池上彰「TPP参加後の庶民生活」超解説(2)いつも後れを取る日本の外交

アサ芸プラス / 2013年4月30日 9時58分

──TPPに参加すると、海外から食料品などいろいろなものが入ってくることになるんでしょうか?

 なるほど、その前にまず、今回のTPPの流れを見てみましょう。日本はずっと協議に参加するかどうかでモメていました。菅政権で協議への参加を表明しましたが、その直後に3.11の大震災が起こって止まったままでした。ですから今から参加するとなると日本は11カ国に1国ずつ参加のOKをもらわないとなりません。そうなると、日本が次のTPPの交渉に参加できるのは今年7月、年内に交渉がまとまる日程となるとギリギリとなるわけです。

──最後にテーブルに着くとやはり不利なんでしょうか?

 そうですね。メキシコとカナダがあとから参加しましたが、その際にすでに9カ国で決まったことはOKしなくちゃダメだよと言われ、しぶしぶ認めているんですよ。もちろん、日本が参加しないという選択も建て前としてはできますが、協議に参加したいと言って、その結果ダメとなれば、国際的な信用はまる潰れになります。

──いつも日本の外交は後れを取っているイメージです。

 そう、本当に日本の悪いところが出ている。かつてGATT(関税及び貿易に関する一般協定)のウルグアイラウンドとまったく同じですよ。あの時も、それまで外国のコメは一粒たりとも日本に入れないと農協が主張し、“日本の農業が壊滅する”と反対して日本は大揺れに揺れた。最後の最後にコメの自由化を受け入れたわけですが、例外規定として高い関税をかけてもいいよということになり、輸入米に778%の高い関税をかけた。でも、その罰として、日本はコメが余っているのに毎年ミニマムアクセス米を30万トン輸入せざるをえなくなった。これをのりの原料に使うために保存していたらカビ毒などに汚染されて、それがおせんべいや日本酒の材料にひそかに使い回されて大騒ぎになったでしょ。

──汚染米騒動ありましたね。

 つまり、農業への影響が深刻だとしてズルズル交渉が遅れたら、結果的にものすごく不利な条件で参加することになり、ヒドい目にあうわけです。あの時、日本の農業を活性化させるためとしてウルグアイラウンド対策費の名目で6兆円の農業対策費が国費から支出されたんですよ。

──6兆円! そのカネは何に使われたんですか?

 はい、結果としては、日本中の農村地帯に温泉ランドができたんです。

──エェー、ずいぶんなムダづかいですね。

 兼業農家ですと、冬場の農閑期に働く場所ができたということはあるんだけど、日本の農業の体質改善にはまったく意味がなかったという話です。どうです、今回のTPPとそっくりでしょ。

──歴史は繰り返す‥‥、ということですね。

アサ芸プラス

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