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注目のTVプロデューサー「女バディというのはいくらでも可能性があるモチーフかも」

ananweb / 2024年8月25日 19時30分

注目のTVプロデューサー「女バディというのはいくらでも可能性があるモチーフかも」

なぜその女二人がバディを組むことに? その背景にはどんなドラマが…? あれやこれやと想像が膨らむ! 女性の今と向き合いものづくりをする注目のクリエイター、テレビ東京プロデューサー・工藤里紗さんに、女バディものへの思いを聞きました。

この取材を受けるにあたり、バディという言葉の語源を少しネットで調べてみたと言う工藤里紗さん。諸説ある中で、語源はブラザーであり、もともと男性的要素を含む言葉である、ということを知ったそう。そう言われると、確かにバディものといわれるエンタメの多くが男性2人、もしくは男女の2人組で作られているのもわからなくはない。

「女バディもののコンテンツはないわけではない。でも例えば、一緒に逃げたり、罪を犯したバディの片割れを守るなど、弱いサイド、被害者サイドから強くなる物語が多い印象があります。ピンチ脱出型というか。一方男性のバディものは、事件を解決したり、社会を変えるべく巨悪に挑んだり、問題解決チャレンジ型のお仕事ものが多い気がします」

そんな中で工藤さんが見たい、作りたいと思うのは、“女同士、問題を解決してのし上がっていこうぜ!”という物語。

「そういった物語はすでにありますが、ほとんどが男性が主人公、あるいは男性のバディもの。それの女性バージョンこそ、私が作りたいエンタメです。巨悪と対峙したり、それこそ国を動かすような女バディものが一番の理想。それに近いのが、韓国ドラマの『クイーンメーカー』。自分を雇っていた大企業を倒すために、政治の世界に飛び込んだ女性が、人権派の女性弁護士をソウル市長にするべく暗躍する物語です。中年女性2人のバディもので、昔から私が好きな、裏と表の両方の力で世の中を変えていく、という要素もある。しかもバディが2人ともミドルエイジの女性というところも、新鮮でした」

長年テレビ業界でものづくりをしている工藤さんは、見慣れない設定であったり、世界観といったものは、視聴者になかなか受け入れられないことは重々承知。

「でも一方で、新鮮なもの、違和感のあるもの、知らない世界を見たいという欲もあるはずなんです。そもそも、それがエンタメのはず。日本ではこれまで女性のバディののし上がり系エンタメは、それほど数は作られていない。そうなると、お手本とするキャラクターや物語構造がありませんから、逆にいくらでもチャレンジができる。ある意味、女バディというのはいくらでも可能性があるモチーフかもしれません」

また、工藤さんが理想とする“大きな敵に挑む物語”の場合、女バディは中年であることは必須だといいます。

「例えば主人公2人が20代前半の新入社員世代や、あるいは30歳前後というのはエンタメでよく見る設定。でも私はもっと大きなものと戦わせたいし、なんなら二人でどちらかを総理大臣にすることを目指してほしい(笑)。なのでやはりミドルエイジの女性がベスト。総理大臣候補を支えるのは、マスコミの表裏の両面で暗躍する女性とかでもおもしろいかもしれません。きっと今、自分が働く会社や、それを取り巻く社会、ひいては日本という国に対して、“このままでいいのか…”と思っている人って、たくさんいると思います。もちろんドラマなのでフィクションではありますが、女性リーダーと女性フィクサーという見たことがない組み合わせだからこそ、思い切った物語が作れるのでは」

特に女性バディというと、どちらかというと互いの弱さをカバーしながら、2人で1つとして進んでいく、という物語が多かった、と工藤さん。

「でも私は、カバーし合う関係よりも、世の中を変える力がある、個性と強みが異なるバイタリティのある女性2人が、2乗倍的に、どんどん力を発揮していく、そんな関係がいい。そのほうがエンパワーされますし、そういうのし上がりストーリーを見てみたい。それが若い世代の女性の背中を押すことにも、繋がる気がします」

工藤さんのおすすめ

『クイーンメーカー』
フィクサーと弁護士がソウル市長を目指す。

大企業・ウンソングループで働くドヒは、フィクサーとして会社と一族のために暗躍をしてきた。しかしレイプ事件のもみ消しを拒否し、クビに。会社を倒すため、人権派弁護士のギョンスクを市長にすべく、スキルを駆使して選挙戦に挑む。「最初は相反している二人が、同じ目標に向かいどんどんタッグが強くなっていくのが、いかにもバディもので見ごたえがあります」(工藤さん)
Netflixオリジナルシリーズ「クイーンメーカー」独占配信中

『ナイアド~その決意は海を越える~』
忘れられない夢に、親友と二人でトライ。

マラソンスイマーを引退した60歳のダイアナは、フロリダ海峡を泳いで渡る挑戦が頭から離れなかった。最難関といわれるそこを泳ぎ切るには、想像を絶する困難がある。しかしダイアナは、親友でありコーチであるボニーと4年に及ぶ挑戦をすることに。実話をもとにした物語。「私自身がものすごく勇気をもらい、同じチームのスタッフにもおすすめした一作」(工藤さん)
Netflix映画「ナイアド~その決意は海を越える~」独占配信中

『ルックバック』
性格が違う二人が、同じ夢に向かって…。

小学校の学年新聞に4コマ漫画を連載し、称賛されていた藤野はある日、先生から不登校の京本の4コマを載せたいと告げられる。正反対の性格でも、共にマンガへの熱い思いを持つ少女二人は友達に。二人はひたむきに作品を作り上げていくのだが…。「タイプが異なる女性が同じ仕事で高みを目指すという意味では、これも女性バディものなのでは、と思っています」(工藤さん)
全国劇場にて公開中 ©藤本タツキ/集英社 ©2024「ルックバック」製作委員会

くどう・りさ アメリカ出身。テレビ東京制作局クリエイティブ開発チーム部長、チーフプロデューサー。現在手掛ける番組は『シナぷしゅ』『種から植えるTV』など。著書に『生理CAMP みんなで聞く・知る・語る!』(集英社)が。

※『anan』2024年8月28日号より。イラスト・加藤羽入

(by anan編集部)

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