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【逃げ上手の若君】“不気味な目玉男”は敵か、それとも師か―? 北条時行と小笠原貞宗の奇妙で深い関係

アニメ!アニメ! / 2024年8月24日 18時30分

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    アニメやマンガ作品において、キャラクター人気や話題は、主人公サイドやヒーローに偏りがち。でも、「光」が明るく輝いて見えるのは「影」の存在があってこそ。
    敵キャラにスポットを当てる「敵キャラ列伝 ~彼らの美学はどこにある?」第49弾は、『アンパンマン』の小笠原貞宗の魅力に迫ります。

物語の主人公は成長する。良き仲間や良き師に巡り合って成長していく。しかし、時には敵から学ぶことで大きく成長することもある。敵であるのに、同時に師でもある。そんな関係が描かれる作品は面白い。


『逃げ上手の若君』は、そんな敵から学ぶ主人公が描かれる作品でもある。その学びの対象となる敵役は、信濃国守護・小笠原貞宗だ。


本作序盤に登場し、その後幾度も時行たちの前に立ちはだかるこの武将は、ユーモラスな描写の多さでネタっぽい扱われ方もするが、その実、時行への影響の大きさは絶大であり、後見人の諏訪頼重に匹敵する「師」としても重要なキャラクターだ。



■第一印象は最悪なのに、なぜか憎めない貞宗


小笠原貞宗は弓の名手だ。これは史実でも同様で、弓の上手さから、視力に優れたキャラクターとして本作では描写される。異常な視力の持ち主であることをカリカチュアするために、しょっちゅう目玉が飛び出すだけでなく、目玉から声を発することができるというような、コミカルな描かれ方をする。


ぎょろりとした目玉とねちっこい性格で、気味が悪く、さらに「耳の裂けた鹿がいると縁起がいい」と言って巫女の耳を弓で射るなど、残虐な一面を見せる貞宗の第一印象はかなり最悪に近いものだ。時行いわく、「目玉一杯に性格の悪さが詰まった男」である。


にもかかわらず、貞宗はどこか憎めないキャラクターだ。それは前述した目玉の描写のようなコミカルのおかげもあるし、北条一族の残党を探しているのに、目の前に時行を出されても気づかないという、間の抜けた面や、同じ信濃国の武将・市河助房との奇妙な関係など、残虐さを緩和するような描写が多いせいもあるだろう。あるいは、子ども相手にムキになる大人げなさが、裏表のない性格と見える側面もあるかもしれない。


しかし、貞宗のキャラクター性はエピソードを重ねるたびに、深みを増していく。最初は不気味な“目玉男”だったのが、コミカルな敵となり、深く武将としての力量と誠実さを発揮していき、弓の名手という特徴に合わせて、冷静沈着な状況判断と人としての矜持を見せていくようになるのだ。


物語の序盤に登場する敵というのは、結構おいしいポジションであると思う。単なる咬ませ犬で終わるやつもいるが、その後主人公と共闘するようになったり、仲間にならずとも腐れ縁のようになっていくキャラクターもいる(『ONE PIECE』のバギーなど)。小笠原貞宗は、時行にとってそんな腐れ縁のような奇妙なつながりの強さを感じさせるキャラクターとなっていくのだ。



■時行が楽しそうに逃げるのは、貞宗に追われているとき?


時行と貞宗の邂逅として序盤で描かれる最初の決闘は、犬追物だった。北条一門を探し出そうとしている貞宗に、頼重があえて時行を挑ませた理由は、貞宗の弓を学ばせるためだった。時行の逃げ上手を活かして戦うには弓を学ぶべきという判断からで、諏訪の国で一番の弓の名手が貞宗だったからだが、敵である貞宗に弟子入りするわけにもいかないので、実践形式で技を盗める機会を作ったのだ。


時行と貞宗の関係性は、この最初の邂逅から一貫して、「教える側」と「教わる側」である。この後も時行は貞宗からさまざまなことを学んでいくことになる。


例えば、貞宗に呼びつけられて1対1で言葉を交わすことになったとき、敵と相まみえることで自分を大きく見せようとして無礼な態度をとった時行を、貞宗は「生命を奪う敵であっても敬意を持って接しろ」と叱りつける。貞宗は、後世「武士の規範」を作ったと評されていると原作マンガでは言及されているが、武人としての器の大きさを垣間見せている。



また、時行にとっては貞宗は、何より「楽しみ」を与えてくれる存在だった。「この信濃で一番楽しそうに逃げるのは… いつもあの貞宗に追われているときだった」(原作71話)のだ。


時行と貞宗は、その立場の違いから対立する関係にはあるが、どこかお互いを認め合うようになっていく。敵でありながら師弟のような、そんな不思議な関係になっていくのだ。時行も多くのことを学ばせてもらった貞宗に対して戦場でも礼を尽くすようになる。


時行が貞宗に出会わなければ、その後の歴史も違ったものになっていたのかもしれない。この作品では、それくらい重要な敵として貞宗が描かれている。逃げ上手の「師」であり好敵手、ただの目玉のネタキャラではない深みを持った、味わい深い敵役だ。




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