【独占インタビュー】サイバーエージェントが新アニメスタジオを設立!専務執行役員が語る、アニメ&IP戦略と展望
アニメ!アニメ! / 2025年1月10日 10時15分
サイバーエージェントが新たなアニメ制作スタジオとして、「CA Soa(シーエーソアー)」を設立したことを発表。
代表取締役社長には数々の有名アニメのプロデューサーを務めた小川正和氏が就任した。グループ会社のCygamesPicturesに加え、制作体制が増強されることでアニメ制作を増やしていく方針だ。
サイバーエージェントは2017年にアニメIPへ投資を行うファンド「CA-Cygames アニメファンド」をCygamesと共同で組成し、アニメ製作事業へ本格的に参入した。2024年2月にはアニメ&IP事業本部を設立し、新たなIP創出と、さらなるアニメ作品の企画に注力している。
関連事業のM&Aも積極的に行い、事業拡大を続けるサイバーエージェント。同社の専務執行役員でIP/コンテンツ事業を統括する山内隆裕氏に今後の展望について話を聞いた。
[取材=森元行、文=marinda、撮影=志田彩香]
──今回、アニメ制作スタジオの「CA Soa」の設立が発表されましたが、サイバーエージェントグループではこれまでにもアニメ事業において様々な取り組みをされています。改めて、山内さんがこれまで手がけてきた内容を教えてください。
私がアニメ事業を立ち上げたのは、「ABEMA」の広告と課金以外のビジネスモデルを探そうということで、2017年に「ABEMA」の放送外収益の担当役員になったことがきっかけです。
それまでに、eスポーツイベントを運営する「RAGE(レイジ)」などを通してイベントや物販の知見がありましたので、それらを「ABEMA」で始めるのに加えて、ほかにどのようなビジネスができるのかを検討し始めました。
そこで出てきたのが、アニメ制作や競輪・オートレースのインターネット投票サービスの「WINTICKET(ウィンチケット )」などのアイデアです。これがきっかけで、アニメ事業に参入し始めた形になります。
ABEMAではそれまでにもアニメの放送などはしていましたが、いきなりアニメを制作することは難しいので、最初はファンドという形で少額の出資をして、色々な関係者の方に挨拶をし、名前を知っていただくところからはじまりました。
そこからは広告やイベントなどを私たちが担当させていただくかたちで徐々に制作会社の方々や業界キーパーソンの皆様との関係を深めていき、2、3年程前から少しずつアニメメーカーとして主幹事の案件を増やしていって今に至ります。
──2025年のアニメ作品としては、CygamesPicturesとの共同企画「アポカリプスホテル」や「光が死んだ夏」、映画『劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク』、「ボールパークでつかまえて!」を主幹事として準備されていますよね。
そうですね、予定しています。サイバーエージェントとしては2025年1月末までの放映リリース分で23作品ほどのアニメタイトルに携わらせていただいておりますが、今後も様々な作品を予定しています。
「CA Soa」ではオリジナルと原作の両刀を目指す
──今回発表された「CA Soa」について詳しく教えてください。同スタジオでは内製でオリジナルアニメを作ることを強化していくのですか。
経営は社長の小川さんにお任せしているのですが、小川さんと話していくうちに原作があるアニメとオリジナルアニメの両刀でやりたいと今のところは考えています。原作をクリエイティブの力で最大化させて、まずは業界内で頭角を現すという意味でも有力な原作とお付き合いする・可能性を最大化させて世に押し出すということと、開発に時間がかかるオリジナル作品を発表していくことをバランスよくやりたいと聞いています。
──「CA Soa」の設立をきっかけに、制作本数も内製のものが増えていくのでしょうか。
そこのバランスについては全く考えていません。私たちがお付き合いさせていただいている制作会社はすでにいくつかありますが、これからもお付き合いは増えていきます。事業計画からすると私たちが制作したい作品数は年々増えていく傾向にあるし、すべてはタイミングみたいなところも多分にあるので、内製のスタジオだけではとても追いつかないはずです。
CAグループのIP・コンテンツ事業の強みは「テクノロジー」と「文化」と「マーケティング」
──約10年にわたりアニメ業界に携わっている山内さんは、これからサイバーエージェントグループが実行しようとしているIP・コンテンツ戦略ではどのようなことを見据えているのでしょうか。
良い作品を作り、それを世の中に広げていくための土台は少しずつ整ってきたと思っています。サイバーエージェントグループには制作では、今回「CA Soa」を設立したうえ、CygamesPicturesもありますし、イベントは興行本部やCyberE、RAGE(レイジ)のチーム、舞台はネルケプランニング、実写はBABEL LABEL、それに加えてニトロプラスというIPの源流を作る会社もグループに加わってくれたので、ABEMAも含めて“一つのIPを最大化させる”という意味では、この5年で魅力的なプラットフォームをサイバーエージェントらしく作れてきたと思っているんです。
グローバル化の流れも大きいのですが、これから先でいうと、「テクノロジー」と「文化」と「マーケティング」の三つが強みになってくると思います。
──一つ目の「テクノロジー」は、DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めていくという意味合いでしょうか。
私たちが一貫して重視しているのは「業界に貢献できるものを作る」ということなので、これまでやってきたことをもっと便利にし、例えば、技術力を使って生産性をあげるようなアニメ業界のSaaSのようなものがあってもいいと思っています。テクノロジーの力でコストを下げたり、長時間労働を改善して報酬を上げることができたりすれば業界に寄与できるかもしれないと思っています。
なので、アニメ業界、クリエイターに還元していくという意味でテクノロジーを使っていきたいなと思っています。我々のグループでは約8,000人程度の従業員がいて、その約3割はエンジニアであり、長年広告やエンタメ業界のアプリ開発や研究発表をしているので、事情に精通している技術者も少なくありません。
──二つ目の「文化」は具体的にどういったことなのでしょうか。
常日頃から「クリエイターファースト」というのを口酸っぱく言っています。というのも、IPはクリエイターの情熱から生まれるものだと思っているし、原作があるものはマンガ家の先生や編集の方々が人生をかけて作っているので、しっかり寄り添っていきたいと思っています。
例えば私は、サイバーエージェントの役員としてネルケプランニングやBABEL LABEL、ニトロプラスといった会社を担当していますが、基本は側面支援に徹していて、彼らがやりやすいように環境を整えることを最優先にしています。
おそらく一般的な買収のイメージとは違っていて、自由にやってもらっているんです。得意な分野に集中していただいて、逆に我々のほうが知見があったり、明るい分野では迅速に援護できるように体制を整えていたり、グループ入りする前だと、とり切れないリスクや先行投資であっても相談しながらやると決めたら一緒に挑戦したり。個でやる限界を突破するような働きかけをしているつもりです。
サイバーエージェントはテクノロジーや経営力、バックオフィスに強みがあり、人材が豊富なので、私たちが環境を整えることやビジネス面で寄り添っていくことで得意分野に集中していただいて成功する可能性を上げることができると思っています。
──三つ目の「マーケティング」は具体的にどういったことなのでしょうか。
我々のバックボーンにあるネット広告に精通している人材やフレームワークと、ABEMAではアニメがよく見られているジャンルの一つなので、原作やアニメを国内外のターゲットにもれなく届けたいと考えています。ABEMAの番組連動だったり、提携しているメディアやプラットフォーム、インフルエンサーとのコラボレーションなど当社の知見を生かしてやれることはたくさんありそうだと考えています。
ひとつひとつの作品の魅力を最大化させるためにCAの強みを活かす
──アニメ業界は製作委員会方式などそのビジネスモデルが複雑ですが、その点について感じることはありますか。
私たちも製作委員会を組んだり、そのメンバーに入れていただいていたりしていましたが、今後は役務によって分けることが多くなっていくのかなと思っています。どの会社に任せれば作品が最大化するのかを考えなければ、せっかく作っても売れない・知ってもらえないということになってしまうのかな……と感じます。
──ここまでお話いただいたように、サイバーエージェントではアニメ事業に深く参入していっていますが、業界の方からの反応に変化はありますか。
最初の反応としては、ABEMAはアニメを放送している印象はあっても、アニメ制作の印象はほとんどなかったかと思います。
そこからいきなりアニメを作りましょうという話ではなく、サイバーエージェントがアニメ業界に新規参入する意味を自分たちでも探していき、少しずつ関係性を深めてきたことで、業界内でも徐々に信用していただけるようになりました。ステップを急ぎ過ぎなかったのが今に繋がっているのだと思います。
──今後サイバーエージェントグループとしてどのようなIPを作っていきたいですか。
喫緊のものだとやはり「ウマ娘」のようなIPでさらにグローバルで愛されるものを作りたいと思っています。ただ、ここ10年を見てもオリジナルで立ち上がっている作品というのは本当に数が少ないので、そう簡単にはいかないだろうと思っていますし、オリジナルを開発する期間と先行投資は結構かかるので、そこはしっかりと見定めながらやっていきたいです。
IP開発においては、クリエイターの方たちがどういうものを作っていきたいかを大事にしたいので、座組や環境がとても重要になってくると思います。今の流れでは、制作が長期化し制作費が高騰していますので、その辺りをどう考えてオリジナリティのあるものを生み出していくかという部分に各社の色が出てくるのではないでしょうか。
私自身も幼少期からアニメやゲームに救われた部分がすごく大きいので、その思いはこれからの若い人たちや支えてくれた業界に対し恩を返せるように、貢献できるようにやっていきたいです。アニメ作品を作るのにはやはり2、3年はかかりますし難易度は高いですが、社員にも、関わっていただいている方にも、腰を据えてチャレンジをする姿勢を示していきたいと思っています。
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