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田村正和から柄本佑まで…時代を象徴する、テレビドラマを彩る“大人の男”たち

ananweb / 2024年7月19日 19時0分

田村正和から柄本佑まで…時代を象徴する、テレビドラマを彩る“大人の男”たち

1990~2020年代の間で10年ごとに区切って、テレビドラマを彩る魅力的な“大人の男”キャラを考察。実はトレンドや社会情勢などの時代背景によって、視聴者から求められる男性キャラクターは大きく変わってくることに注目。またそれを演じる俳優たちがなぜレジェンドとなるのかをドラマ考察を得意とするライターの木俣冬さんに分析していただきました。

【’90s】輝かしいテレビスターの時代。



’90sを代表する大人の男 『古畑任三郎』の古畑任三郎(田村正和)

一家団欒の中心にテレビがあり、家族みんなでテレビドラマを見ていた’90年代。

「ドラマを彩る俳優たちは“圧倒的スター”で、一般人とは一線を画していました」と木俣冬さん。

「特に’80~’90年代にかけて活躍したのは田村正和さん。ホームドラマが人気を博していたこの時代に、『パパはニュースキャスター』(’87年)や『カミさんの悪口』(’93年)などで父親役や夫役として圧倒的信頼を獲得。なおかつチャーミングな一面も目立っていました。そんな田村さんの当たり役となったのが、’94年からフジテレビで放送が始まった『古畑任三郎』シリーズ。脚本家の三谷幸喜さんが作り上げた、ダンディでコミカルな古畑任三郎のキャラクター像は、当時50代に入った田村さんが演じると、斬新かつ洒脱で、老若男女問わず人気に。“正統派の二枚目でありながら、喜劇もできる俳優”として名を馳せました」

田村さんといえば、大正から昭和の時代にかけて一世を風靡した名優・阪東妻三郎さんを父に持つ。

「まさに俳優界のサラブレッド。キラキラなスターオーラを放ち、俳優としての技術も高く、全てを兼ね備えた“圧倒的スター”だといえます。’90年代はのちに阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件が起きたり、’99年に地球は滅亡するという予言がもてはやされるようになるなど、不穏なムードが漂っていくのですが、田村さんはその直前、日本がまだ元気だった時代の、最後のスターかも。そしてテレビドラマ界も、新しく面白いことをやっていこうという活気に溢れていました」

“庶民とは違う世界の特別な人”という認識の背景にはこんな理由も。

「当時は、インターネットやSNSでプライベートを明かす時代ではなく、芸能界で活躍している人たちの私生活は謎に包まれていました。それもまた、特別感となっていたと思いますが、田村さんもミステリアスな魅力が光る人でした」



’90s 大人の男の条件
一般人とは一線を画す“圧倒的スター”。正統派の二枚目でありながら喜劇もできる実力派で、ミステリアスな一面も。

【’00s】“愛され有能キャラ”の台頭。



’00sを代表する大人の男 『TRICK』の上田次郎(阿部 寛)

“社会人になっても実家で親と同居する未婚者”という意味の“パラサイトシングル”という言葉が広まった’00年代は、インドア系の男性が増え始めた時代でもある。インターネット掲示板の書き込みをきっかけに『電車男』(’05年)が制作され、大ヒットに。

「ドラマの主人公は頭がよくて仕事ができるのに、人には言えないコンプレックスを持っているなど、これまでにはなかったオタク系キャラクターが新鮮に映りました。ただカッコいいだけではなく、情けない部分、恥ずかしい一面を晒すことが愛される理由になっていた時代です。例えば、『TRICK』シリーズ(’00年~)の上田次郎は、有能な物理学者でありながら、臆病者でトリックに騙されやすく、オカルトに弱いという人物。それをあえて、ファッションモデル出身の阿部寛さんが演じるから面白かった。阿部さんはその後、『結婚できない男』シリーズ(’06年~)でも、高級マンションでおしゃれな一人暮らしをする建築家で、偏屈な独身男・桑野信介を演じて絶賛されました。また、福山雅治さんがドラマ『ガリレオ』シリーズ(’07年~)で演じた物理学者、湯川学も頭脳明晰、容姿端麗でモテるのに“変人ガリレオ”と呼ばれるほどの変わり者でした」
 
’00年代が、’90年代の主人公のキャラクターと大きく異なる理由は、21世紀に入りインターネットがより普及したことにもあるよう。

「ネットカルチャーが浸透し始め、漫画やアニメの人気が高まったり、ある分野のカルチャーに詳しい“オタク”が増え、モテの対象はヒーローよりも頭脳明晰な人になってきたのかもしれません。また、バブル崩壊後の名残を地味に引きずっていた’90年代後半を経て、ますます経済状況が悪くなっていった’00年代は、給料のいい専門職や、知識豊富な堅実派といった国民の憧れをドラマの主人公に具現化した作品が多かったともいえるのではないでしょうか」



’ 00s 大人の男の条件
いわゆる二枚目俳優が、容姿のカッコよさだけじゃない、情けない部分を見せたりできるのが、愛される理由。

【’10s】勧善懲悪な正義漢がブームに。



’10sを代表する大人の男 『半沢直樹』の半沢直樹(堺 雅人)

竹野内豊さんや西島秀俊さんなどのいわゆる“演技派”と肩を並べている堺雅人さん。代表作は『リーガル・ハイ』シリーズ(’12年~)や、もちろん『半沢直樹』シリーズ(’13年~)は外せない。視聴率を取るのが難しい“経済ドラマ”にもかかわらず、銀行員の主人公・半沢直樹のお決まりのセリフは、’13年の新語・流行語大賞にも選ばれ、社会現象を巻き起こしたほどのヒット作となった。

「みなさんご存じの『倍返しだ!』を聞くと、アツいキャラクターにも取れるのですが、’00年代の主人公たちに比べるとさらに知的な人物像に描かれています。そもそも堺さんは、早稲田大学で文学を学び、共著で若山牧水にまつわる新書を出版するなど、文学青年の一面を持つ人。役作りのために並々ならぬ力を注いだエピソードをトーク番組で語るなど、もともと備わった才能やコツコツ積み重ねてきた実力が『リーガル・ハイ』や『半沢直樹』で発揮されたのでしょう。堅実なお芝居ができる俳優の代表といえます」

この時代に“堅実さ”や“実直さ”がウケた背景には、’11年に発生した東日本大震災も関係している、と木俣さん。

「謹慎ムードが漂い、経済が危ぶまれる中で日本社会はどうあるべきかを考えるような風潮になったことが、きっかけになっているでしょう。弱き者という立場の半沢直樹が、理屈を早口でまくし立てて次々に劣勢な状況をひっくり返していく様や、勧善懲悪の姿は、視聴者に爽快感を与えたはず。そして堺さんならではの説得力が、俳優としての信頼に繋がっていったのでしょう。’00年代同様、半沢直樹は国民の理想の人物であったかもしれません」

一方で、そんな社会的風潮に疲れてきた視聴者が求める対象として、のちに中村倫也さん、松下洸平さんのような“ささやき声”を持つ“癒し系俳優”が活躍する時代へと繋がる、とも分析される。



’10s 大人の男の条件
実力を積み重ね、本来の才能とともに発揮。“堅実”な姿勢で説得力があり、国民が抱く理想像のような人であること。

【’20s】“完璧じゃない”人柄に注目。



’20sを代表する大人の男 『光る君へ』の藤原道長(柄本 佑)

不穏さが漂っていた時代から一転、’20年代に入ると、それまでの絶対的正義や堅実さは守りながらも、新たな魅力に注目が集まるようになってきたという。

「何を考えているかわからないような雰囲気を持つ人。脇役で光るような、ちょっとふわっとしたお芝居ができる俳優にスポットが当たるように。例えば、柄本佑さんや長谷川博己さんなど。長谷川さんが主演を務めた『麒麟がくる』(’20年)の明智光秀や、『アンチヒーロー』(’24年)の明墨正樹はとても風変わりな人物でしたが、圧倒的な魅力を拡散する絶対的主人公。放送中の大河ドラマ『光る君へ』で藤原道長を演じて抜群の存在感を示している柄本さんも、ファン層を拡大しています。柄本さんは、高校在学中に映画『美しい夏キリシマ』(’03年)でデビューして、その後も多くの映画やテレビドラマに出続けている売れっ子ですが、ちょっとクセのある脇役を演じることも多かった人。そんな彼の個性的な魅力が一般的に光り始めたのは、『知らなくていいコト』(’20年)で主人公の真壁ケイト(吉高由里子)を全方向から守る尾高由一郎を演じたあたりから。個性派でありながら包容力があって、取り乱さずに、常に落ち着いている役の印象は本人ともリンクするのでしょう。これは、ハラスメント問題からむやみに怒ってはいけないとか、コンプライアンスを意識したこの時代の生き方や考え方にも、ちょうどマッチしているのかもしれません」

どこかミステリアスな部分や、そこから滲み出る独特の色気は、年齢を重ねるごとに増しているようにも。

「芸能一家のお家柄だということも含め、一周して、’90年代の田村正和さんに通じるところもあります。安藤サクラさんと結婚され、脈々と俳優一家の血筋を守っていく感じにも安定感があっていい。そして一見地味そうに見えても、絶対に埋没しない“華”がある。これは、今回取り上げた4人の共通点でもあります」



’20s 大人の男の条件
個性派でありながら包容力があって、常に落ち着いている人。ミステリアスな部分から放たれる独特な色気を持つ。

きまた・ふゆ ライター。テレビドラマや映画のノベライズを数多く手掛ける。代表作は『コンフィデンスマンJP』(上・下・運勢編/扶桑社)、『どうする家康』(NHK出版)など。また、著書に『ネットと朝ドラ』(blueprint)などがある。Webメディア「CINEMAS+」で2015年から毎日朝ドラレビューを掲載している。

※『anan』2024年7月24日号より。イラスト・タテノカズヒロ 取材、文・若山あや

(by anan編集部)

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