アフリカの「女性器切除」という慣習。過酷な人生をポジティブに生きる秘訣とは?
ANGIE / 2015年10月14日 23時30分
識字率がほぼ100%の日本。しかし発展途上国で暮らす人たちの中には、自由に読み書きできない人もいます。特にアフリカは識字率が低く、ソマリアではおよそ35%だそうです。
今回ご紹介するのは、ソマリア生まれのスーパーモデル「ワリス・ディリー」の衝撃的な人生を綴った自伝小説『砂漠の女ディリー』です。
ワリスも10代後半までは読み書きができませんでしたが、持ち前のバイタリティーで自ら道を切り開いていく姿に、感動せずにはいられません。
「強制結婚」を逃れた遊牧民の少女
世界で最も危険な国のひとつと言われている、部族間の紛争が絶えないソマリア。国土の大半が砂漠の中、主人公のワリスは遊牧民の部族として生を授かりました。
水や食料を求めて家畜とともに砂漠を移動する遊牧民の生活は、想像を絶するほど過酷なもの。大人から子どもまで関係なく働くため、ワリスも5歳になったときには、すでに家畜の群れをひとりで率いていたそう。砂漠という厳しい環境で育ったワリスですが、日々の仕事を終えて家族で過ごす夜の時間は、とても幸せなひとときだったようです。
ところがある日、ワリスはわずか13歳で強制的に結婚させられそうになります。その相手というのが、自分の父よりもずっと年上の老人。結婚から逃れるためにソマリアの首都モガディシュへ向けて、砂漠の中を走りだすワリスですが……。
無事、結婚を逃れたワリスは数奇な運命を経て、まるで導かれるようにロンドン行きの切符を手にします。
メイドとして四年ほど休む間もなく働く中で、モデルという職業への好奇心が目覚め始めるワリス。偽装パスポートに偽装結婚など、法律スレスレのところで奮闘しながら、彼女が自らの力で輝かしい運命を切り開いていくシーンは圧巻の一言です。
幼いころ経験した「女性器切除」
ソマリアを始めアフリカの国々では、女性の最もプライベートな部分を一部切除して縫合する「女性器切除」の慣習が未だに根強く残っています。この四千年以上前からつづく慣習により、毎年多くの女性たちが命を落としているそうです。
ワリス自身も5歳のときに女性器切除を経験しており、のちの人生にさまざまな弊害をもたらしました。彼女の場合は縫合がきつ過ぎたために、排尿がスムーズにいかず、生理中には耐えきれない痛みを感じていたそうです。
スーパーモデル・女優として活躍していたワリスは、2002年に国連特別大使として女性器切除の慣習撲滅に向けて活動を開始。現在は、自らが立ち上げたソマリア女性やソマリア社会の手助けをする財団を通じて、支援活動を進めています。
それにしても、なぜ女性器を切除しないといけないのでしょう? 「儀式なしには一人前の女性と認められない」「切除しない女性は不浄とみなされる」というのが建前のようですが、男性たちのエゴと女性の性に対する無知も大きな要因のよう。
同じ女性として、みなさんはどう考えますか?
生きることへの貪欲さ
Photo byデザート・フラワー
「貪欲に生きることで、人生はポジティブな方向に進むのではないか」ということを、ワリスの生き方を通して強く感じました。
今回はワリスの過酷な人生に焦点を当てましたが、一度読み始めると軽快で快活な語りに引き込まれるストーリー展開も魅力の一冊です。野生動物や砂漠での時間の流れが、とても美しく描かれていますよ。
本書は世界的なミリオンセラーになった小説で、映画化もされるなど大反響を呼びました。英語版タイトル『デザート・フラワー』はDVDにもなっていますので、興味を持った方は手にとってみてはいかがでしょうか。
砂漠の女ディリー/ワリス・ディリー ・著、 武者圭子・訳、草思社文庫・刊
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