後藤輝基「第一声が姉ちゃん」 藤井隆プロデュースの2ndカバーアルバムレコーディング秘話
ananweb / 2024年6月1日 20時30分
的確な例えツッコミと切れ味鋭いトークで、お笑い界で確固たる地位を築いているフットボールアワーの後藤輝基さん。2022年に藤井隆さんが主宰する音楽レーベル・SLENDERIE RECORDからカバーアルバム『マカロワ』をリリースし、シンガーとして新たな魅力を発揮。今回、待望の2ndカバーアルバム『ホイップ』が到着。じっくりと話を聞いた。
――藤井隆さんプロデュースのもと、音楽活動を始められたきっかけは何だったのでしょう?
後藤輝基さん(以下、後藤):藤井さんとは、20年近く大阪で番組(『発見!仰天!!プレミアもん!!!土曜はダメよ!』)をやらせていただいてまして。ただ、プライベートで飲みに行くとか、遊びに行くことがなかったんですよ。「それもなぁ…」ということで、藤井さんが「ごはんに行こう」と声をかけてくれまして。普段はカラオケをしないんですけど、「後藤くんも歌ってよ」って言われたので「ほな、わかりました」と歌ったんですね。藤井さん的には長渕剛さんとか昭和歌謡を選ぶと思っていたら、原田真二さんの「キャンディ」を選曲したのが意外やったみたいで。「なんでこの歌を知ってんの?」「姉ちゃんが好きでして」「あ、そうなんや!」と。それが藤井さんのアンテナに引っかかったらしいですよ。
――藤井さんは、後藤さんがGOTO名義で発表された楽曲も音楽的に好きだったそうですね。
後藤:そうでしたね! いや、言うたってバラエティ番組から生まれた曲ですから「何を歌ってんねん、こいつ」みたいな反応になるはずなんですけど「音楽としてすごい好きやねん」と言ってもらいましたね。そんなこんなで藤井さんが熱を帯びだし、プロデュース第1弾として、本田美奈子さんの「悲しみSWING」のカバーをリリースすることになりました。
――その後、1stカバーアルバム『マカロワ』をリリース。反響は?
後藤:『ゴッドタン』の「芸人マジ歌選手権」とか、バラエティのイチ要素として歌うことはありましたけど、それとは全く違うアプローチに驚かれましたね。藤井さんのアイデアでギターを封印し、選曲も女性の曲が中心でしたから。
――『マカロワ』は後藤さんの艶やかな歌声を堪能できると、女性からの評判も高いですよね。小池栄子さんは「初めてカッコいいと思った」と藤井さんに連絡されたそうで。『土曜はダメよ!』で20年ご一緒されている女性作家さんも「初めて好きになった」と絶賛。
後藤:ほな、20年はなんやってん! っていうね。確かにこれまで見せていないというか、自分では見せられへんような側面ですから。なかでも一番喜んでくれたのが、ウチの姉ちゃんで。もともと歌手になりたかった人なんですよ。毎回ライブに来て、CDやレコードも手に入れて、ずっと聴いてくれていて。「自分の夢が叶ったようや」と言ってました。
――今回の『ホイップ』では、そのお姉さんもボーカルに…?
後藤:藤井さんから最初に言われたのが「今回はお姉さんに参加してほしい」と。そこから始まってるんです。やるわけがないと思っていたんですけど、本人に聞いたらあっさりオッケーが出たので「ほんまに? どうすんねん、これ!」って。姉ちゃんと歌うなんて、カラオケも含めて人生で1回もないですから。しかも、楽曲がSelfishの「自由になって」ですよ。そもそもデュエット曲ではない楽曲をチョイスしてくるのも、藤井さんらしいというかね。
――それも、まさかの1曲目に持ってくるという。
後藤:1曲目とおっしゃいますけど、第一声が姉ちゃんですからね。
――ふふふ、そうなんですよね!
後藤:そうなんですよ。“後藤輝基”名義やねんから、普通は僕の声から始まるはずが姉ちゃんの声からなんや! っていう。そこのセンスも藤井隆ならでは、ですよね。
――ならではといえば、藤井さんはレコーディングのディレクションがかなり独特なんですよね。
後藤:普通は「もうちょっと強く歌って」とか「明るめな感じで」と言うんでしょうけど、「悲しみSWING」の時は「いままで歌を歌ったことがなかったベテラン俳優さんが、周りから『歌ってください』と囃し立てられて、自分が出ていないドラマの主題歌をスタジオで歌う。そしたら『うわー、素敵! 最高です!』『本当にこれでいいの? じゃあ、またね』と帰っていく感じで歌って」と…いや、どう歌うねん! でも、そんなこと言ったら埒が明かないので「わかりました」と言って、マイクの前に立ちましたけどね。
――ハハハ! わかってないけど。
後藤:ええ(笑)。今回だとスターダストレビューの「想い出にかわるまで」かな? 「この主人公は肩をすぼめて、凍えそうな感じで襟を立てながら歩いてんねん。でも、着てる服は夏服やねん」って。全くわからん! 毎度のことですけど、言いましたよ「わかりました」って。
――サウンドプロデュースを務めたONIGAWARAの斉藤伸也さんからは、どんなアドバイスを受けましたか?
後藤:リズムのレクチャーを受けることが多かったですね。「想い出にかわるまで」も、しっかりリズムに沿って歌わないと軽やかさが出ないから、横のリズムを意識して歌いました。あと、僕は力を入れて歌うと“昭和歌謡のねちっこさ”が出てしまうらしく。だから自分の中でだいぶ抑えて歌っていて。音源を聴いたら「あぁ、それで正解やったわ」と思いました。
――改めて『ホイップ』はどんな一枚になりましたか?
後藤:前作は女性が主役の曲がほとんどで。だからこそ全然違うもんとして、自分と切り離して歌えたんです。今作は男性が主人公の曲ばかりで、一人称が〈僕〉の曲が多い。自分が言わないような歌詞がいっぱい出てくるから、照れくささはありましたね。〈僕を信じて〉なんて、嫁にも言うたことないですから。皆さんがどう感じるか、反応が楽しみです。
藤井隆が全面プロデュースを務め、ONIGAWARAの斉藤伸也がアレンジで参加したカバーアルバム第2弾『ホイップ』が発売中。先行配信曲「スローなDanceは踊れない」、後藤の実姉とデュエットをした「自由になって」をはじめ、全7曲を収録。6月9日から「後藤輝基“ホイップ”ツアー2024 plus 藤井隆!」を全国5か所で開催する。
ごとう・てるもと 1974年6月18日生まれ、大阪府出身。’99年に岩尾望とお笑いコンビ・フットボールアワーを結成。「第32回NHK上方漫才コンテスト」最優秀賞、「M‐1グランプリ2003」優勝をはじめ、お笑いの賞レースで華々しい結果を残す。2022年から藤井隆プロデュースで新たに音楽活動をスタートし、お笑い以外でも活躍の幅を広げている。
カットソー¥3,990 パンツ¥9,900(共にUNFILO/BLANDET Tokyo miyamoto@miyamotospice.com) その他はスタイリスト私物
※『anan』2024年6月5日号より。写真・前田拓也 スタイリスト・嶋岡 隆(Office Shimarl) インタビュー、文・真貝 聡
(by anan編集部)
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