22歳のシンガーソングライター、汐れいら「満足度99%を目指します」
ananweb / 2024年8月16日 19時30分
【音楽通信】第161回目に登場するのは、つい口ずさんでしまうメロディと独特の歌声が印象的な現在22歳のシンガーソングライター、汐れいらさん!
小さい頃から音楽が身近な環境に育った
【音楽通信】vol.161
家族の影響で「小さい頃から歌うことが好きだった」という、シンガーソングライターの汐れいらさん。
16歳の頃からオリジナル楽曲を作るようになり、都内を中心に路上ライブやライブハウスのイベントに出演。2021年にデジタルシングル「さよならCITY」でインディーズデビューし、2022年に発表した「センチメンタル・キス(Acoustic ver.)」はAbemaTVの恋愛リアリティ番組『彼とオオカミちゃんには騙されない』のBGMに起用され、TikTokなどSNSでティーンエイジャーから人気を博し、バイラルチャートでは1位を獲得しました。
2023年には、デジタルシングル「Darling you」でメジャーデビュー。“この世界のどこかにいるかもしれない誰か”のことを曲にする汐さんが、2024年8月14日に1st EP『No one』をリリースされたということで、音楽的なルーツなどを含めて、お話をうかがいました。
――小さい頃に音楽にふれたきっかけから教えてください。
両親からクリスマスプレゼントにピアノとマイクを買ってもらって、遊びながらピアノを弾いて歌っていました。小さい頃から、音楽を聴きながらお酒が飲めるライブハウスによく連れていかれていたので、音楽は身近にありましたね。母も歌うことが好きで、家でもよく歌っていました。
――音楽に親しむ環境で育ったのですね。
そうですね。高校生のときには軽音楽部に入って、バンドのメンバーとして文化祭で初めて人前で歌って。最初は3人しかいなかったので、同じくスリーピースバンドのKANA-BOONさんなどのコピーをしていました。でも、みんなが同じバンドが好きということで集まったわけではないですし、自分が好きなバンドと歌いやすい曲は違うんですよね。
だからなのか、コピーバンドをやっているときは、あまり音楽をやっていて楽しいとは思いませんでした。でも、16歳のときに、自分の曲を作るという部活の合宿があって。自分で曲作りをしてみたら予想以上にはかどって、すごく楽しかったんです。作った曲の発表をしたときに、友達が「コピーよりこっちのほうがいいね」と言ってくれたことを覚えています。
――では実際にプロを目指したのはいつ頃ですか?
音楽の道でやっていこうと思ったのは、デビューする少し前ぐらいです。歌うことと同じく、何かを創造することも好きだったので、小説を書くのも本を読むのも好きで。将来は本に関わることがしたくて、大学に行きながら趣味で音楽ができたらいいなと、ぼんやり思い描いていました。でも、いざ大学生になって、授業を受けて宿題もしてアルバイトもして…となると、音楽をする時間がほとんどなくて。
そんな状況でしたが、まわりにも音楽をがんばっている友達はいました。仲の良い友達とふたりでいたときに、その友達の家族から「未来の小説家とシンガーだな」と言われたことがあって。どうやら私に対しては「小説家」、友達に対しては「シンガー」と励ましてくれたんだと思うんですが、ちょっとモヤッとしたんですよね(苦笑)。
隣にいる友達が「未来のシンガー」と言われたことが、うらやましいんだなと気づいたんです。そこで、私はやはりシンガーになりたいのかもしれないと。そんなときにいまの事務所のかたに声をかけてもらって、デビューすることにつながりました。
――2023年8月にはデジタルシングル「Darling you」でメジャーデビューされましたが、デビュー後心境の変化はありましたか。
一番変化を感じたのは、「Darling you」でメジャーデビューしたときに、私の曲について考えてくれる人がまわりに多くなったことですね。そこで「デビューしたんだな」と実感しました。ライブで発表したんですが、そのときにファンの人たちが思った以上に喜んでくれて、すごくうれしかったです。
1st EPでは曲ごとの世界を想像してみてほしい
――2024年8月14日に1st EP『No one』をリリースされました。各楽曲に“書き下ろしのストーリー”として短編小説や物語がついているのが特徴的です。歌詞を先に構想して、そこから広げてストーリーを考えているのでしょうか?
最初に書くときは、歌詞を先にとかストーリーを先にとは決めていないんです。ふと頭に浮かんだ情景をひとまず書き出してみて、そこから世界が広がっていくので、その世界観をだんだんとまとめていく感じですね。だから、書いているうちに歌詞やストーリーができていきます。
――今回のEPでは楽曲ごとに歌詞と小説がありますが、そもそも曲を作るときは、どんなふうに作っていらっしゃるんでしょうか。
全部作り方が一緒なわけではないんですが、だいたいは歌っているとメロディと一緒に歌詞が出てくることがあります。それで「これを使おう」となったときに、その言葉から派生して、歌詞の世界や曲ができていく感じですね。
――では今作のタイトル『No one』に込めた思いは何ですか。
いつも誰ともかぶらない曲を作りたいと思っていて、このEPにも、この世界にいるかもしれないし、いないかもしれない誰かの曲たちを詰め込みました。さらに「No one(ノーワン)」と書いて、「ナンバーワン」という意味もあって。誰かのためではなく、自分にとっての1番になりたいという思いも込めています。そして、こういう何個か意味がある言葉が好きというのもあって、このタイトルにしました。
――1曲目「糸しいひと」は、とらえ方の違いですれ違うふたりを歌っていますが、どのようなことから曲が生まれましたか。
この曲は、漢字の音読みと訓読みの違いが気になって、調べたことがきっかけでできました。「訓読みだけで いいのにね」と歌詞にもあるんですが、音読みだけを聞くとそれだけでは言葉の意味がわからないけれど、訓読みにすると意味がわかる。それを知ったときに、曲にしたいなと思いました。
――3曲目「うぶ」は、結婚する娘を見送る父親の目線というのが珍しいですね。
サビから書き出した曲なんですが、そのときはまだ視点が決まっていませんでした。曲を作っていくうちに、誰だろうな、お父さんの目線かなと定まってきて。歌詞を読んでいくと、娘へ送った気持ちではなく、普通の男女のラブソングにも見えるようになっています。どんなパターンの曲としても、受け取ってもらえたらいいなと。
――7曲目「備忘ロック」はアンニュイな感じで、彼女のことでしか曲を作れないバンドマンの歌だそうですね。
「備忘ロック」は、最初のサビの「僕の青春は」から言葉が生まれてきました。でも、「青春」というひとことで片付けていいのかな、ありきたりの言葉じゃないのかなと考えると、あまり青春という言葉は使いたくないと思ったり。歌詞を書いていくうちに、次第に青春にもいろいろあって、普通の主人公がこの曲を歌ったらダサいかもしれないけれど、「バントマンの曲ならいいかも」と感じて。彼女を振るバンドマンはけっこういるけれど、そうではなく、最終的に彼女のために最後の曲を歌うバンドマンを主人公にしました。
――曲の主人公がバラエティに富んでいますね。一人称が「僕」の歌詞が多い印象ですが、自然とそう生まれ出てくるものなのですか。
自然とそうなるところもありますし、「僕」としたほうが歌いやすいというのもありますね。これが「俺」になると強い印象になりますし、「私」にしてもいいんですが、「僕」にするとキャラクターが固定されないから、曲の印象も広がるかなと思ってそうしています。
――1枚目のEPが完成して、これからファンのみなさんのもとに届きます。どんなふうに聴いてほしいですか?
1曲ずつ、確かめながら聴いてほしいですね。収録曲にはすでに配信されている曲もあるので、何曲か聴いてくれている人もいると思いますが、もう1回、EPとして形になったものを聴いてほしいなと。収録曲それぞれにイメージビジュアルも付いているので、歌詞と一緒に小説も読みながら、また聴いて何かしらを思考してほしい。たとえば、歌詞の通りに曲の世界を想像してもらうのもいいですし、いや、これは違うなとかでもいいんですよ。そういう発見も楽しんでほしいですね。
――9月には東名阪で「Ushio Reira One Man TOUR 2024『No one』」と題したツアーを開催されます。
これまで路上ライブやイベントでライブをしてきて、けっこう緊張することが多かったんですが、最近はやっと楽しい気持ちのほうが増えてきました。なので、9月のライブもその“楽しい”を増やせるようにしたいと思っています。以前、パフォーマンスで悩んでいたときに、「無理に理想のライブに寄せていかなくてもやっているうちにできていくよ」とアドバイスしてもらったことがあったのですが、その言葉を聞いて、たとえ自分で失敗したと思っても、新しい発見があればいいかなと。みなさんにもライブに来てほしいですね。
楽しく音楽をやりながら“満足度99%”を目指す
――お話は変わりますが、おやすみのときはどんなふうに過ごしていますか。
だいたいラプンツェルみたいな感じです(笑)。
――ラプンツェルというと(笑)!?
家から一歩も出ないです。ずっと家にいて、本を読んでいたり、何かを書いていたり。書く作業をしているときは、自分のことを書くこともありますが、何かの本の内容を文字にして書いていくと、心がデトックスされるんですよね。だから、図書館のように本がたくさんあるところに行くと、まる1日いることも。あとは、食べ物の動画を見たり食べたり。
そうやって動かないで何かをしているときもありますが、お散歩することも好きです。自分では「伊能忠敬ごっこ」と言っているんですが、ひとりで20キロとか、目的もなくひたすら歩くこともあります。
――ネーミングが素晴らしいですね。ちなみにファッションで普段意識していることはありますか。
とくに意識してというわけではないんですが、色のはっきりした服を取り入れることが多いかもしれません。デザインはシンプルなものが好きで、ピンク色とか、けっこうパキッとした色を着ます。「Y2K」ファッション(Year 2000/2000年前後のテイストを取り入れたカジュアルなファッション)も好きですね。どこのブランドだから買うというよりは、パッと見たときに気に入った服を買うことが多いかな。
――美容面で気をつけていることは?
食べ物には気をつけていることもあります。栄養学を知るのが好きで、一時期はすごく勉強していたので、スーパーフードなど、栄養を考えながら食べるのが好きです。でも、体に悪いものも食べます。あとは、元気が出ないときは何を食べるといいのかなど考えながら食べています。
――いろいろなお話をありがとうございました。では最後に、今後の抱負をお聞かせください。
楽しく音楽をやることです。それも自分の中での“満足度99%”をずっと続けるということですね。これが100%になって満足してしまうとそれ以上続けていけないと思うので、90%以上は絶対として、99%の満足度を目指していきたいです。
取材後記
イマジネーションの翼が広がる歌詞や曲の世界観と、叙情的なボーカルを聴かせてくれるシンガーソングライター、汐れいらさんがananwebに初登場。もともと本を読むことや文章を書くことも好きだったということもあって、新作には歌詞とストーリー、さらに楽曲ごとにまるで小説の装丁のようなイメージビジュアルもついていて、汐さんの音世界における表現がぐんと広がっています。そんな汐さんの1st EPをみなさんもチェックしてみてくださいね。
写真・鳥羽田幹太 取材、文・かわむらあみり
汐れいら PROFILE
2002年2月9日、東京都生まれ。
“この世界のどこかにいるかもしれない誰か”のことを曲にするシンガーソングライター。
2021年9月、デジタルシングル「さよならCITY」でインディーズデビュー。
2023年8月、デジタルシングル「Darling you」でメジャーデビュー。
2024年8月14日、1st EP『No one』をリリース。9月からは東名阪で「Ushio Reira One Man TOUR 2024『No one』」を開催。
Information
New Release
『No one』
(収録曲)
01. 糸しいひと
02. 味噌汁とバター
03. うぶ
04. 踊り場のサーカスナイト
05. グレーハートハッカー
06. Darling you
07. 備忘ロック
08. 笑ってベイビー
09. Darling you 弾き語り(CD限定収録)
10. 味噌汁とバター 弾き語り(CD限定収録)
2024年8月14日
※収録曲は全形態共通。
(通常盤)
ESCL-5978(CD+歌詞ブックレット)
¥3,000(税込)
※歌詞ブックレット付属(各曲イメージビジュアル+本人書き下ろしストーリー+歌詞)。
(初回生産限定盤)
ESCL-5976〜7(CD+Blu-ray+小説風ブックレット)
¥6,500 (税込)
※紙ジャケット仕様。小説風ブックレット8冊付属(各曲イメージビジュアル+本人書き下ろしストーリー+歌詞)。
【Blu-ray収録内容】
1st One Man Live「だぶだぶでうぶうぶ」2023.12.27 at Shibuya WWW
写真・鳥羽田幹太 取材、文・かわむらあみり
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