で保険会社に連絡して解約の手続きを行わなければなりません。じつはこれを知らないために解約しなかったという方がたくさんいるのです。
手続き自体はとても簡単です。解約の連絡を入れると保険会社から必要書類が届くので、そちらに記入して返送すればOK。インターネットで手続きができる保険会社もありますのでホームページ等で確認してみてください。
旧居での火災保険を解約しないまま引っ越した先でも二重に払うのは非常にもったいないので、引っ越しが決まったらすぐに解約の手続きするのがおすすめです。
NG2 残地物(ざんちぶつ)を許可なく置いていくこと
残置物とは「入居者が退去する際に残していった私物」のことです。代表的な残置物としてはエアコン、照明器具、冷蔵庫、ガスコンロ、ガス給湯器などがあります。
退去時には、原状回復するのが鉄則です。ですから、「次の入居者が使うはず」「不要な物だから置いていきたい」などといった理由で、管理会社に確認することなく残地物を置いていく行為は禁止されています。
これに違反すると撤去費用が請求される可能性があるため要注意です。ただし、許可が下りて置いておける場合もありますので、まずは管理会社に相談してください。
なお、これは入居する際の注意点ですが、エアコンや照明器具などは通常の設備ではなく、前の入居者の残地物である可能性があることを心に留めておきましょう。
残地物の場合、故障した際には入居者が費用を負担しなければならないケースもあるため、注意が必要なのです。
通常の設備か残地物かについては、管理会社に確認すればわかりますので入居時に確認しておきましょう。
また、共用部に置いている私物も忘れずに撤去してください。
たとえば宅配ボックスに宅配便が入れられたままになっていたり、ベランダに物干し竿やプランターを残していたり、自転車置き場に自転車や空気入れを置き忘れている方も意外と多いです。
不要な出費を増やさないためにも、すみずみまで念入りにチェックしておきましょう。
NG3 「ガイドライン」や条例を知らずにいること
退去時トラブルとして多いのは、「敷金が返ってこなかった」「逆に大金を請求されてしまった」という内容だと思います。
ご存じの方も多いと思いますが、退去時には原状回復費用(修繕費用や破損の費用負担)が必要になります。多くの場合は、入居時に支払った敷金でまかなわれ、余った金額が入居者へと返却されます。
ところがやや基準が曖昧なため、トラブルに発展してしまうケースがあるのです。
そこで参考にしたいのが、国土交通省が定めている「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(通称:ガイドライン)」(※1)です。
たとえば、経年劣化による壁紙の日焼け、壁の画鋲の跡、クロスの変色、冷蔵庫やテレビの裏の電気焼け(黒ずみ)、家具を置いたへこみなどについての修繕・取り換えに関しては、貸主が負担する。
一方、通常の使用では発生しないような台所のひどい油汚れ、浴室のカビやシミ、タバコのヤニや匂い、落書きなどについては入居者が負担する、など。
さまざまな項目で具体的なガイドラインが示されているため、トラブルの抑止になります。
また東京都内の賃貸物件を契約するとき限定ではありますが、「賃貸住宅紛争防止条例に基づく説明書」(※2)という書類も準備されています。
別名「東京ルール」とも呼ばれるこちらは、退去時のトラブルを防止するために2004年10月1日に制定された条例で、宅建業者が「退去時の原状回復の基本的な考え方」や「契約における賃借人の負担割合」などについて、入居者に説明することを義務付けています。
退去時トラブルを防ぐためにも、これらガイドラインや東京ルールについて熟知しておいていただきたいです。
最後に、入居時にしておけば、退去時に役立つことをお伝えします。
まずは管理会社から渡される「現状確認書(入居時チェックリスト)」を記入して、管理会社へ返送しておきましょう。さらに、物件の状態を写真や動画に撮って記録しておく。
退去時に、元からあった傷や不具合の修繕費用を万一請求されたとしても、それらが重要な証拠になってくれるのです。
以上、ぜひ参考にしてください。
※1国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(通称:ガイドライン)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/honbun2.pdf
※2「賃貸住宅紛争防止条例に基づく説明書」(別名:東京ルール)
https://www.juutakuseisaku.metro.tokyo.lg.jp/juutaku_seisaku/tintai/310-0-jyuutaku.htm
Information
<教えてくれた人>
石岡茜さん。2013年に「女性のための不動産会社を作りたい」と、東京・学芸大学に「ことり不動産」を設立。女性ならではの細やかな視点と「幸せな家選び」をモットーに、物件選びをサポートしている。宅地建物取引士。著書に『持ち家女子はじめます』(飛鳥新社)がある。
取材、文・髙倉ゆこ
©JuriA/Adobe Stock
取材、文・髙倉ゆこ
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