島田荘司作品、初の映画化!『幻肢』に行き着く本格ミステリーの系譜とは

AOLニュース / 2014年2月14日 12時50分

島田荘司作品、初の映画化!『幻肢』に行き着く本格ミステリーの系譜とは


これは以前から私が主張していることなんですが、「21世紀本格」と呼ばれるべき、「本格ミステリー」創作の新しい方法論の、主軸的発想から導かれるものです。


「本格ミステリー」は、1841年にアメリカで発表された、エドガー・アラン・ポーの『モルグ街の殺人』という小説から発生しました。これは大きくくくれば、「幽霊憚」の流れに与するホラー的な物語なのですが、それまでの幽霊ストーリーと根本的に異なる点は、作者が当時欧米に起こっていた「科学革命」の洗礼を受けていることです。

不可解で神秘的な現象を前にしても、これを軽々に幽霊現象ととらえることをせず、したがって怨霊の崇りなどに怯えることをせず、現象の背後には合理的な理由があると信じ、科学発想でもってこの理由を解体し、説明をつけようとする考え方。この物語の背後には、そういう新時代の発想が、背骨として存在していました。
そして警察も、現場で得た捜査のための各材料を、特権意識を持つことなく読者に開示し、説明します。これは当時の民主主義的な発想と、陪審制裁判のルールを反映したものです。
かくして、まったく新しい、科学による幽霊物語が誕生し、この影響下に「本格ミステリー」という新しい文学のジャンルは発動しました。

続いて1887年、イギリスのコナン・ドイルが、ポーのこの考え方を正確に継承し、シャーロック・ホームズという科学者の探偵を創造します。この小説群の大成功によって、この文芸の存在感は決定的となり、世界中に定着しました。

続いて1920年代のアメリカに、ヴァンダインという作家が登場して、自身の信じる最も面白い「本格ミステリー」のあり方を提唱し、大ぜいの作家や読者がこれに同意しました。これが今日の、必ず殺人事件、怪しげな館などの閉鎖状況、ここに出没する怪しげな住人たち、彼らのプロファイルの、早い段階でのフェアな読者への開示、現場に外来する名探偵、読者がすでに心得た材料だけを用いる彼の推理、そしてついに読者を出し抜く、予想外の犯人の指摘、といった今日の「本格ミステリー」の条件が、ここに完成するわけです。

こういう整頓発想は、表意文字が表音文字に転換したことにも似て、ポー流の考え方を大きく転換、民主化し、書き手の幅を広げ、「本格ミステリー」というジャンルのすそ野を広げました。
ヴァンダインの創作論は、野球のようにルールの遵守を勧めていて、結果として科学発想は棄て、殺人事件の犯人探しを目的とする、舞台劇的なゲームとすることを提案していました。かくして、「本格ミステリー」の黄金時代はすみやかに築かれます。

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