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40周年を迎えた岸谷 香「この先もこれでいい」20代から変わらぬ音楽への思いを再発見

ananweb / 2024年7月21日 20時30分

40周年を迎えた岸谷 香「この先もこれでいい」20代から変わらぬ音楽への思いを再発見

【音楽通信】第159回目に登場するのは、伝説のガールズバンド“プリプリ”こと「プリンセス プリンセス」のボーカリストを経てソロでも大活躍中のうえ、芸能活動40周年を迎えた、岸谷 香さん!

母のアップライトのピアノが音楽の縁をつなぐ

【音楽通信】vol.159

2024年、芸能活動40周年を迎えたミュージシャンでシンガーソングライターの岸谷 香さん。いまも年間30本以上のライブを行い、ポップでキャッチーな楽曲で多くの人たちから親しまれています。

ガールズバンドのパイオニアとして名高い「プリンセス プリンセス」のボーカリストとして1986年にデビュー以降、数々のミリオンヒット作を世に送り出し、1996年の日本武道館公演をもってバンドを解散後、2012年に東日本大震災復興支援のために1年限定でバンドを再結成したこともありました。

1996年には俳優の岸谷五朗さんと結婚。1997年には旧姓の「奥居 香」としてソロ活動をスタートした後に、アーティスト名を本名の「岸谷 香」に変更し、2014年には本格的なソロ活動を再スタート。さらに2018年にはガールズバンド「Unlock the girls(アンロック ザ ガールズ)」を結成するなど、バイタリティにあふれた活躍ぶりに元気をもらうファンのかたは多いようです。

そんな岸谷さんが、2024年7月24日に、ニューシングル「Beautiful」をリリースされるということで、音楽的なルーツなどを含めて、お話をうかがいました。

――芸能活動40周年となりましたね。

16歳のときにオーディションを受けて音楽家になってから、今年で40年です。途中、育児などで10年間活動を休んでいるので実質的には30年ですが、これまであまりにいろんなことがあったから、たくさん生きてきたなとも実感していて。ひとことで言うと、「楽しいな、私の人生」と感謝しています。

――そもそも幼いときに音楽にふれたきっかけは何でしたか?

家に母のお嫁入り道具だったアップライトのピアノがあって、生まれたときからピアノにふれていました。母にピアノを教えてもらって、それからピアノの先生に習うようになって。それ以外はとくに家で音楽を聴く習慣はなかったので、母のピアノがなかったら、音楽をしようとは思わなかったかもしれません。

――お母さまからの音楽のご縁なんですね。そして中学ではバンドをやるようになられて。

小学校では合唱大会や学芸会で伴奏していましたし、国立大学の附属の学校だったから同級生はそのまま進級するので、中学校でも“ピアノが弾ける子”だとみんな知っていて、先輩から誘われたことがきっかけでバンドを始めました。

――プロを目指したのはいつ頃だったのでしょうか。

もともと明確にプロになると考えていなくて。思えば、そういう人生になると決められて生まれてきたんだろうなっていうぐらい、気がついたら音楽をやっていた感じなんです。もちろんオーディションは自分で受けたんですが、その時期は高校受験を失敗して、行きたくない学校だったので、やめる口実としてオーディションを受けたら受かったんです。

――きっと音楽の道に導かれたんですね。

振り返ると、あのときは音楽しかなかったんだろうと思うんですが、よく16歳で音楽をやる環境が整ったなと。さらに、両親は私の選択によく「イエス」と言ったなというのは、いまも最大の謎です。

――その後、プリンセス プリンセス時代は非常にお忙しかったのでは?

そうですね。16歳で芸能活動を始めたときはよくわからないアイドルバンド(プリンセス プリンセスの前身バンド時代)だったので、世間には箸にも棒にもひっかからなくて、高校のクラスのなかでも私がバンドをやっていることはなんとなくしか知られていなくて。芸能人が多く通う高校だったので、同級生には少年隊やシブガキ隊、三田寛子さんなどもいましたね。だから、たまにバンドで歌番組に出るのも、クラスメイトがいっぱいいてイヤだなあと思っていました。

プリンセス プリンセス時代は、ただひたすら楽しかったです。思いのままに作った曲が年間1位になったり、ライブにお客さんがいっぱい来てくれたり。その反面、プリプリの存在がすごく大きすぎて、できないこともたくさんあったんです。いまのようにフェスやコラボが盛んではない時代ですし、簡単にイベント出演もできない時代でした。20代のすべてをプリプリとして駆け抜けて大満足だったので、円満に解散という形になったんですよね。その後、50代になって、こんなふうに音楽活動をしているとはまったく想像していませんでした。

9年ぶりのニューシングルはコライトで制作

――2024年7月24日に、EDMやハウスの音楽要素を取り入れた9年ぶりのシングル「Beautiful」をリリースされます。今回、共同で音楽を制作する“コライト”をされていて、歌詞はプリプリメンバーだった富田京子さんと、曲はYusei Kogaさんと組んでいますね。

そう。もともと娘の仲良しグループのひとりが音楽をやっていて、コライトの存在を教えてもらったことがきっかけで、面白そうだなって興味を持ちました。その頃、K-POPにもハマっていて、「NewJeans」を好きになって。彼女たちの楽曲のクレジットを見ると、メンバーの名前も入っているけど、同時にたくさんの人の名前もあったり。いまの時代はコライトが主流なのかな、私もやってみたいなと、レコード会社のスタッフに相談しました。

いままで40年間、孤独にほぼひとりで曲を作ってきたから、今回初めてトラックメイカーという職種のかたとお仕事させてもらうことになったわけです。コライトはすごく楽しくて、音域も過去にないぐらい広いのでカラオケで歌いやすいかはわからないけど(笑)、すごく刺激になって、盛り上がりました。

――「Beautiful」の振り付けをパパイヤ鈴木さんにご依頼されていますね?

そもそも鈴木くんは高校の同級生で、近年また連絡を取るようになったんです。以前、ライブの次の日に会ったときに、首や肩が痛くなるんだけど、ずっと応援してくれてライブに来てくれるファンのかたも体がつらいかもしれないよね、と話していて。本格的な踊りじゃなくて、ラジオ体操の音楽版みたいなダンスはできないのかなって相談したら、「できるよ」って言うから、「やろう」と。それで曲を書いたら連絡するつもりが、時間が経ってしまって。今回「Beautiful」ができたタイミングで連絡して、「じゃあNewJeansみたいな振り付けにしてよ」と言ったら「オッケー!」となりました。

――今回はコライトの新曲ですが、もともとおひとりで曲作りされる際は、どんなときに曲が生まれるのですか?

さまざまですけど、楽しいときや心が躍ったときに曲が生まれることが多いから、旅行に行く際は絶対に五線紙を持っていくんですよ。あとはその逆に、悲しいときや、見たことのない景色を見たときも曲が生まれて。まあ、たとえ五線紙がなくても、思いついたら何にでも書いちゃうんですけども(笑)。そして書なきゃ、と意識して書くときもあります。曲はそうして生まれますが、歌詞を書くのはあまり好きではないので、だいたいいつも後回しにしていますね。

――現在「KAORI KISHITANI 40th Anniversary LIVE TOUR 2024 “57th SHOUT!”」と題して、プリプリのアルバム1枚をセルフカバーするという、周年ならではの特別ツアー中ですね。さらに9月からは「KAORI PARADISE 2024」と題したひとりの弾き語りツアーを開催と、いろいろなスタイルで年間ライブをされています。

バンドツアーと弾き語りツアーは私の二大柱です。どちらか片方だけのライブになると私じゃない感じがして。両方あっての私ですし、“岸谷 香というアーティストはどういう人?”と言われたら、人と違う特徴がこの「二足のワラジで歩いています」というところだと思っています。

――実際、ツアーの手応えはいかがですか?

プリプリのアルバムをまるごと1枚の企画は、スタッフから提案されて、最初は躊躇していました。新曲も出していますし、いまのバンドUnlock the girlsでやりたいこともいっぱいなのにと。ただプリプリを解散してから、1回も当時のアルバムを聴いていないから、この機会にまた聴いてみようかなと思ったんですよね。そこでプリプリのとあるアルバムを聴いたら、さっき「二足のワラジで歩いています」と言いましたが、そんな二つの支柱を持ってライブを重視してやらなきゃと思ういまの気持ちと同じく、当時のアルバムのなかにも信念を持って音楽をやっていて絶対に届けたいとがんばる20代の自分を感じました。

そしたら、すごくうれしくなっちゃって。そういうところが変わらずにいられて、この40年、まわりで支えてくれるスタッフやファンのかたのおかげもあって、本当にいい時間を過ごすことができたんだなとあらためて実感しました。だから、いまもう1回、プリプリ時代のアルバムの曲をまた歌ってみようと思えて。いままで本当にやりたいことだけをやって、あとから後悔するような仕事や音楽の仕方はしてきていないんですが、それは間違っていなかった。これから先も、これでいいんだなと思えたのは、40周年の私にとってはものすごく大きな収穫でした。

いまのスタンスのまま行けるところまで行く

――お話は変わりますが、お休みのときはどんなふうにお過ごしですか?

海外に行くのが好きだから、休みはまとめて取るようにしています。たとえば3か月集中して頑張って仕事して、終わった次の日に遊びに行きます。

――最近ハマったものはありますか。

ずっとハマっているものですが、英語の勉強をしています。うちの子どもたちが高校からアメリカに留学していて、英語が話せるとこんなに世界が広がるの? とうらやましくなって。とくに娘は友達が大好きな子だから、世界中に友達がいるんですよ。なんて楽しい人生なんだろうと思っていたら、私自身にもいろんな出会いがあって、海外のお友達もできて。もっと会話したいしわかりあいたい気持ちもあって、50歳から英語の勉強を始めました。

――バイタリティにあふれていらっしゃいますね。

楽しいですよ。同年代のまわりの友達も、子育てが落ち着いて、やりたいことをなるべくしたほうがいいよねという感じで、みんな元気。推し活を始めた友達もすごく楽しそうだし、いきいきとしていますよ。いい年代なんだなと思います。

――素敵ですね。年間でライブ活動も多いですが、ライフスタイルで気をつけていらっしゃることはありますか。

とくに意識していることはないんです。運動しなきゃ、とは常に言っていますが、それはステージに立てなくなるからではなく、自分の足で飲みに行きたいから(笑)。とはいえ、音楽をやっていて作品も作るけどステージはやらない、生演奏はしないというタイプのアーティストもいるかもしれませんが、私は生で歌ってこそというタイプ。だから、ステージで歌わなくなるときが、私が音楽をやらなくなるときでもあるのかな。

――ライブを大事にしていらっしゃるんですね。いろいろなお話をしていただき、ありがとうございます。では最後に、今後の抱負を教えてください。

40周年があっという間に来たので、気がつくと45年、50年と言っているのかな、と。いまバンドやひとりの弾き語りライブをしていますが、どれも少しずつ良くなっていくと楽しいですから。またいろいろな人とコラボもしたいですね。いまのスタンスのまま、行けるところまで行きます。

取材後記

芸能活動40周年という、アニバーサリーイヤーを迎えた岸谷 香さんがananwebに登場。華奢だけどパワフルな岸谷さんは、インタビューにも丁寧かつ正直に応じてくださり、なかでも「バンドツアーと弾き語りツアーは私の二大柱」と、ライブ活動を大事にされていることが強く伝わりました。当時、プリンセス プリンセスの解散ライブにスタッフとして参加した思い出も懐かしいです。時を経てもカッコいい岸谷さんのニューシングルをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。

取材、文・かわむらあみり



岸谷 香 PROFILE
東京都出身。ミュージシャン、シンガーソングライター、音楽家。
1996年5月31日、武道館公演をもって「プリンセス プリンセス」を解散。1997年に「奥居 香」としてソロ活動をスタートした後、子どもを授かったことをきっかけにアーティスト名を本名の「岸谷 香」に変更。
2012年、東日本大震災復興支援のため、16年振りに「プリンセス プリンセス」を1年限定で再結成。2014年、本格的なソロ活動を再スタート。
2018年、ガールズバンドプロジェクトを立ち上げ、「Unlock the girls」を結成。ミニアルバム『Unlock the girls』をリリース。

2024年はデビュー40周年のアニバーサリーイヤー。2月に半自叙伝『岸谷香の東京MY STORY』(東京新聞出版)を発売。5月17日に新曲「Beautiful」を配信、7月24日には同曲と「Unlock the girls ver.」そして特典Blu-rayを付属したシングルCDをリリース。

現在、バンドツアーKAORI KISHITANI 40th Anniversary LIVE TOUR 2024 ”57th SHOUT!”、9月からは弾き語りツアー「40th ANNIVERSARY LIVE TOUR KAORI PARADISE 2024」と、周年ならではの特別なライブを開催。

Information



New Release
「Beautiful」

(収録曲)
01. Beautiful
02. Beautiful – Unlock the girls ver. –(※CDのみ収録)

(特典Blu-ray)
01. Beautiful Music Video
02. Beautiful Lecture
03. Beautiful Dancecise
04. Beautiful Behind the scenes

2024年7月24日発売

取材、文・かわむらあみり スタジオ写真・Siyoung Song ライブ写真・MASAHITO KAWAI

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