藤井聡太「8冠」までの1000日計画(8)コンピューター導入は13歳

アサ芸プラス / 2020年8月22日 9時54分

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 AIソフトは「何%、先手がいい」というふうに戦況判断をしてくれる。

「その数字自体は正直、どうでもいいんです。真に受けている棋士はあまりいないと思います。けれど、どんな数字でも頭の外側にあれば『洞窟に手すりがある』感じなのです」(豊川七段)

 人間の棋士は「読み」と「大局観」を磨いて戦況判断に着手するが、AIは「探索(しらみつぶし)」と「評価関数(どっちが得をしているか)」の計算力でそれを割り出していく。

 将棋のAIソフトは、2005年に理学研究者の保木邦仁氏が開発した将棋プログラム「ボナンザ」が「評価関数の自動生成」という画期的仕組みを搭載したことで一気に精度が向上。過去の大量の棋譜を「教師」として「この前例なら勝ちに近づく」と自動学習するプログラムが誕生したのだ。

 保木氏はソースコードを誰もが無料で使えるように開示し、現在まで続く将棋AIソフトの源泉となっている。17年に当時、名人だった佐藤天彦九段(32)が当時の最強ソフト「ポナンザ」と対戦したが連敗。これにより、人間よりAIソフトのほうが強いと証明され、話題になったことがある。

 AIソフトをうまく取り入れて強くなった棋士といえば、今や対人の練習将棋を減らし、ほとんどコンピューター相手にしぼって勉強している豊島将之竜王(30)や千田翔太七段(26)の名前が挙がる。千田七段は三段リーグ時代の藤井棋聖(当時13歳)にコンピューター導入を勧めたことでも知られる人物だ。

「現役棋士が具体的にどうコンピューターを使っているかは企業秘密です。教えることも尋ねることもありません。複数のソフトを使う棋士もいますし、さまざまです」(豊川七段)

 とにもかくにも、棋士たちは自分の固定観念のすぐ外側に何があるかを常に模索している。結果、AIが近年の将棋界にもたらした流行には以下のことが挙げられよう。

【1】スピード重視の傾向になった。昔は「桂馬の高跳び歩の餌食」と呼ばれたが、序盤からぴょんぴょん跳ねるようになった。

【2】王様が薄くなった。守りの手を抜いて攻める。

【3】とうの昔にすたれてしまった戦型の出現率が上がった。簡素な守り方の「雁木」の流行や、藤井棋聖が王位戦第2局で指した「土居矢倉(昭和15年に土居市太郎名誉名人が採用)」の80年ぶりの採用など。

【4】「角換わり」や「相掛かり」など乱戦型の定跡化が進んだ。

 つまりは「それではうまくいかないよ」と一度は捨てられたセオリーが見直され、脚光を浴びているのである。特に【4】の乱戦について、豊川七段が指摘する。

「コンピューターを使うと、順列組み合わせ研究のしがいがある。歩をえっちらおっちら進めて、歩の下から銀桂が出ていく将棋に慣れているベテランは、今の若手の感覚には付いていけませんね」

(本記事は週刊アサヒ芸能8月18日発売号に掲載)

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