人生の軌跡!? アーティスト・みうらじゅん、収集人生の集大成ともいうべき展覧会
ananweb / 2024年7月17日 19時0分
ゴムヘビ、ゆるキャラ、御朱印、誰も欲しがらないトホホなお土産〈いやげ物〉まで、何万という品を収集してきたみうらじゅんさん。物心ついた頃から始まっていた収集癖と発表癖は、還暦を過ぎた現在まで続いており、自宅や事務所は満杯。ついには倉庫を借りなければならないほど収集品の数は膨れ上がっている。そんな彼の収集人生の集大成ともいうべき展覧会が始まった。
僕の収集を見て、あなたも「マイ価値観」を養ってほしい。
「今回のフェスは2018年、還暦を機にマイブームを紹介した展覧会として始まり、全国を行脚しているもの。巡回展ではなくツアー、収集品はメンバーと呼んでいます」
会場ではみうらさんの遺影に始まり、小学生の時に作った壁新聞や仏像スクラップ、親の肩たたき券から大学入試の受験票まで、生い立ちに沿って彼が収集してきた品1万点以上を紹介。いわば人生の軌跡ともいうべき内容だ。コロナ禍に制作した144点の新作〈コロナ画〉の中の、彼の好きな俳優クロエ・モレッツと仏像を組み合わせた絵など、大作も見どころとなっている。
「好きなものって若いうちは向こうからやって来る。けれど大人になると自分から飛び込んでいかなきゃね。だからいかにして自分を洗脳していったか、の過程を紹介している内容なんです。例えばワニ。僕は目に付いたあらゆるワニグッズを買い集めました。ゴルフに全く興味ないのにラコステも買いました(笑)。当然ワニブームの時は着るとテンション上がるから。それには金も時間もかけないとなかなか自分を騙せない」
ここまでして収集&発表を繰り返すのは、「それが僕の仕事だから」と彼は語る。本来の自分の意向や、断捨離、終活などという風潮はガン無視して、アーティスト・みうらじゅんは、それを使命としてきた。
「僕ね、ある時から好き嫌いをやめたんです。気になったものの中には嫌いな要素も含まれるけれど、“そこがいいんじゃない”って自分に魔法をかけるんです。例えば、地方で1時間に1本しか来ないバスに乗り遅れたとします。その時、時刻表ならぬ“地獄表”と思い込むんです。ならば、ここよりもっと悲惨な地獄表があるに違いないと。次の旅に出た時には1日1本だけなんていう地獄表も発見したりして、それが好きだという感覚に変わってゆくんです。紆余曲折がないと、脳はモノを好きになれないんじゃないですかね」
かくして惚れ込んできた展示物を見て、彼は観覧者に「マイ価値観」をぜひとも養ってほしいと願う。
「これがアートか否かは、観る人が決めることだと思います。コロナ画は別名“マイ走馬灯”。僕しか分かりようのないモチーフでいっぱいです。そもそもマイ価値観とは、世間に流布している概念にはないところから始まるものだと思いますから」
コロナ画
コロナ画
コロナ画
コロナ画
みうら・じゅん 1958年、京都府生まれ。武蔵野美術大学在学中に漫画家デビュー。イラストレーター、エッセイスト、ミュージシャン、ラジオDJなどとして活躍。「ゆるキャラ」の命名者。’97年に「マイブーム」で新語・流行語大賞受賞。2018年に仏教伝道文化賞 沼田奨励賞を受賞。
みうらじゅんFES マイブームの全貌展 in京都 美術館「えき」KYOTO 京都府京都市下京区烏丸通塩小路下ル東塩小路町 ジェイアール京都伊勢丹 7階隣接 7月13日(土)~8月25日(日)10時~19時30分(入館は閉館の30分前まで) 一般1000円ほか ジェイアール京都伊勢丹 TEL:075・352・1111(代) ©2024 MIURA JUN
※『anan』2024年7月17日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・山田貴美子
(by anan編集部)
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