【美女と妄想してみた。vol.20】橋本愛はいつも図書館にいる!

AOLニュース / 2014年4月4日 22時0分

【美女と妄想してみた。vol.20】橋本愛はいつも図書館にいる!


ぼくはカート・ヴォネガットが好きだ。1992年生まれのアメリカの小説家。彼が書いた小説は、全て読んだ。
「タイタンの幼女」。「猫のゆりかご」。「スローターハウス5」。「ジェイルバード」。「ガラパゴスの箱舟」。その他いろいろ。ヴォネガットの小説には、いつも冗談が溢れていた。いや、冗談しか書かれていないと言ったっていいくらいだ。

ここで言う冗談とは、ただの笑いや、現実逃避じゃない。世の中の見方の呈示ってことだ。世の中には沢山の良いことや悪いことがあるけど、見方を変えるというそれだけのことで、絶望は希望になる。ヴォネガットの小説はいつもぼくにそう教えてくれた。
中でも「スラップスティック」はぼくの一番の愛読書だ。ここで書かれる冗談の数々は、人生を肯定してくれる。人付き合いがうまくなく、クラスに友人のいないぼくは、その小説に救われていた。毎日のように昼休みと放課後には図書館に通っていたが、金曜日には必ず「スラップスティック」を手に取った。ぼくの孤独と絶望を、金曜日に読む「スラップスティック」に描かれた冗談は、いつだって笑い飛ばしてくれたから。

ぼくが図書室に通う理由が、実はもう一つあった。クラスメイトである橋本愛が、いつもそこにいたからという、思春期にありがちな話だ。彼女は同じ年齢の誰よりも大人びていて、いつもどこか遠くを見ているようだった。そしてまた、誰よりも本が好きだった。橋本愛が読書に夢中になっている横顔を、その横顔が窓から差し込む光で照らされる様子を、ぼくは何度かこっそり見た。それは高校二年生の自分にとって、何よりも心躍る瞬間だった。
そして、春が来た。学年が一つ上がり、高校三年生になったからといって、急に変わるものなどない。そして今日は金曜日だ。ぼくは図書室へ足を運ぶ。橋本愛は、まだ来ていないようだった。新学期になってから、彼女の姿をまだ見ていない。図書室通いをやめてしまったのだろうか、と少し悲しくなるが、しかしよくよく考えれば何を失ったというわけでもなかった。最初から何も持っていなかったのだから。

ぼくはカート・ヴォネガットの「スラップスティック」を手に取る。彼の描く冗談に、また出会うために。ページをめくる。そこには一通の手紙が挟まれている。宛先にはぼくの名前。そして差出人は、橋本愛。
ぼくは思った。冗談だろ、と。


橋本愛がぼくに宛てた手紙は、こんな一文で始まっていた。
「拝啓 お元気ですか?」

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