【安田現象×種崎敦美インタビュー】予測不能!?サイバーラブサスペンス「メイクアガール」
アニメ!アニメ! / 2025年2月2日 18時0分
たったひとりで制作した3Dショートアニメを次々と発表し、今やTikTokのフォロワー数約290万人、YouTubeのチャンネル登録者数約238万人、Xのフォロワー数約50.5万人、Instagramのフォロワー数約48.5万人という人気クリエイターとして注目を集めている安田現象さん(いずれの登録者数も2024年12月現在)。
その安田現象さんがついに劇場用長編アニメーション映画を制作し、2025年1月31日より公開中です。タイトルは『メイクアガール』。
この映画は2020年に発表され、2020年10月に開催された第29回CGアニメコンテストで入賞した処女作『メイクラブ』をもとに、完全オリジナル作品として新たに制作したもの。「安田現象スタジオ by Xenotoon」を株式会社ゼノトゥーンと共同で立ち上げ、クラウドファンディングに支えられながら少数精鋭のスタッフで完成させました。
そこで本稿では、全国ロードショーを控えた安田現象監督と、メインヒロイン「0号」を演じる種崎敦美さんに対談していただき、本作の見どころや魅力をうかがいました。
[取材・文=気賀沢昌志]
◆“人造人間”の役作りの難しさ…衝撃的な展開にも!?
――まず、種崎さんは最初に台本を受け取ったとき、本作に対してどのような感想を持ちましたか?
種崎敦美(※崎はたつさき) ロボットが存在するSFの世界観なのに、機械的な冷たさよりも人間味が強く感じられる不思議な作品だなと感じました。私の役柄は「感情を学んでいく人造人間」なので、演じるうえでの難しさも感じました。収録当日になっても自分の中でどう落とし込むか悩んでいましたね。
――どんなところに難しさを感じたのですか?
種崎 私が演じる0号という少女型の人造人間は、物語を通じて自分の存在が何なのかを突き詰めていくキャラクターです。そのキャラクター性を掘り下げていくうちにとくに気になったのが、どのような想いをもって発明されたのかという開発者目線の解釈でした。その部分は解釈の余地があり、自分の中で明確な答えが出せず悩みましたね。
0号ちゃん自身も、見た人の解釈でどんな色にもなるなと感じました。というのも、セリフとして最後まで言わなかったり、台本には気持ちが書かれているのにセリフでは「……」となっていたりするなど、受け手に委ねるような解釈の広い作品になっています。それだけに、どう表現すればいいのか、どんな演技をしたら気持ちが伝わるのか、いろいろと悩みました。
安田現象 収録を拝見していて私も不思議に感じたのですが、役作りはいつも、どのようにされているのですか?
種崎 今回はまず、0号ちゃんのことだけを考えようと思いました。
彼女は日常生活を通じて感情を育てていくキャラクターだと思うので、最初は子どものようなまっさらな存在なのかな?と。
いつも感覚を頼りに役作りしているので言語化が難しいんですけど、いくつか答えがある中で、「ここだ!」と思う地点へ近づくまで何度も練習する感じです。「頭の中にあるキャラのイメージに近づいている感じはするけど、まだ何か気持ち悪い」というところにぶつかっては目指す方向を微調整するというか……。
安田 そうなんですね、興味深いです。解像度を一旦上げてから、ご自身の中でアリかナシかを模索するという感じなのですね。
種崎 そうかもしれないです。そうやってある程度まで近づけたら、あとは収録スタジオで掛け合いを通じながら最適化します。
安田 実際に作ってみないと見えない領域はありますよね。よくわかります。
――その演技をご覧になっていかがでしたか?
安田 物語の最初から最後まで聞いたときに感じたのは「怖い」という印象でした。
0号が発するセリフには、言葉自体は強いのに、同時に彼女の弱さを込めたものもあります。その矛盾に人間らしさを感じると同時に、ある種の「人の怖さ」も同居しており、それがうまく表現されていました。
――予告編で感じるさわやかさとは違う、「超新感覚サイバーラブサスペンス」の部分ですね。
「怖い」といえば、元になった『メイクラブ』からかなり展開がハードになったなという印象を抱きました。まさかあそこまで衝撃的に描かれるとは……。そこは『メイクラブ』から一貫して変わらないイメージだったのでしょうか?
安田 違いましたね。もともと『メイクラブ』は自主制作のライトノベルとして10万字程度の作品を想定しており、それをショート動画にしたものでした。
長編映画にするにあたり、また『メイクラブ』の時点で表現したいものはすべて表現できている状態でしたから、長編映画として成立するよう作り直しています。
――『メイクラブ』をすでに視聴していてもネタバレにはならない?
安田 なりませんね、読者の皆さんも安心してください。
――制作環境も個人制作の頃から随分と変わりましたが、ショートアニメから長編アニメになって、どのようなことが新たにできるようになりましたか?
安田 やはりチームで作業できるようになり、実作業と並行して映像表現の研究もできるようになったことが大きいです。
これまでは自分ひとりで制作していたため、ひとつひとつの工程にこだわることができませんでした。優先すべきはまず完成させること。そのため「もっとよく見せるやり方」や「今以上のクオリティ」は、そのときの作業状況とにらめっこした上で判断することが多かったんです。
――妥協したのではなく、リソースの振り分けの問題でしょうか?
安田 そうですね。時間をかければよりいいものができるのは当たり前です。しかしクオリティにこだわるあまり完成しなかったら本末転倒ですよね。許される範囲の中でベストを目指していますから、スタッフが増えれば当然リソースにも余裕ができ、その分、クオリティーアップや試行錯誤ができました。
もっともアニメーター4人、3Dモデラー3人という小規模なチームではありますけど。
――リソースもそうですが、振り分けた作業の仕上がりを見て感動するという体験も新鮮だったのではないですか?
安田 そうですね。自分だけでは思いつかなかった表現だったり、完成を優先させるためにブレーキをかけた「その先」を見ることができたり。そういった新しい「クリエイティブ」が見られたのはチームならではの体験でした。
たとえば長尺のアクションシーンが面白かったですね。コンテは私が担当しましたが、アクションとアクションの間を埋める演出などは各アニメーターの個性に委ねた部分があります。そこが迫力満点に描かれていましたし、特報にも登場していたカラスが飛び立つカットなどはまさにアニメーターが試行錯誤しながら個性を発揮して作り上げたもので「おっ!」と思いました。
もちろん最初からうまく歯車がかみ合っていたわけではありません。コンテとすり合わせをする機会も多くありました。しかしチームとして機能するようになるとそのあたりの感覚がマッチして、こちらで軌道修正をすることはなくなりましたね。
――もともと監督の作品はキャラの仕草などがいいとの評判で、今回もどんどんと人間社会に溶け込んでいく0号が魅力的でした。個人的に印象的だったのは石段を駆け上がるシーンです。最後の段をピョンと飛び越す一瞬には彼女の「喜」の表情が動きで表現されていて好きでした。ロボットならそんな非効率な動きをしませんからね。
種崎さんはどこか印象に残ったシーンはありましたか?
種崎 私は家でハンバーグを作っているシーンが印象に残っています。0号ちゃんがハンバーグを作っていて最後に肉汁をソース代わりにするのですが、そこがすごく人間味にあふれているんですよ。
――わかります。
安田 たしかにロボットにはできない発想力みたいなものが感じられますよね。
種崎 そこからの明とのやり取りを含め、作品中で一番穏やかな時間が流れている気がするあのお部屋の中のシーン全般が好きです。
安田 私は階段の下で0号が昼ご飯を食べているシーンに絵的なよさを感じました。
「友達と昼ご飯を食べるように」と明に指示された0号が充電中のソルトの隣に座っているのですが、明と0号で「友達」の解釈がまだすれ違っているんですよ。そのズレから見えてくる0号のかわいさが出ていましたし、それに呆れながらも人間として接してくれる茜のかわいさも表現されていて自分の中では気に入っています。
――『メイクアガール』は、そういった繊細な描写はもちろん、「自分でカノジョを作る」というシチュエーション自体もおもしろいですよね。
種崎 監督のその発想はどこから生まれるのですか?
安田 散歩をしているときが多いですね。とくに古い町並みをブラブラするのが好きです。古めの街並みだと、増築部分とか、当初の予定にはおそらくなかった後付けの部分が見えやすいんですよ。そこから「どういう経緯でこうしたんだろう」と考え、文脈を妄想していくうちに「こういう解釈をするとおもしろい」「そこを切り取って話にしたらどうなのか」とアイデアに繋がっていくんです。
『メイクラブ』や『メイクアガール』も「科学的にカノジョを作る」というシチュエーションがおもしろそうだと思い、そこに肉付けをする形で物語を作り、必要なキャラクターを配置しました。
種崎 なるほど。
――確かに独特の視点が光っている映画でした。それでは最後に見どころをお願いします。
安田 4人のアニメーターと3人の3Dモデラーという少数制作にも関わらず、90分という長編の物語をリッチな3Dで表現できたのではないかと思います。あまりに少数すぎて、エンドロールは同じ名前が並ぶという珍しい絵面になっていますけど(笑)。
エンドロール用のエピローグ映像もきちんと作っていますので、ぜひ最後の最後まで席を立たずに味わい尽くしてください!
種崎 作品全体を見たとき、最初は複雑な物語を描いているのではないかと思い、どうやって演技を組み立てるべきか悩んだ時期もありました。ただいろいろと考えるうち、実はすごくシンプルな感情を描いているのではないかと気付き、それからはスムーズに表現することができました。
奥深い物語なので、おそらく見る人によってその解釈は変わるかと思います。ぜひ感じるままに見て、みんなでいろいろと考えながら感想会をして盛り上がっていただければと思います!
【作品情報】
劇場用オリジナル作品『メイクアガール』
◆1月31日(金)より全国ロードショー
【ストーリー】
舞台となるのは、現在より少しだけ先の未来。
人々の生活をサポートするロボット・ソルトを開発、製品化することに成功した天才的な頭脳を持つ科学少年・水溜明(みずたまり・あきら)は、新たな発明がことごとく失敗し、行き詰まりを感じていた。
そんなとき友人からカノジョを作れば「パワーアップ」できるという話を聞いて、文字通り人造人間のカノジョ“0号”(ぜろごう)を科学的に作り出してしまう。
プログラムされた感情と、成長していく気持ちの狭間で揺れ動く0号。
人と心を通わせることに不慣れな明との間に芽生えるのは“恋”なのか、それとも……?
【STAFF】
原作・脚本・監督:安田現象、絵コンテ・演出:安田現象、CG監督:安田現象、音響ディレクター:今泉雄一、音響効果:上野励、音響制作:ソニルード、音楽:末廣健一郎、主題歌:Eve「花星」(TOY'S FACTORY)、配給:角川ANIMATION、アニメーション制作:安田現象スタジオ by Xenotoon、製作:メイクアガールプロジェクト
【CAST】
0号:種崎敦美、水溜 明:堀江 瞬、水溜 明(幼少期):日向未南、大林邦人:増田俊樹、幸村 茜:雨宮 天、海中絵里:花澤香菜、高峰庄一:上田燿司
※種崎敦美さんの崎はたつさき
(C) 安田現象 / Xenotoon・メイクアガールプロジェクト
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