演技経験ゼロの子役、感泣の演技:「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」

AOLニュース / 2012年2月3日 10時24分

Filed under: ムービー, 週刊 映画コラム

アカデミー賞だから良い、というのではないが、やっぱりノミネートされている作品は質が高い。この作品も、賞レースではちょっと周りの話題作に押され気味だったけれど、しっかりと作品賞と助演男優賞(マックス・フォン・シドー)にノミネートされている。2005年に発売されたベストセラーの映画化で、9.11アメリカ同時多発テロで父親を亡くした息子と家族の喪失と再生の物語。こういう映画を撮らせたら抜群に上手い、私が大ファンのスティーブン・ダルドリーが監督。そういう思い入れもあるし、設定が設定なだけに、泣くのを覚悟して試写にお邪魔した。
9.11の同時多発テロで父親(トム・ハンクス)を亡くしたオスカー(トーマス・ホーン)。父の死を受け入れられない彼は、父の部屋のクローゼットで、"ブラック"と書かれた封筒の中に1本の鍵を見つける。そこに父からの最後のメッセージがあると信じ、母(サンドラ・ブロック)には内緒でその鍵に合う鍵穴を探しに旅に出る。それはニューヨークに住む472人のブラックさんを訪ねるというものだった。ある日、向かいに住む祖母の部屋に間借り人(マックス・フォン・シドー)がいることに気づき、思い切って会いに行く。彼といるとなぜか心が和むオスカー。どんなに調べても鍵穴が見つけられなかったが、遂にオスカーはその鍵の真実とめぐり合う。果たしてその奇跡とは?

アカデミー賞の時期だからなのか、試写室は満員。そしてすすり泣く声があちらこちらで聞かれた。もちろん、私も。最近、映画で泣き過ぎかとも思うが、主役のオスカー少年の非凡な才能に泣かされた。亡くなった父との絆を健気に探す自閉症気味の息子の姿に、涙しないなんてありえない。大ベテラン達を相手に堂々と演技し、重鎮マックス・フォン・シドーと対等に渡り合っていた。しかもオスカー少年、この映画で演技初体験。よくぞこんな子を見つけてきたなと、改めてアメリカの子供達の才能と執念のキャスティングに感心する。

トム・ハンクスとサンドラ・ブロックが両親役と聞いて、コテコテの押しの強い演技かと思いきや、息子への溢れる愛情を、抑えた控えめな様子で演じていて好印象。監督に至っては、繊細な子供や感情抑制に問題があるような人達を温かい目で描く彼らしい演出で、ファンとしては大満足。監督の「めぐりあう時間たち」は2000年代公開のベスト10に入ると思っているが、本作も同様、小作品ながら光を放つ。

意外だったのは、アメリカの「ロッテン・トマト」での評価が46点と低いこと。著名な批評家の間でも意見が割れているのが予想外。どうやら9.11の悲劇を感傷的に、時にファンタジーのように扱いすぎるところがいけないらしい。確かにそうともいえるが、不条理な惨事で父を亡くした現実に立ち向かう息子と彼を見守る家族を丁寧に描いていて良かったし、この感傷、感情はむしろ日本人のメンタリティに合うのではと思った。未曾有の悲劇を経験した日本では、改めて子供のメンタルケア、家族の再生が注目されるだけに、共感を呼ぶ映画だと思う。(★★★1/2☆)

2月18日(土) 丸の内ピカデリー他 全国ロードショー
配給表記:ワーナー・ブラザース映画
公式サイト:

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