追悼・蟹江敬三さん 個性派俳優が魅せた狂気の演技(2)現代の恐怖を体現する役者だった

アサ芸プラス / 2014年4月23日 9時58分

 映画評論家の白井佳夫氏が解説する。

「蟹江敬三は、その昔『アートシアター新宿文化』という映画館で、蜷川幸雄演出の演劇に主演していた。当時は『蟹江が舞台に立つと妖気が生ずる』と言われ、それを見て、あの蟹江という役者は何だと衝撃を受けた多くの演出家や監督が、次から次へと蟹江を使いたがった。ロマンポルノなど絡みを大胆に描く映画、特に強姦犯など性犯罪者を演じさせると、とんでもない不気味さで、いきなり人を刺してしまうような現代の恐怖を体現できる数少ない役者だった」

 蟹江の唯一無二の演技は、特撮モノでも本領をいかんなく発揮する。封印映像に詳しいライターの天野ミチヒロ氏が言う。

「中でも『ウルトラマンA』での牛にたたられるカウラ役や、『ウルトラマンレオ』での星人ブニョ役でレオをバラバラにしてしまう怪演は、強烈なインパクトを残していますね」

 そして、還暦を過ぎた蟹江は、初めて映画「MAZE~南風」(アルゴ・ピクチャーズ)で主演を務めた。監督の岡田圭氏が振り返る。

「出演をオファーすると『主演は初めて』だという返事だったので、あれだけの世界観を持っている役者なのに今まで主演していないのかと驚いたくらい。映画は高知の漁港で撮影しましたが、実直な役者さんで、『龍馬伝』でも見せたように土佐弁は方言指導など必要のない完璧な仕事ぶりでした。撮影が押して深夜の出番待ちになった時、蟹江さんはおもむろに立ち上がって体操を始めるんです。周囲のスタッフは『蟹江体操が始まった』って、マネをして体をほぐしたのを覚えています」

 現場では周囲への気遣いを欠かさなかったという蟹江。昨年12月に収録されたドラマ「おとり捜査官・北見志穂18」(テレビ朝日)が、役者としての最後の演技となった。岡田監督が残念な思いを語る。

「5月に撮影する新作映画でも、漁師役で出演を快諾していただいていたんですが、体調を崩されてしまった。それでも今年1月には体調が持ち直されたということで、ナレーションでも参加したいというありがたい言葉をいただいていたのですが‥‥」

 昭和のにおいのする名優が、また一人この世を去った。合掌。

アサ芸プラス

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