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根本宗子「自分の作品のカラーを背負ってもらっていた」 長井短との強い信頼関係

ananweb / 2024年8月25日 18時30分

根本宗子「自分の作品のカラーを背負ってもらっていた」 長井短との強い信頼関係

演劇の書き手、演じ手として早くに出会った、根本宗子さんと長井 短さん。時として相方のように、何度も合流を繰り返す姿にはゆるやかに見えて、強い信頼関係が漂う。月刊「根本宗子」15周年記念公演『共闘者』にて今夏再び、その競演が実現します。

根本宗子×長井 短

写真左・根本宗子さん、右・長井 短さん



――お二人の出会いを教えてください。



根本:2013年のバー公演『ひかる君ママの復讐』を、長井さんが観に来てくれたんです。おしゃれで高身長の女の子が最前列の小さな椅子に座ってて、当時の劇団員と「イケすかないモデルか?」とか言ってたのを覚えてます(笑)。



長井:なんでそんなこと言われなくちゃいけないんだろう(笑)。当時私は19歳で、モデルをやりながら小劇場の舞台にも立っていたんです。でも、面白いことは大体男性がやっていて、女性はその賑やかしとか振りしかやらせてもらえなかったから、ある種苛立ちみたいなものを感じていて。もっと女性が笑いを取るようなお芝居がしたいって思っていたところで、ねもちゃん(根本)の舞台に出合いました。そうしたら女性たちが中心になって、めちゃくちゃ笑いを取ってて、しかも死ぬほど面白かった。そういうお芝居を作る人がついにいた! これが欲しかったの!! って感動でした。主宰の劇団“月刊「根本宗子」”のオーディションがあると知り、すぐに応募しました。



根本:でもオーディションは2日間だけなのに「仕事が入ったから日時を変えてください」って、バイトのシフトを変えてくれぐらいの感覚で連絡が来て。ルーズな人が私は苦手なので「あいつ!! 絶対落とす!」って決めてたんだけど(笑)、いざ会ってオーディションをしてみたらすごく面白かったんですよ。



長井:え~そうだったんだ(笑)。



根本:グループ審査で、長井さん一人がいることでグループ全体が活きたし、盛り上がって。この人は周りを巻き込んで芝居をする力がありそうだし、役を書いてみたい! と思いました。まだ19歳で芝居の形に囚われず、何にも染まっていない感じもよかったですね。



――仲を深めた経緯を教えてください。



根本:当時私は、女性がメインとなる脚本を今以上に書いていて、固定のメンツでやっていきたいという気持ちが強かったんです。それで次作も次作もと次々と長井さんに声をかけて。稽古して本番をやって、翌日からまた次の稽古をやってという勢いで活動していたので、プライベートで会う以前に、普通にほぼ毎日顔を合わせていたよね。



長井:どうせすぐ会うし、遊ぼうよ、みたいなことはなかったね。稽古が終わってごはん食べに行くぐらい。



根本:あとはお互いディズニーランドが好きという共通点があったから、ディズニーランドには2回行ったことがあるね。



長井:プライベートでわざわざ予定を合わせて、というのはその時だけかな。



根本:誌面で、二人きりでこうやって取材してもらうのも初めてですよ。



――お互いに他己紹介するならどんな感じですか。



根本:演劇をやっている人って最初はそれだけで食べていかれないんですが、長井さんはまずモデルとしてちゃんと活動をしていて、バイトをしないで演劇をやれている稀有な存在でした。しかもそのうちテレビドラマにも出るようになって、マルチなタレントにもなれた。こういうロールモデルはいないんじゃないかと。



長井:ねもちゃんは、めちゃくちゃ面白いお芝居を作る人。劇団の主宰ってちょっと堅かったり、気難しそうなイメージだけど、いい意味でとても普通で。話しやすくて優しい人です。



――出会った当時と今と、お互い変わったと思うところはありますか?



根本:最初の頃って、長井さんにLINEしても3日ぐらい返信がなくて、全然連絡取れないのがイヤだったけど、それもなくなったね(笑)。



長井:見なかったもんな…携帯。でも大人になったのかな。お互いに落ち着いたよね。昔は二人とももっと尖ってたから、喋るスピードも速かったけど、今はちんたら話すようになったし。



根本:当時は新作に追われて、前回よりも面白いものを書かなくちゃって思ってたから、たぶん私のほうが尖ってたと思う。本番がうまくいかないとあからさまに不機嫌を顔に出していたし。



長井:でも真面目にやってれば機嫌もよくなるはず、頑張ろ、って思ってたよ。とくに気にしなかったから、長く続いたのかもしれないね。



――演劇が育んだ関係性ともいえますね。根本さんは、二人が長く続いている理由はどんなことだと思いますか。



根本:私はお芝居の上手い下手よりも、“この人に役を書きたいかどうか”が大切で、そこの相性が長井さんとはすごくいいんだと思います。劇団員たちが30歳前後になって芝居を続けるか悩んだり、お子さんが生まれて休む人もいる中、途中から劇団員を持たなくなって、作品ごとにキャスティングしていくようになって。その中でも毎回声をかけていたってことはすごく自分の作品のカラーを背負ってもらっていたと思います。



長井:背が高くてモデルもやっていたから、男性作家から書かれる役は、もっと静かな女性が多かったんです。でも、ねもちゃんがくれる役は爆発力があって、笑いも取れる。なぜ私がやりたいことをわかるんだろう、と不思議でした。



根本:長井さんに一番似合う変なことを考えるのは楽しいです。



長井:私も無理なく演じられるし、気が合うってことなのかもしれないけど、特殊な関係性だと思う。



根本:語弊を恐れず言いますが長井さんの役は、私が一番面白く、上手に書けると思っています。



長井:嬉しい。でも私も、ねもちゃんが私を一番面白くしてくれると思ってる。だから次の役も楽しみ!



――新作『共闘者』は、前田敦子さん、Aマッソの加納さんとむらきゃみさん、長井さん、今年だけ俳優復帰をしている根本さんの5人だけの舞台ですね。



根本:私が今一番やりたいことを詰め込んでいます。そうそう、AマッソのYouTubeチャンネルを見て思ったんだけど、何をやらせたらむらきゃみさんが面白くなるかを常に考えている加納さんと、私と長井さんの関係性ってすごく似てるよね。私はもともと自分にあまり興味がなくて、人に役を書いているほうが楽しいんですが、書いていて飽きがこないのが長井さん。



長井:ねもちゃんが書いてくれた役でしっかり劇をやればすごく面白いから、どこかに遊びに行くとか、美味しいもの食べに行きたいとかは思わないんです。一緒に劇をやれることが何より嬉しくて、そういうシンプルさが好き。



根本:そんな適切な距離感だから、10年も付き合えていると思う。そして私は、誰か1人相方を連れてきてと言われたら、長井さんを選びます。



――お二人でラジオのパーソナリティをやられていたこともありましたが、今後、演劇以外でやりたいことは?



長井:ディズニーシーにできた“ファンタジースプリングス”には行きたい。あと、地方のラジオ番組もいいな。



根本:タクシーの中のモニターを使って何かやるのもいいね(笑)。



長井:それいい。タクシー降りたくない、って気持ちにさせるような番組!



根本:面白そう!

ねもと・しゅうこ 1989年10月16日生まれ、東京都出身。劇作家、演出家、脚本家、俳優として活躍し、月刊「根本宗子」を主宰。ドラマや映画の脚本なども手がける。2015年上演『夏果て幸せの果て』にて第60回岸田國士戯曲賞最終候補に選出。

ながい・みじか 1993年9月27日生まれ、東京都出身。10代の頃からモデル業と並行して舞台に出演し“演劇モデル”として活躍。またドラマや映画にも多数出演。最新著書『ほどける骨折り球子』が発売中。出演映画『若き見知らぬ者たち』は10月11日公開。

Tシャツ¥39,600 シャツ¥79,200(共にdoublet/ENKEL TEL:03・6812・9897) その他はスタイリスト私物

月刊「根本宗子」第19号『共闘者』 高校時代の3年間のみを大親友として過ごした女性たちの、空白の12年間を描く。8月31日~9月8日にTOKYO FMホールにて上演。脚本/根本宗子、加納愛子(Aマッソ) 演出/根本宗子

※『anan』2024年8月28日号より。写真・伊藤香織(Y’s C) スタイリスト・tanakadaisuke(根本さん) TAKASHI(長井さん) ヘア&メイク・小夏(根本さん) 小園ゆかり(長井さん) 取材、文・若山あや

(by anan編集部)

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