新感覚の展示が話題! 『チームラボボーダレス』がサウジアラビアにも誕生
ananweb / 2024年8月1日 19時0分
最新のテクノロジーを駆使した表現で人々を魅了しているアートコレクティブ・チームラボが、今年2月、麻布台ヒルズに「森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス」をオープンした。作品ごとの境界をなくし、連続する一つの世界を表現。70以上の作品群や、作品と鑑賞者が作用し合うという新感覚の展示が話題を呼び、国内外から多くの人が鑑賞に訪れている。こうしたコンセプトにたどり着いた経緯や、「ボーダー」というものの捉え方、さらに、サウジアラビアに誕生した「チームラボボーダレス ジッダ」のことまで、チームラボの工藤岳さんに聞いた。
作品ごとの境界線がないアートに体ごと没入!
チームラボ《マイクロコスモス‐ぷるんぷるんの光》©チームラボ
「ミュージアムの中に自然界を再現し、僕たちが心を動かされた世の中の美しいものや面白いものを他の人と共有したいという想いから、『チームラボボーダレス』は始まりました。境界線とは、人間がこの世界や物事を認識するために作り出した一つの方法だと思うんです。たとえば、『森』を理解しようとする時、“森とは、木がたくさんあるところだ。木とは、枝や葉があるものだ。枝や葉は、たくさんの細胞からできているものだ…”のように、線を引いて細かく分断しながら考えていくことってありませんか。サイエンス的なアプローチだと思いますが、それを続けていくと、最終的に素粒子レベルにまで到達することになり、結果的に『森』とは何かという本来の問いが、見えにくくなるのではないかとも思うんです。僕たちとしては、そうしたボーダーを取り払い、『森』を理解するためには森へ行って、森と自分を同期したり、一体化することが大事だと考えています。だからこそ、スクリーンや平面的なところに表現したものを鑑賞者が動かずに観る形にはしていません。ミュージアム全体を自由に動いて体験するという形を通じて、自然界や、そこで起こる現象を理解してもらえるような作品を目指しました」
作品同士が作用し合うところも、自然界の摂理を取り入れたもの。
「先ほど森の話をしましたが、森では蝶々が花を受粉させるなど、お互いに影響を与え合っていますよね。それと同様に僕たちの作品も、一つの場所にとどまることなく作用し合います。また、触ると花が散るなど鑑賞者も作品に作用でき、そこの境界線もありません。同じ空間にいる鑑賞者同士が作用することもありますよね。“ボーダレス”というものをコンセプトに掲げていますが、自然界では当たり前のこと。僕たちは、それを表現しているだけなのです」
ボーダレスな世界を表現する上で、デジタルはとても有効だそう。
「デジタルという素材を使うと、作品同士、また、作品と鑑賞者がお互いに作用し合うというシステムを作りやすいですよね。ただ、難しいところもあって。たとえば、作品の境界を越えて飛んでいく蝶々を動かした時に、全く別のところにいる何かが止まるといった、想像もしないバグが起きることがあるんです(笑)。しかも、ミュージアムという巨大な空間ですから、バグの原因を突き止めるのも一苦労ですね。ただ、ロマンティックに言いますと、この世界では、僕たちのちょっとした行動が何かに作用したり、影響を与えることがありますから。そうした連続性の上に世界は成り立っているし、僕はそれを美しいと思うので、バグも含めて、本質的には全肯定したいと思っています」
ジッダの人々の営みや自然の連続性を表現。
今年6月、サウジアラビアに誕生した「チームラボボーダレス ジッダ」も、注目を集めている。
「ジッダは港町で、古くから世界中のさまざまな人がやってくる、エントランスのような外に開かれた場所なんですね。そうした街の特性と、ボーダレスというコンセプトは、親和性が高いと思いました。オープンするためにジッダに行きましたが、街の人たちがみんな明るくて、優しくて。あまり言葉は通じなくても、一緒に作ってくださる方たちと“良いものを作ろう”と気持ちが通じ合うような場面もたくさんありました。本当に素敵な場所なので、作品を観ることをきっかけに、旅行してほしいです。建物は今作のために作られたものですが、天井がものすごく高く、強い没入感が味わえるのではないでしょうか。とても素敵な空間になっていると思います」
ここでしか観ることのできない、《Persistence of Life in the Sandfall》という作品がある。
「鑑賞者が花に触れると、花びらが散って枯れたり、落ちてくる砂に触れると砂が割れるという仕様になっています。チームラボは、ジッダという街やサウジアラビアという国で積み上げられてきた、人々の営みや自然などの連続性を美しいと思っていて、そうした概念を表現したものです。落下する砂や、その中で生まれ育ち、散っていく花を見ながら、月日の流れや歴史を感じてもらえたら。長い時間のサイクルを短く凝縮して表現できるところは、デジタルという素材を使うことの、ポジティブな一面だと思います。ありがたいことに、オープンしてから毎日、たくさんの人が観に来てくださっていて。子どもから大人まで、言葉で多くを説明せずとも直感的に体験してくださることは、すごく面白いなと思いますし、僕たちが作品を手がける上で気を配っている点でもあるので嬉しいですね」
チームラボ《中心も境界もない存在》
チームラボ《色相無限遠》
チームラボ《境界のない群蝶 ‐地形の記憶》
チームラボ《Black Waves:Crystal World》
チームラボ《追われるカラス追うカラスも追われるカラス:溶け出す光》
チームラボ《Persistence of Life in the Sandfall》
※サウジアラビアでのみ見られます
森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス
境界なく連続する一つの世界の中で、さまよい、探索し、発見することをコンセプトにした、地図のないミュージアム。見るタイミングによって作品が変化、何度も楽しめる。東京都港区麻布台1‐2‐4 麻布台ヒルズ ガーデンプラザB B1 チケットは公式サイトで購入を。オンラインでの事前予約制、当日券の販売は基本的に行っていない。©チームラボ
くどう・たかし 猪子寿之が代表を務めるアートコレクティブ・チームラボのメンバーで、広報などさまざまな役割を担う。大道芸人をしたり、スウェーデンで雑誌の編集に携わるなど、異色の経歴を持っている。
※『anan』2024年8月7日号より。取材、文・重信 綾
(by anan編集部)
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