劇場アニメ『ベルサイユのばら』豊永利行と加藤和樹が歌と演技で彩る世界― いまさら言えない? 舞台、アニメで共演してきたお互いの印象も【インタビュー】
アニメ!アニメ! / 2025年1月30日 17時0分
連載開始から50年以上経った今も、多くの読者を18世紀後半のフランスへと誘う池田理代子の不朽の名作マンガ『ベルサイユのばら』。2025年1月、ファン待望の完全新作アニメとして、劇場アニメ『ベルサイユのばら』が公開される。
フランス革命という激動の時代の中で、愛に情熱を燃やし、美しく運命を生きた人々の物語を描く本作。アンドレ・グランディエ役の豊永利行さんと、ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン役の加藤和樹さんが、「思い出すだけで泣きそう」と熱っぽく語る姿に、作品への期待は高まるばかりだ。
20年来の友人、アニメや舞台という“表現”の世界で互いに切磋琢磨してきた同志である豊永さんと加藤さんに、本作の制作秘話やお互いのことを語ってもらった。
[取材・撮影=双海しお]
◆美しい、けれどそれだけではない物語
――原作『ベルサイユのばら(以下、ベルばら)』への印象と出演を聞いた際の心境をお聞かせください。
加藤 マンガは姉の影響で知っていましたが、どちらかというと宝塚歌劇団の印象が強かったですね。史実としては痛ましい側面もあるフランス革命の中で描かれる、美しくも儚い物語というイメージでした。
――そんな『ベルばら』の新作劇場アニメへの出演が決まっていかがでしたか。
加藤 「僕が『ベルばら』に!?」という感じでしたね(笑)。
豊永 いや、ぴったりだと思うよ。
加藤 一時期ミュージカルで、フランス革命には身を投じていましたけれど、その作品では平民側だったので……。
豊永 そうだったんだ。
加藤 そう。だから、「今回は貴族側なんだ」と(笑)。僕としては自分にフェルゼンというイメージは持っていなかったので、ちょっとびっくりしました。
豊永 そうなんだ。爵位を持ってそうなのに(笑)。
――豊永さんは作品にどんな印象をお持ちでしたか?
豊永 作品自体はもちろん知っていましたが、内容を深く知ったのは今作のオーディションの話をいただいてからですね。でも、親世代が当時のアニメを観ていたので、OPテーマの「薔薇は美しく散る」はすごく印象に残っています。「バラはバラは気高く咲いて~(歌を口ずさんで)」これですね。
一同 おお~。
豊永 なので、具体的な内容については、今作への出演をきっかけに知っていったのですが、先ほど歌った歌詞のように美しく気高くありつつも、それだけではない作品だなと。貧困や階級格差といった社会問題を、史実を含みながら描いていて、その中でを気丈に生き抜いた人たちの物語なんだなと感じました。
――作品を拝見して、歌唱シーンを盛り込んだ演出が印象的でした。皆さんの歌声も本当に素晴らしく……!
豊永 そうでしょうね。
一同 (笑)。
――作品の世界観にマッチした歌唱シーンは本作の見どころのひとつになるかと思いますが、収録時のエピソードやこだわった点などをお聞かせください。
豊永 実は歌唱シーンのレコーディングは、アフレコの1年くらい前にやっていて。キャラクターの芝居の方向性などを決める前に歌を録っていたので、ちゃんと役柄像を自分の中に落とし込んでレコーディングに臨まないといけないなと思いながら歌わせていただきました。
例えば1曲目の楽曲は、その数分間で約20年の出来事を歌っている。なので、「いつのアンドレで歌えばいいんだろう?」と迷う部分はありましたね。ただ、レコーディング時は吉村監督ともディスカッションをさせていただいて、最終的には、年齡としてはどこにも当てはまらない幅を持たせながら、アンドレとしての心情を大切に歌いました。
一方で、オスカル(・フランソワ・ド・ジャルジェ)とのデュエット曲では、監督からどのシーンの楽曲なのかを聞いて、「じゃあアンドレの年齡はこれくらいだな」と考えながら歌ったことを覚えています。ちゃんと考えて組み立てていかないと破綻してしまうと思ったので、僕はそのあたりで苦労しましたね。
加藤 僕も「歌を先に録るんだ」というのは印象的でしたね。その中で、フェルゼン像に関しては、過去にミュージカルですが、フランス革命を生きた経験が活きたかなと。
(マリー・)アントワネットに対しての想いという部分は新たに生み出す必要があると思っていたので、アントワネットとのデュエットに関しては、フェルゼンのアントワネットへの想いを存分に出そうと考えてレコーディングに臨みました。4人の声のバランスを取りながらも、フェルゼンから離れすぎてもいけない。その中で、発声と感情の入れ方のバランスを考えたので、なかなか難しいレコーディングでしたね。
◆この2人だからこそ生まれたアンドレとフェルゼンの魅力とは?
――あらためて振り返ってみて、ご自身が演じたキャラクターの魅力はどんなところに感じていますか?
加藤 フェルゼンに限らずですが、我々が生きている今とは違って、この作品の登場人物は誰かのために命を懸ける覚悟ができる。そういうところが魅力だと思います。
フェルゼンであれば、命を賭してアントワネットを守りたいと思うけれど、それが叶わなくてオスカルにアントワネットを守ることを託す。立場ゆえの彼の悔しさや葛藤を想像すると、心が引き裂かれる思いだったろうなと。でも、その中で自分の運命に抗いながら生きていく姿というものが、フェルゼンの魅力なんだろうなと思います。
豊永 劇場アニメ版という限られた時間なので、今作はオスカルとアントワネットが軸になっていて。その中で描かれているアンドレは、彼の持つ男らしさに焦点を当ててくださっているという印象があります。
原作でのアンドレは、なんというか直情的だったり、言わなくていいことを言っちゃったりもしてるんですが(笑)。今作では、オスカルの影になるという決意の強さや、それが愛だと認識するまでの時間、そして心中を図るというアンドレなりの愛情表現。
そういった不器用だからこそのアンバランスな彼の感情の揺らぎを、すごくピックアップしていただいているなと感じました。オスカル役の沢城みゆきさんに「トッシーの演じるアンドレは影だけどめっちゃ光を出してるよね!」って言われて(笑)。
加藤 あはは!(笑)
豊永 そういう意味でも、新しいアンドレが出せたのではないかなと。影の部分ではない、彼本来が持つ力みたいなものが、今作のアンドレの魅力になっていたらいいなと思いますね。
加藤 いやぁ、話していたら思い出して泣いちゃいそう。映像見ながら、気付くと泣いてるもんね。
豊永 わかる。僕も泣いた。
――では、豊永さんがアンドレを演じ、そして加藤さんがフェルゼンを演じたことでどんな魅力がキャラクターにプラスされたと思いますか。お互いの芝居についての印象を教えてください。
加藤 彼がアンドレを演じたことで……。
豊永 すぐ出てくるんだね(笑)。
加藤 あはは(笑)。なんというか、オスカルとの絶妙な距離感かな。身分は違えど友達であり仲間であった関係性から、時が経つ中で、先ほど言っていたように、オスカルにも言えないアンドレの心の中の“影”の部分が生まれてくる。そこをすごくうまく表現されていて、本当に切ないんですよ。明るいからこそ切ないというか……もう思い出して泣きそう。
一同 (笑)
加藤 彼が息を吹き込んでいるからこそ、すごく重たいシーンも重く感じさせなくて。だからこそ、グッと切なくなる。最後まであんなにオスカルを想ってさぁ……もうやだぁ、そんな人いる!?
豊永 急に親戚のおばちゃんが出てきた(笑)。
加藤 作品の中でアンドレが“生きてる”っていう感じがしましたね。
――豊永さんが思う、加藤さんが演じたフェルゼンの魅力はどんなところでしょう?
豊永 僕が勝手に持っているイメージなんですが、和樹は“純粋に心を動かして出す言葉”というところにウエイトを置いて表現する人だと思っていて。だからこそ、フェルゼンという人間がグラッと揺らいでしまうときの、グラつきの説得力の高さみたいなものが、彼が演じることで増しているなと感じました。
表面上ではそれほど大きな揺らぎではないのかもしれないのですが、和樹が演じることによって心の振り幅が広がっている。その伝え方は、やっぱり体も使って表現をする役者さん、表現者さんだからこそできる表現というか。声の芝居と体の芝居のハイブリッドな表現というものを、フェルゼンを通して見せてもらったなと思いました。
――『ベルばら』といえば見目麗しいキャラクターが多数登場します。お2人のお気に入りのキャラクターは?
加藤 僕はアンドレです。1番感情移入しちゃいますね。彼は平民の身分でありながらオスカルについていく。身分の違いから不当な扱いを受けることもある中で、心を折らずにオスカルに忠誠を誓ってずっとそばにいる。その姿が本当にいい男だなと思うんですよ。こういう人に寄り添ってもらえたら幸せだろうなと思います。
豊永 それでいうと僕もフェルゼンを純粋にすごいなと尊敬していますね。好きな人と結ばれてしまうと、国家間の話になってしまうわけじゃないですか。そういう時代に、好きな人のために好きな人を諦めるという意志の強さというものは、ひとりの男としてすごいなと思います。
◆20年来の仲で培われた揺るぎない友情と信頼
――お2人は2005年のミュージカル『テニスの王子様』での初共演以降、アニメ『家庭教師ヒットマンREBORN!』や『B-PROJECT』など、声優としても共演されています。先ほど、今作におけるお互いのお芝居の魅力をお話いただきましたが、長い付き合いの中で見えてきたお互いに尊敬しているところ、好きなところを教えてください。
豊永 20年来の付き合い、しかも同い年で、今さら(?)好きなところを言うのは恥ずかしいなぁ(笑)。
加藤 僕は……。
豊永 あ、話すんだ(笑)。
加藤 この話はしたいよ、言わせてよ(笑)。初共演のミュージカル『テニスの王子様』では、彼は中学1年生の役を演じていたので、ずっと声の高いイメージがありました。ですが、その後共演したり出演作品を拝見したりして、本当は「すごく男らしいな」と。
豊永 ありがとうございます。
加藤 それに、芝居の幅広さと自由度の高さっていうものを持っているなと、初共演したときから思っていて。
本当に楽しんでお芝居をしているからこそ、その役が生きるというところが、ご一緒させていただく中で毎回、すごいなと思ってるところですね。
豊永 いやぁ、光栄です。
――豊永さんから加藤さんへはいかがでしょうか?
加藤 言うのはいいけど、逆に聞きたくないな(笑)。
豊永 (笑)。和樹の表現への印象は、最初に会ったときからあまり変わっていないのですが、何においても度胸があるし、堂々たる立ち方ができる人。ただ、20年来の付き合いの中で、実はすごく緊張しているんだとか、実は自分が不器用だとわかっているからこそ悩むだとか、いろいろなことを吐露してくれて。そういった部分も踏まえたうえで、それでも気丈に振る舞える胆力っていうものが、僕は純粋に同い年の役者として尊敬していますね。
ルックスも含めいろいろな武器がある中で、その武器だけに頼らず、表現者として表現の幅を膨らませるための努力を惜しまない人なんだなと。そんな志を持っている役者さんと一緒に共演できて幸せだなと思います。
加藤 (ニコニコ)
豊永 あとは、僕もお茶目ですが、実は和樹もそういうのが好きな人で。
僕がふざけると乗っかってくれますし。おふざけじゃないほうの、自由な芝居の掛け合いでも、僕の投げた球を受け止めてちゃんと返してくれるので、すごく信頼感がある。そういう意味でも、安心して僕は自由にできるし、それに対してしっかり取捨選択して返してくださるので、一緒にお芝居をしていて心地のいい人だなと思っています。……これ、照れくさいね。
加藤 そうだね。ちょっと恥ずかしかったね。
――照れくさい質問に答えていただきありがとうございます! 今作では、時代に翻弄されながらも情熱的に生きた登場人物たちが登場します。それにちなみ、最近お2人が“情熱を燃やしたな”と思った出来事を教えてください。
加藤 作品でいつも誰かを演じているので、つねに燃やしていると言えるかもしれないですね。個人的には、今年40歳を迎えたので、身体作りだったり、今後の仕事への取り組み方だったりには、まだまだ情熱を注いでいかなきゃいけないなと思います。
最近、痩せづらくなってきたんですよね……(苦笑)。なので、情熱と脂肪を燃やして、これまで以上に努力していきたいなと思っています。
豊永 和樹のような身体作りは全然やっていないのですが(笑)、最近、電子ドラムを購入したんです。学生時代はずっとバンドでドラムを叩いていたので、久しぶりに叩いてみようかなと。これが多少の体力作りにはなっているかもしれないですね。
あとは、先日、和樹のバースデーライブのゲストに呼んでいただいたんですが、そこで渡すサプライズバースデープレゼントを選ぶのに情熱を注ぎましたかね。何をどう渡したら面白くなるかな、と(笑)。
――では最後に、代表して豊永さんから本作の見どころと読者へのメッセージをお願いします。
豊永 50年以上の歴史がぎゅっと詰め込まれている作品なので、見どころはぜひ皆さまご自身で見つけていただければと思います。今回描ききれていないシーンもありますが、そこを歌唱シーンも駆使しながら表現していく構成力みたいなものは、きっと原作を愛してくださっている方も楽しめるのではないかと思います。エンドロールも熱い展開になっていますので、ぜひ最後までご覧になっていただけたらうれしいです。
いつの時代も愛されてきた名作は、令和の時代にどんなベルサイユの景色を見せてくれるのだろうか。1月31日上映の劇場アニメ『ベルサイユのばら』をお見逃しなく。
劇場アニメ『ベルサイユのばら』
1月31日(金)全国ロードショー
■原作:池田理代子
■STAFF
監督:吉村 愛
脚本:金春智子
キャラクターデザイン:岡 真里子
音楽プロデューサー:澤野弘之
音楽:澤野弘之、KOHTA YAMAMOTO
アニメーション制作:MAPPA
製作:劇場アニメベルサイユのばら製作委員会
配給:TOHO NEXT、エイベックス・ピクチャーズ
■後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
■CAST
オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ:沢城みゆき
マリー・アントワネット:平野 綾
アンドレ・グランディエ:豊永利行
ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン:加藤和樹 ほか
ナレーション:黒木 瞳
■主題歌:絢香『Versailles - ベルサイユ - 』
(C)池田理代子プロダクション/ベルサイユのばら製作委員会
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