汗をかきにくい・かけない病気があるって知ってる?「ファブリー病」について専門家に聞いてみた
ANGIE / 2022年9月9日 11時0分
暑いと私たちは汗をかくことで、身体の熱が上がり過ぎないように体温調節をします。
しかし、汗をかきにくい・かけない「無汗症」という病気の人は、汗での体温調節が難しく、暑い季節は体調を崩したり熱中症になったりというリスクが高くなります。
無汗症の中でも特に診断がつきにくい「ファブリー病」について、埼玉医科大学医学部脳神経内科教授、中里良彦先生にお話をうかがいました。
ファブリー病は遺伝性・先天性の病気で診断がつきにくい
ファブリー病とは厚生労働省の指定難病であるライソゾーム病の一種です。
ライソゾームはヒトの細胞の中で不要な物質を分解する役割を担い、分解に必要な酵素が多数存在しています。
ファブリー病は、そのうちの一部の酵素の働きが低下しているために、不要な物質が身体の組織に貯まってさまざまな症状を引き起こす遺伝性、先天性の病気です。
症状は年齢によっても異なり、幼児期・学童期には「汗をかきにくい・汗をかけない」といった発汗障害や手足の激しい痛みなどの症状があります。
生まれつき“汗をかけない・かきにくい”病気はファブリー病以外にもありますが、ファブリー病は特に診断が難しく、子ども特有の症状は「身体が弱い」「運動が苦手」など“個人の体質”として見過ごされがちです。
そのため、ファブリー病の子どもは長い間、原因不明の倦怠感や高熱だけでなく、周囲の無理解にも苦しみながら生活することが多いのだそうです。
ファブリー病の子どもの「サイン」を教えて!
ファブリー病の子どもの特徴的な症状として「汗をかきにくい・汗をかけない」といった発汗障害の他に、暑さで手足が激しく痛むため、熱いお風呂が苦手でお風呂に入るのをいやがることもあります。
また、皮膚に赤い発疹があらわれることもあるそう。
けれど、自分が子どものこうした「サイン」を見逃していないか不安になりますよね。
そこで、発汗機能障害に詳しい埼玉医科大学医学部脳神経内科教授、中里良彦先生(以下、中里先生)に、親が気づきにくい子どものサインについてお聞きしました。
――「汗をかけない・かきにくい」という状態に気づくにはどうすればよいですか?
中里先生:
お子さんの行動を注意深く見ることが大事です。お子さんがお風呂に入りたがらない、運動をいやがる、靴下を履きたがらないといった行動は、ファブリー病のサインかもしれません。
汗をかけないので、高温が続く夏の暑い時期は熱中症の危険もあります。
また、汗をかけずに体温が上がることで疼痛を誘発する恐れがありますので、お子さんに手足の痛みがないか注意しましょう。
――暑いときや運動時などに疼痛症状がでたときはどうすればよいですか?
中里先生:
汗のかわりに身体を冷やしてクーリングしてあげる必要があります。
しかし冷やし過ぎると逆に疼痛を誘発する恐れもあるので、注意しましょう。
クーリングをするときは、首やわきの下など発熱時に氷嚢を乗せる部分を冷やすと頭に繋がる血管が冷えて効果的です。
――9月になると涼しい日と残暑を繰り返しますが、そういう気候のときにも注意は必要ですか?
中里先生:
夏休み中はクーラーの効いた部屋で過ごすことができますが、学校が始まると残暑の中で通学しなくてはならず、無汗症の子どもにはうつ熱のリスクがあると思います。
またファブリー病の患者さんは、気候の変化や精神的要因も疼痛の誘因になることがあります。夏から秋口への気温の変化の大きい時期も注意が必要です。
大人になってから発症する「遅発型」のファブリー病もあり、症状もさまざま
ファブリー病は遺伝性の病気で、遺伝子の変異が親から子へ受け継がれる可能性がありますが、兄弟姉妹でもファブリー病を発症する子、遺伝子に変異はあるけれど症状がでない子、ファブリー病ではない子と、さまざまです。
また、性別によっても発症するタイミングや症状が異なり、さらに個人差もあります。成人後は腎障害や心障害を患うリスクもあるため、早期診断・早期治療が重要です。
詳しくは記事下部、ファブリー病について解説した「ファブリーツリー」のウェブサイトをご覧ください。
子どもの様子に目を配り、QOLを下げないようサポートを
子どもは自分の状態を言葉でうまく説明できません。親が的確に察知するのも難しいという問題があります。
けれど、子どもの不調を「この子は運動が嫌い」「暑いのが嫌い」という好き嫌いや特性で片づけてしまうと、子どもはつらい思いをしたまま長期間過ごさなくてはいけない恐れがあります。
子どもの様子に目を配り、不安や疑問があればかかりつけの医師に相談して、子どもがQOLを保って生活できるようにしたいですね。
参考:ファブリーツリー
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