弘兼憲史「“島耕作流”ニッポン経営サバイバル」(5)なぜサムスン方式は強いのか

アサ芸プラス / 2013年5月9日 9時59分

 円安効果で業績が回復傾向にあるものの、ここ数年明るいニュースのない日本家電業界。圧倒的な「技術力」により高度経済成長期を牽引したが、その勢いは昔日のものとなってしまっている。韓国勢に周回遅れのボロ負け状態となり、困難な経営判断を迫られるジャパンメーカー復活の秘策が明かされる。

 日本の家電メーカーはテレビから早々に撤退をした日立・東芝と、撤退が遅れたパナソニック・ソニー・シャープでくっきりと明暗が分かれてしまいました。特にパナソニックは中村(邦夫)会長がプラズマテレビ事業推進の大号令をかけたことに、誰も逆らえずに赤字体質を続けてきたことが尾を引いています。

 なぜそんなにテレビが足かせになるのかというと、今のテレビは「誰にでもできる高級プラモデル」だからです。米家電メーカー「VIZIO」がOEM(他社ブランドを製造する企業)に丸投げしていることからもわかるように、パネルと部品さえ買ってくれば誰でも造れる。設備投資と人件費もいらないのだから必然的に安売り競争になってしまうのです。サムスンですら、テレビ部門はライバルを叩き潰すために赤字でやっているのだから、この分野での勝ち目はありません。

 サムスン電子は、ライバル製品を分解して徹底的に分析する「リバース・エンジニアリング」という手法によって製品を造り、徹底的に価格を落としていく。「サムスン方式」と呼ばれ、競合商品を駆逐して市場を独占するまで値下げが続けられる。肉を切らせて骨を断つという戦法がゆえ、底の見えない安売り競争では深手を負うというわけだ。

 ただ、パナソニック・ソニー・シャープを苦境に立たせている原因はテレビだけではない。他の家電もサムスンやLGという韓国勢にボロ負けしているのです。敗因は前号で述べたように「デザインと価格」が大きいですが、これに加えて、「販売戦略」もまったくかないません。

 例えば、サムスンは、市場である新興国にまず携帯電話から送り込んでいる。値段的にも比較的手に入れやすいのですぐに普及します。携帯の画面は毎日見るものですから、「サムスン」というブランドも浸透する。そこで、家電を一気に押し込んでいくのです。

 さらに、彼らは国をあげたバックアップ体制があるのも強い。韓国政府はサムスンのためにシリコンバレーをつくっていますし、米韓FTA(米韓自由貿易協定)のおかげで日本製に比べると10%ぐらい安くできる。しかも、彼らは法人税も優遇されています。

 韓国の法人税は22%だが、サムスン電子は研究開発費などを控除する「租税特例制限法」の対象となるので、15%程度と優遇されている。ちなみに、日本の法人税は40%である。

 ただ、実は一番の敗因は、日本の家電メーカーの「おごり」だったのではないかと思っています。

 今から5~6年前、アメリカに取材に行った時、現地の家電量販店にズラッと液晶テレビが並んでいました。店員から、「どの液晶がいいと思いますか?」と尋ねられたので、画面の美しさで選んだら、全てサムスンやLGのものでした。

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