出されたお茶を飲むのはNG?【ビジネスマナー】「謎マナー」の実態と正しい対応とは
ananweb / 2024年7月6日 20時50分
「これって本当に必要?」と思うことも多い日本のマナー。時代の変化とともにマナーの基準も変化していきます。では、今では「古いマナー」「謎マナー」になってしまったマナーにはどんなものがあるのでしょうか? 今更聞けない古いマナーについて、秘書歴約15年でマナーに詳しい、能美黎子さんが説明します。
古いマナー
【元社長秘書のマナー講座】vol. 44
マナーは、ビジネスに関わらず相手を思いやる気持ちを表現するためのコミュニケーションの一環としてとても大切なものです。しかし、その形は時代や環境に応じて変わっていきます。特にビジネスマナーにおいては、「そのビジネスマナー、本当に必要?」「そこまで気にすること?」「正直、面倒」と疑問や不満を感じている人も少なくないのではないでしょうか?
例えば、お辞儀ハンコと言われる「ハンコは隣の上司に向けてお辞儀をしているように傾けて押す」といったマナーなど、古いマナーとされるものや謎マナーと言われることも多くあります。そこで、今回はこれってどうなの? というみなさんの疑問である「古いマナー」について、Q&A形式にてご紹介します。
これってマナーなの? 古いマナーQ&A
Q1. お酌をする際、ビールのラベルは必ず上にする
A. ラベルを上に向け、相手からも見えるようにしてお酌をするのが無難
お酌をする時は、ラベルが相手に見えるよう底に近い部分を右手で持ち、左手を注ぎ口付近にあて、ラベルを上に向けるのがマナーだと言われています。理由はさまざまですが、注ぎ口からたれたお酒がラベルを汚さないようにするためや、お酒の銘柄が相手からもよく見えるようにという理由があります。いずれにしても、ルールではなくマナーであり、お酌の作法を気にするかたがいる以上は、理由はどうあれラベルを上に向け、相手からも見えるようにしてお酌をするのが無難と言えます。
Q2. 乾杯するとき、目下の方がグラスを下にする
A. 周囲を見ながら柔軟に対応
「乾杯」のマナーは、出席するシーンによって異なります。おそらくカジュアルな飲み会の席の場合に発生する問題ですが、必ずしも「目上の人よりも、グラスの位置を下げなければならない」という訳ではありません。しかし、このマナーを知っていることで目上の方から常識がある人と見られて印象が変わることも。筆者の知人は、「この行動をしたことによって彼の周りからの評価が上がった」という話を耳にしたことがあります。知っておいて損のないマナーですので、周囲を見ながら柔軟に対応をしましょう。
Q3. お辞儀ハンコ
A. あくまで限定的なマナーであり、過剰に反応する必要なし
「お辞儀ハンコ」とは、ハンコを上長に配慮してお辞儀をしているように左に傾けて押すというものです。現在では、一般的なマナーというよりは、一部業界に残された独自の風習という見解となっています。しかし、職場でお辞儀ハンコのような独自の印鑑ルールがある場合は、それに従うのが無難です。
Q4. 出されたお茶を飲み干してはいけない
A. 出されて相手が「飲んでください」と言ったら飲むのが正解
会議などで出されたお茶を飲み干すのはマナー違反という謎のマナーがありましたが、お茶は来客に対する心遣いです。相手の気持ちに応えるためにも、飲むのが正解です。タイミングとしては、どうぞと先方に勧められてから飲みましょう。ただし、謝罪に伺った場合は例外です。手を付けないことで謙遜や恐縮の態度を示すことができるため、飲まない方がいい場合もあることを覚えておきましょう。
Q5. 暑くてもジャケットは脱がない
A. 場をわきまえずに上着を脱いではいけない
暑い夏でもスーツは常に上下セットで着用しなければならないものであり、場をわきまえずに上着を脱いではいけません。企業がクールビズを推進していることはありますが、あくまでも社内における取り組みです。そのため、営業先や取引先の訪問の場合にはジャケットを着用する方がいいでしょう。スーツの上着を脱いでも許されるのは、一緒にいる上司や取引先の相手などが先に上着を脱いだ場合のみです。
おわりに
「誰に対する気遣いなのかわからない」ような形式的なマナーは、時代の変化とともに「不要だ」と判断され、その基準が変わってくることがあります。大事なのは、形式的なマナーよりも、ビジネスマナーの本質である「相手への思いやりの気持ち」を大切にすることです。状況や相手に応じて、敬意や気遣いを伝えるためにそのマナーが必要かどうかを考え、臨機応変に判断をしましょう。ビジネスをスムーズに進めるための礼儀や作法、所作と認識してくことが大切です。
<筆者情報>
ライター:能美黎子
大学卒業後、新卒にて最大手保険会社にて約7年秘書の経験を経て、ITコンサル企業の社長秘書に転職。その後、数社の社長秘書を経験し秘書歴約15年となる。秘書検定準1級を取得。
今までの経験を活かし、接遇や礼儀作法、マナーなど“品格”を大事にした執筆作業を行なっている。
©Kei A/Adobe Stock
文・能美黎子
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