竹内まりや「時代が変わっても、世代が違っても、人の心に普遍的にある心境を歌詞にしたい」
ananweb / 2024年9月29日 13時0分
流れてくれば知っている、思わず口ずさみたくなる。ドラマティックで、憧れて、でも同時にとても共感する。竹内まりやさんの生み出してきた名曲の数々は気づけば日常にあって、いつでも寄り添ってくれます。昨今改めて、歌詞をはじめとした言葉の重要性を実感しているというまりやさん。どのようなことを考え、そして曲はどう生まれるのかお伺いしました。
曲というのは、メロディ、歌詞、アレンジ、そしてボーカルという要素でできています。でもファンのみなさんからのファンレターを読むと、“このフレーズに励まされた”とか、“この言葉が胸に刺さった”など、歌詞に関する感想が本当に多く、またその傾向は、年々強くなっている。なので私自身、聴いてくださる方々に言葉をしっかり届けなければ、という思いが増しているのも事実です。
私の曲は、強い音楽性や主義主張があるわけではないし、極端に流行の音を入れるわけでもない。特にアレンジに関しては、20年経っても同じように聴ける音像が、私と(山下)達郎の目指すところ。歌詞も同じようなところがあって、時代が変わっても、世代が違っても、人の心に普遍的にある心境、そういうものを歌詞にしたいと思っています。だからこそ、難しくない、誰でも知っている簡単な言葉を使うんだと思います。
曲を作るときは、まずリズムを考え、次にコード展開を決め、そこにメロディをつけながら曲の構造を決め、全体が見えたら、最後に歌詞を書く。フォークっぽい曲にしたいなと思ったら、人生を描くような歌詞にしようとか、ロッカバラードだったら恋心を歌おうかとか、曲調に合わせて歌詞の世界を考えるのがすごく楽しい。ちょっと言葉遊びっぽいところがありますね。8割程度歌詞が埋まったら、足りないところにどんな言葉を入れるかを選ぶんですが、そこからはまさに言葉のジグソーパズル。言葉をはめて歌って、取り換えて歌って…の面白さと、最後のピースがピッタリはまった瞬間に感じる“できた!”という達成感。それが欲しくて曲を書いているようなところもありますね。
言葉との距離感1
私はとにかく、平易な言葉で書きたい。誰が聴いても同じ感覚で受け止められる言葉で。
難しい言葉や、リスナーに説明が必要な言葉で歌うのは、私の役割ではないと思っています。19歳の人が聴いても85歳の人が聴いても、同じように捉えてもらえるシンプルな言葉の中に、深みを探したいし、そういう日本語が、私には似合うのでは、と思います。
言葉との距離感2
素敵な言葉はどこに行けば見つかる、というよりも、ふとやってくるもので、不意に出合うもの。
映画を観ているときにハッとするフレーズを聞いたり、誰かとのおしゃべりで相手の言葉に深さを感じたり。素敵な言葉はありふれた日常の中にあって、本当にふとした瞬間に出合うんです。言葉に対する興味のアンテナを立てていることが、出合う秘訣かも。
言葉との距離感3
SNSの反響は目安にはなるけれど、でもそれがすべてではない。
個人的にはSNSはやっていないので、SNSの反応についてはスタッフから聞くことが多いです。確かに、そこに書かれていることは一つの現実だとは思いますが、書かない人の声もある。なので私はSNSに書かれる中傷などからは、常に距離を置いています。
言葉との距離感4
洪水のように言葉が溢れるそんな時代だからこそ、“自分にとっての大事な言葉”を見つけることが大切なのかも。
昔に比べて現代は飛び交う言葉の量がとにかく多い。その中から大事な言葉を選び取るのはとても難しいこと。ちなみに私は、職人さんがぼそっと言った言葉に感銘を受けたりしますが、若い人はいい言葉を見つける選択能力が、私たちの世代より高い気がします。
言葉との距離感5
100個のデジタルの賛辞より、1通のお手紙。だからときどき返事も書きます。
文字から滲み出る愛を感じられるので、私はファンレターをいただくのがとても好き。ファンレターに書かれた曲の感想を読むのはとても嬉しいし、創作のエネルギーにもなる。お返事を書いたらまたお手紙をいただくことも。とても幸せな言葉のやりとりです。
『Precious Days』 全18曲に加え、配信のみだったプレミアライブなどを収録したライブDVD/Blu‐rayがセットのデラックス盤も。このほか完全生産限定の2枚組アナログ盤、カセットテープの全5形態。10月23日発売。【通常盤(CD)】¥3,410 【デラックス盤(CD+DVD/BD)】¥8,800(ワーナーミュージック・ジャパン)
たけうち・まりや 1955年生まれ、島根県出身。シンガーソングライター、作詞家、作曲家。’78年にデビュー。1日1回「まりやちゃんおみくじ」も楽しめる45周年記念のサイトもオープン中。
※『anan』2024年10月2日号より。写真・伊藤彰紀(aosora) スタイリスト・斎藤伸子 ヘア・松浦美穂(TWIGGY.) メイク・COCO(関川事務所)
(by anan編集部)
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